SBI×Solana財団―SBI R3 Japan「SBI Solana Global(仮称)」、日本発オンチェーン金融市場の創出へ

By山本 達也

2026年7月15日 #SBI, #Solana
SBI×Solana財団――SBI R3 Japan「SBI Solana Global(仮称)」、日本発オンチェーン金融市場の創出へ

Last Updated on 2026年7月16日 by Co-Founder/ Researcher

2026年7月13日、SBIホールディングス(本社:東京都港区、代表取締役会長兼社長:北尾吉孝)とSolana Foundation(拠点:スイス・ツーク、President:リリー・リュー)は、日本発のオンチェーン金融市場の創出に向けた戦略的提携を発表した。

本提携の一環として、Solana財団はSBI R3 Japan(本社:東京都港区、代表取締役社長:藤本守)に参画し、同社は「SBI Solana Global株式会社(仮称)」へ商号を変更する予定である。株主であるSBIホールディングスおよび三井住友フィナンシャルグループとともに、新たな成長戦略を推進する。

商号変更後の同社は、レイヤー1ブロックチェーン「Solana」のネットワーク上での展開を前提に、JPYSCをはじめとするステーブルコインの発行・流通支援、社債やCP、ファンド、不動産等のトークン化RWAの組成・流通支援、クロスボーダー決済基盤の構築、機関投資家向けオンチェーン金融サービスの提供、AIエージェント時代を見据えた次世代決済インフラの開発に取り組む予定だ。

From:SBIホールディングスとSolana財団が日本発のオンチェーン金融市場の創出に向けた戦略的提携を開始

【編集部解説】

今回の発表で注目すべきなのは、「SBIがSolanaを選んだ」という点そのものではありません。日本の許可型ブロックチェーンの中核を担ってきた会社が、パブリックチェーン事業へ大きく軸足を移そうとしているという一点です。

SBI R3 Japanは2019年1月に、SBIホールディングスと米R3の合弁会社として設立され、同年4月から営業を開始しました。担ってきたのは、金融機関向けの許可型(パーミッションド)分散台帳「Corda」のライセンス提供と導入支援です。2020年8月にはSMFGが資本参加し、変更前の会社概要に記載されている議決権比率は、SBIホールディングス51%、R3 35%、SMFG 14%となっています。日本のエンタープライズ・ブロックチェーンにおいて、中心的な位置を占めてきた事業者と言っていいでしょう。

その会社が「SBI Solana Global」を名乗る。ただし、ここは正確に押さえておく必要があります。公式発表は「商号変更予定(仮称)」であり、変更の完了時期も、Corda事業をどうするかも公表されていません。R3自身が掲げる戦略も「パブリックとプライベートの融合(convergence)」であり、Cordaの廃止ではありません。「Solana企業への転身」と読むのは、現時点では行き過ぎです。

なお、出資比率について公式リリースに記載はありませんが、同日のWebX 2026基調講演をもとにした報道では、参画後の構成をSBIグループ51%、Solana財団35%、SMFG 14%とするものがあります。公式資料で確認できる数値ではないため、報道ベースの情報として扱ってください。

伏線は2025年5月22日に引かれていました。R3はSolana財団との戦略的提携を発表し、Corda上のプライベートな取引をSolanaメインネット上で直接確定させる構想を打ち出しています。秘密情報そのものを公開チェーンへ載せない設計も、あわせて説明されました。このとき、Solana財団プレジデントのリリー・リューが、R3の取締役会に招へいされています。R3は当時、自社エコシステム上に100億ドル超(約1兆5000億円)の規制対象資産があると自社発表しました(独立監査による残高ではありません)。

さらに2025年12月12日には、R3財団を通じてSolana上に機関投資家向けの利回りボールト「Corda protocol」を立ち上げる計画も公表されています。当初は2026年上半期の開始が予定されていましたが、2026年7月14日時点の公式サイトは「Coming soon」の表示にとどまり、一般提供の開始は確認できません。構想が示されることと、動き出すことの間には、なお距離があります。

これらを踏まえると、今回の日本の動きは突発的な方針転換ではなく、R3が進める「公と私の融合」戦略と地続きのものだと編集部は見ています。ただし、SBIの発表自体がそう位置づけているわけではありません。閉じた台帳で金融機関を集めてきた10年が、公開台帳の流動性と接続する段階に入った——技術史的に見れば、そう読める局面です。

リリースは事業の第一の柱に「JPYSCをはじめとするステーブルコインの発行・流通支援」を挙げています。ここは誤読されやすいので、丁寧に整理します。

JPYSCは2026年6月24日、SBI新生信託銀行を発行者、SBI VCトレードを流通担当として発行された、円建ての信託型ステーブルコインです(信託型として国内初、各社調べ)。共同開発にはStartale Groupが参加しています。資金決済法上の3号電子決済手段(特定信託受益権)にあたり、資金移動業者が発行する1号電子決済手段のような、滞留・売買・出庫に係る100万円の制限を受けません。大口の法人決済を将来の射程に入れられるのは、この設計ゆえです(ただし現在、SBI VCトレード上では1回あたりの注文上限が設定されています)。

そして重要なのはここからです。JPYSCは現在、SBI VCトレードの口座内でのみ売買・保有ができ、外部ウォレットへの入出庫には対応していません。SBIは技術面・実務面の準備は完了しているとしつつ、関係法令・税務実務の整理と監督当局の確認を待っていると説明しています。また、JPYSCのサービス概要で案内されているネットワークは、現時点ではEthereumと記載されています。

つまり、今回の提携が示したのは「Solana上でJPYSCを含むステーブルコインの発行・流通を支援する」という事業方針であって、「JPYSCがSolanaで発行・流通する」ことが確定したわけではありません。対応の時期も方法も未公表です。ここを混同すると、事実より2歩先の話をしてしまうことになります。

それでも、この提携の輪郭は見えてきます。信託型という「器」は作られた。次に必要なのは、それが自由に流れる回路です。Solanaは、その有力な候補として名前が挙がった——現時点で言えるのは、ここまでです。

トークン化RWAの残高は、rwa.xyzのGlobal Market Overviewで、ステーブルコインを除く移転可能な資産(distributed)が約267.1億ドル。更新日と集計範囲が異なるNetworks画面では約315.2億ドルと表示されています(いずれも2026年7月14日時点の表示。動的データのため変動します)。円換算では、およそ4兆円から4兆7000億円規模になります。ステーブルコインの残高は別建てで約2993億ドル(約44兆9000億円)です(1ドル=150円換算)。

ここで注意したいのが、rwa.xyzが用いる2つの指標です。「distributed」は、発行プラットフォーム外のウォレットへ移動でき、ウォレット間で移転できる資産を指します。一方の「represented」(約3450.7億ドル)は、ブロックチェーンを記録・照合の層として使いながらも、プラットフォーム外へは移動できない資産です。両者には約13倍の開きがあります。RWAの市場規模を語る記事を読むときは、どちらの数字なのかを確認する価値があります。

日本側の制度も、この数か月で大きく動いています。暗号資産の取引規制を資金決済法から金融商品取引法(金商法)へ移管する改正法案は、2026年4月10日に国会提出、6月11日に衆議院本会議で可決され、6月15日に参議院財政金融委員会へ付託されました。本記事執筆時点では、参議院での審議段階にあり、まだ成立していません。成立した場合、主要部分は公布から1年を超えない範囲で施行されるため、2027年中の新制度導入が視野に入ります(施行日は政令事項です)。

税制は先行しています。暗号資産の所得課税を見直す改正所得税法は、2026年3月31日に成立・公布されました。ただし対象は「暗号資産取引業者が取り扱う一定の暗号資産に係る一定の取引」であり、すべての暗号資産取引が一律に株式と同じ扱いになるわけではありません。約20%の申告分離課税への移行は、改正金商法の施行日の翌年1月1日以後の取引に適用されるため、2028年1月開始が有力視されています。

リリースが言う「世界に先駆けて整備された法制度基盤」は、SBIによる評価表現です。とはいえ、電子決済手段の制度が2023年から動き、暗号資産の金商法移管が参議院で審議されている——このタイミングで提携が発表された事実は、記憶しておく価値があります。

期待できるのは、日本の社債・CP・不動産・ファンドといった「地味だが層の厚い資産」が、国境と時間の制約を越えて流通する道が開かれることです。ただし、トークン化しただけで海外の投資家が自由に買えるようになるわけではありません。各国の証券法、勧誘規制、適格投資家要件、AML・制裁対応、源泉税といった壁は残ります。これは「接続された」話ではなく、「接続を目指す」話です。留意点も複数あります。

第一に、今回のリリースには出資比率、投資金額、商号変更の時期、サービス開始時期のいずれも記載がありません。「参画」の実質は、公式資料からは読み取れません。

第二に、パブリックチェーンを金融インフラに据えるということは、そのチェーンの可用性・手数料・バリデータ構成への依存を、規制対象の金融機関が引き受けることを意味します。もっとも、これは複数チェーン対応やオフチェーン管理で軽減しうる性質のものでもあります。

第三に、Cordaが担保してきた秘匿性やコンプライアンス機能を公開台帳上でどう両立させるか。R3はすでに設計構想を示していますが、構想が示されていることと、本番環境で性能・法的評価が実証されていることは別問題です

第四に、円建てステーブルコインの需要です。BISは2026年の資料で、ステーブルコインの価値の約98%が米ドル建てと推計しています。円建てが使われるためには、貿易決済や国内RWAの決済通貨としての固有の用途を、自力で作り出す必要があるでしょう。

事業領域の最後に、静かに置かれた一行があります。「AIエージェント時代を見据えた次世代決済インフラの開発」について。金融の文脈では読み流されがちですが、ここが最も射程の長い項目と言えるでしょう。人間ではなくAIエージェントが、都度の承認を待たずに支払いを実行する世界。まだ一般化した市場ではなく、将来シナリオの段階です。

ここで誤解を避けたいのは、「閉じた台帳では遅くて高いから無理だ」という話ではない、という点です。許可型DLTでも、設計次第で高速・低コストの決済は実現できます。公開チェーンの相対的な強みの一つは、速度そのものではなく、外部サービスとの接続性、共通の流動性プール、そして機械が直接アクセスできる開放性にあります。エージェントが自律的に動くなら、その相手は「あらかじめ許可された参加者」だけではないはずです。

SBIがなぜSolanaを選んだのか、その主因は公表されていません。R3が選定理由として挙げたのは、低い取引手数料、速度、スケーラビリティ、堅固な開発者コミュニティ、そして規制対象金融機関との関係でした。発表全体では、公開市場の流動性への接続も提携の効果として語られています。そこに「まだ存在しない経済主体=機械のための決済網」という視点を重ねたとき、この提携は金融ニュースの枠を越えてくる——これは編集部の見立てです。

【用語解説】

Corda(コルダ)
米R3が開発した金融機関向けの分散型台帳。取引データをネットワーク全体へ一律に配信せず、必要な関係者間でのみ共有する設計が特徴である。デジタル債券発行や貿易金融などの本番事例がある。

ステーブルコイン
法定通貨などに価値を連動させたトークン。価格変動を抑えることで、決済や資産の受け渡しに用いられる。

3号電子決済手段(信託型ステーブルコイン)
資金決済法上の分類の一つで、信託銀行が裏付け資産を信託財産として管理し、特定信託受益権として発行するステーブルコインを指す。資金移動業者が発行する1号電子決済手段のような、滞留・売買・出庫に係る100万円の制限を受けない。JPYSCはこの枠組みで発行された。

トークン化RWA(リアルワールドアセット)
債券、ファンド持分、不動産といった現実世界の資産を、ブロックチェーン上のトークンとして表現したもの。24時間の取引や小口分割、即時決済が可能になり得るが、実際の取引時間や分割単位は商品設計・規制・市場運営に左右される。

CP(コマーシャルペーパー)
企業が短期資金を調達するために発行する無担保の短期金融商品。償還期間は1年未満が一般的である。日本では振替制度上、電子的に発行されるものが「短期社債」として扱われる。

distributed value と represented value
rwa.xyzがトークン化資産を分類する2つの指標である。distributedは、発行プラットフォーム外のウォレットへ移動でき、ウォレット間で移転できる資産を指す(ホワイトリスト等の制限があっても該当し得る)。representedは、ブロックチェーンを記録・照合の層として利用しつつ、プラットフォーム外へは移動できない資産を指す。両者には10倍以上の開きが出るため、市場規模の議論では区別が必要となる。

利回りボールト(イールドボールト)
投資家がステーブルコイン等を預け入れ、その資金を運用戦略に振り向ける、スマートコントラクトで構成されたオンチェーンの器を指す。法的な性質は商品ごとに異なる。

申告分離課税
他の所得と分離して一律の税率で課税する方式。暗号資産については、業者が取り扱う一定の暗号資産に係る一定の取引から生じる所得を約20%の申告分離課税へ移す改正法が成立している。適用開始は改正金商法の施行に連動する。

【参考リンク】

SBIホールディングス(外部)
証券・銀行・保険・資産運用を軸とする金融グループの持株会社。ブロックチェーン領域に横断的に関与する。

SBI R3 Japan|会社概要(外部)
設立時期、事業内容、変更前の株主構成が掲載されている。Cordaの提供と導入支援を担ってきた。

R3(外部)
Cordaを開発したフィンテック企業。公開型と許可型の融合(convergence)を戦略として掲げる。

Solana(外部)
高スループットと低手数料を特徴とするレイヤー1ブロックチェーンの公式サイトである。

Solana Foundation(外部)
スイス・ツークを拠点とする非営利財団。Solanaの分散化促進とエコシステム支援を担う。

SBI VCトレード|JPYSC(外部)
JPYSCの公式ページ。仕組み、対応ネットワーク、現在の入出庫の可否が案内されている。

SBI VCトレード|JPYSC提供開始のお知らせ(外部)
2026年6月24日付。発行者、法的位置付け、口座内限定での先行提供を説明している。

参議院|金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案(外部)
暗号資産の金商法移管法案の審議状況。提出日、衆院可決日、付託状況が確認できる。

三井住友フィナンシャルグループ(外部)
SBI R3 Japanの株主の一社。3メガ銀共同でのステーブルコイン発行も協議している。

【参考記事】

R3 signals strategic shift … through collaboration with Solana Foundation(外部)
2025年5月のR3公式発表。100億ドル超の規制対象資産をSolanaへ接続する構想を示した。

R3 announces launch of Corda protocol … to bring curated yield to Solana(外部)
2025年12月の発表。Solana上に機関投資家向け利回りボールトを設ける計画を公表した。

The impact of stablecoins on the international monetary and financial system(外部)
BISの2026年報告書。ステーブルコインの価値の約98%が米ドル建てであると推計している。

SBI北尾会長、WebX 2026基調講演でAI×オンチェーン戦略を総覧(外部)
参画後の出資比率に触れた報道。公式リリースには記載がなく、報道ベースの情報である。

暗号資産の金商法移管法案、衆議院で可決。参議院へ(外部)
2026年6月11日、暗号資産を金融商品として位置づける改正法案が衆議院を通過した。

【Crypto Verse関連記事】

SBI×Solana財団の戦略的提携を、より広い文脈で理解するための関連記事をご案内します。SBIグループのステーブルコイン戦略・日本の金商法移管・Solanaエコシステムの拡大・AIエージェント決済インフラを横断的に読むことで、日本発オンチェーン金融市場の輪郭が立体的に見えてきます。

SBIグループの「4点セット」戦略

Solanaエコシステムの拡大動向

日本の金商法移管・制度整備動向

日本市場の実装事例

韓国・アジア圏の並走動向

AIエージェント決済動向(本記事第5の柱)

AI×Web3・自律検証

RWA・トークン化資産

ステーブルコイン決済インフラ

Ripple/XRPL関連

機関投資家・企業戦略

プライバシー・ゼロ知識証明

セキュリティ・攻撃手口

米国規制動向・BTC市場動向

他基盤チェーン解説

決済プラットフォーム動向

【編集部後記】

Cordaという名前を追いかけてきた方にとって、今回の商号変更は少し感慨深いかもしれません。「金融機関が公開チェーンを使うはずがない」——それが、ほんの数年前までの常識でした。ただし今回、Cordaが捨てられたわけではありません。公と私が溶け合っていく過程の、日本での一場面です。前提が静かに入れ替わっていく、その途中を見ている気がします。

みなさんは、AIエージェントに自分の資産を動かす権限を、どこまで委ねられると思いますか。ぜひ、ご意見を聞かせてください。

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※本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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By山本 達也

『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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