Ethereum下落でも買い続ける機関投資家─ロバート・キヨサキ「9万5000ドル」予測再燃の裏側

By山本 達也

2026年7月3日 #Ethereum
Ethereum下落でも買い続ける機関投資家──キヨサキ「9万5000ドル」予測再燃の裏側

Last Updated on 2026年7月3日 by Co-Founder/ Researcher

Ethereumは2026年6月30日に1,560ドル前後で取引され、直近24時間で約1%下落した。暗号資産の時価総額全体は1%下落し2.11兆ドルとなり、ビットコインは1.6%下落した。

『金持ち父さん 貧乏父さん』の著者ロバート・キヨサキが3月に示したEthereumが2027年半ばまでに9万5000ドルに達するとの予測が再浮上した。キヨサキはビットコインを75万ドル、金を1オンス3万5000ドル、銀を200ドルと予想した。Bitmineは直近1週間で27,084 ETHを購入し、保有量を約570万ETH(時価90億ドル近く、流通供給量の約4.7%)とした。SharpLinkは平均約1,611ドルで10,000 ETHを取得し、総保有量886,725 ETHに達し、2,132,773株を自社株買いして7,500万ドルを調達した。ETHは当四半期で約25%下落し、3四半期連続の下落となる見通しである。

From: Robert Kiyosaki revives $95K Ethereum call as ETH tests support

【編集部解説】

まず、なぜ Crypto Verse が「一人の著述家の価格予測」を扱うのか、という点から入らせてください。この記事の本質は、キヨサキ氏の9万5000ドルという数字そのものではありません。「弱気相場のなかで、なぜ機関投資家はEthereumを買い続けるのか」という構造的な問いにこそ、報じる価値があります。

前提を整理します。ロバート・キヨサキ氏の予測は「今出た新情報」ではありません。crypto.news 以外の複数のメディア(Finbold、CCN、Yahoo Finance)を確認したところ、元は3月にキヨサキ氏がX上で「史上最大のバブル崩壊」が近いと警告し、崩壊の1年後にEthereumが9万5000ドルに達すると予測したものでした。それが6月30日に暗号資産コメンテーターのAsh Crypto氏によって再投稿され、拡散したという流れです。つまり「再燃」であって「新予測」ではない点は、正確に押さえておく必要があります。

キヨサキ氏の予測は、実は数字だけを見ると内部矛盾を抱えています。金1オンス3万5000ドル、銀200ドル、ビットコイン75万ドル、Ethereum9万5000ドル──これらが同時に成立するには、合算で約285兆ドルの時価総額が必要になると、拡散元の投稿自体が指摘しています。現在の暗号資産市場全体の時価総額が約2兆ドル台であることを踏まえると、この数字が「予言」ではなく「金融システムへの不信を表現するレトリック」に近いことが見えてきます。ここを冷静に区別することが、Crypto Verse の読者に対する誠実さだと考えます。

より本質的なのは、記事後半の機関投資家の動きです。ここは一次情報(企業の公式発表)で裏を取りました。BitmineのETH保有は6月28日時点で5,700,040 ETH、供給量120.7百万ETHの4.7%にあたり、同社は「5%保有(Alchemy of 5%)」という目標に近づいています。SharpLink も平均約1,611ドルで10,000 ETHを買い増し、総保有を886,725 ETHとしたことが確認できます。元記事の数値は正確です。

ただし元記事が触れていない、重要な影の部分があります。SharpLink の含み損です。複数の第三者分析による推計では、SharpLinkの平均取得単価は約3,609ドル前後とされ、ETHが1,567ドル水準の場合、保有ETH全体では17億ドル規模の未実現損失が生じている可能性があります。ただし、この金額は同社の公式開示ではなく、市場価格と推定取得単価に基づく概算です。つまり「機関投資家が買い続けている」という強気の見出しの裏で、少なくとも1社は結果として平均取得単価を下げる買いを続けている、という構図です。Bitmineが大規模なETH保有とステーキング体制を早期に構築しているのとは対照的で、同じ「買い」でも意味がまったく異なります。

さらに視野を広げると、この局面の主役は実は「予測」でも「買い」でもなく、資金の綱引きです。複数分析が一致して指摘するのは、スポットETHのETFからの流出が、Bitmine と SharpLink の買いをおよそ2対1で上回っているという事実です(これは両社の買いとETF流出を比較した範囲での話であり、市場全体の需給そのものを示すものではありません)。つまり、機関投資家の一部が果敢に買っても、ETF経由でそれ以上の資金が逃げている。ここに、価格が上がりにくい大きな要因の一つがあります。

技術面・マクロ面も補っておきます。ビットコインは6月30日時点で6万ドルを割り込んでいます(一部データでは約5万9400ドル)。資本が最大の暗号資産に退避し、アルトコインの流動性が細っている構図がうかがえます。加えて、一部報道によれば、Bitmine会長のトム・リー氏はETHの下落を四半期末の「ウィンドウ・ドレッシング」(運用成績を繕うための売り)と説明したとされます。四半期をまたげば売り圧力が和らぐ可能性を示唆した見方で、記事の「1,500ドルを守れば来月反発も」という技術的観測と符合します。

長期の視点で締めます。Ethereum が歴史上初めて3四半期連続の下落に向かっているという事実は、単なる弱気サインではありません。「短期の価格」と「長期のファンダメンタルズ」が、いま歴史的な乖離を見せているということです。ウォール街の資産トークン化、AIエージェントによる決済といった需要への期待は着実に積み上がりつつある一方、ETFという新しい売買チャネルが、局面によっては下落圧力を強める方向に作用している。キヨサキ氏の9万5000ドルという「祭り」の裏で進行しているのは、Ethereum が投機対象から金融インフラへと脱皮する過程の、静かで痛みを伴う調整なのかもしれません。

【用語解説】

Ethereum(イーサリアム)/ETH
スマートコントラクト(自動実行される契約)を扱える分散型ブロックチェーンであり、ETHはその基軸となる暗号資産である。時価総額はビットコインに次ぐ第2位で、DeFiやトークン化資産の基盤として使われる。

トレジャリー企業(Digital Asset Treasury/DAT)
自社の財務準備金として、現金や国債の代わりに暗号資産を大量保有する上場企業を指す。ビットコインで先鞭をつけたStrategy(旧MicroStrategy)の手法を、Ethereumに応用したのがBitmineやSharpLinkである。株式を通じて間接的にETHへ投資できる「器」として機能する。

ステーキング
保有するETHをネットワークの検証作業に預け入れ、その対価として報酬(利回り)を得る仕組みである。トレジャリー企業が単に保有するのではなく「利回りを生む資産」としてETHを扱う根拠となっている。

支持帯(サポートゾーン)/需要ゾーン
価格が下落した際に買いが入りやすく、下げ止まりやすいとされる価格帯を指す。本件では1,500ドル前後がその重要な節目と見られている。逆に上昇を抑える価格帯を抵抗線(レジスタンス)と呼ぶ。

ウィンドウ・ドレッシング
四半期末などに、運用担当者が成績の悪い銘柄を売却し、顧客向けの報告書上で見栄えを整える行為を指す。Bitmine会長のトム・リー氏が、ETH下落の一因として挙げたとされる見方である。

含み損(未実現損失)
保有資産の時価が取得価格を下回っている状態で、まだ売却していないため確定していない損失を指す。SharpLinkは高値圏で取得した分が多く、大きな含み損を抱えているとされる。

スポットETF(現物ETF)
現物のビットコインやETHを裏付けとして持つ上場投資信託である。証券口座から株式のように売買でき、機関投資家の資金流出入が価格形成に影響を与えやすい。本件では、ETHスポットETFからの資金流出が下落圧力の一因と分析されている。

【参考リンク】

Ethereum 公式サイト(外部)
Ethereumの技術・エコシステムに関する公式ポータル。仕組みやウォレット、開発情報を多言語で提供している。

Bitmine Immersion Technologies 公式サイト(外部)
世界最大のETHトレジャリー企業(NYSE:BMNR)の公式サイト。会長の市場見解やETH保有・ステーキング状況を開示している。

SharpLink 公式サイト(外部)
Ethereumトレジャリー戦略を掲げる上場企業(Nasdaq:SBET)の公式サイト。ETH保有と自社株戦略の情報を提供している。

SharpLink 投資家向けページ(IR)(外部)
SharpLinkのプレスリリースを一次情報で確認できるIRサイト。取得量や取得単価、資本政策を随時掲載している。

crypto.news(外部)
本件の元記事を配信した暗号資産専門の英語メディア。価格分析や機関投資家動向を速報で扱っている。

【参考記事】

Bitmine Immersion Technologies (BMNR) Announces ETH Holdings Reach 5.70 Million Tokens(PR Newswire)(外部)
Bitmineの公式発表。6月28日時点でETH保有5,700,040枚(供給量の4.7%)、直近1週間で27,084 ETH取得を開示した。

SharpLink buys more Ethereum as ETH heads for rare quarterly slump(crypto.news)(外部)
SharpLinkが平均1,611ドルで10,000 ETHを取得し総保有886,725 ETHに達したこと等を確認した姉妹記事。

Ethereum ETF Outflows 2026: BitMine, SharpLink vs. $1,500 Risk(Spoted Crypto)(外部)
ETF流出が両社の買いを約2対1で上回る点や、SharpLinkの含み損の推計を示した分析記事。

Ethereum Whale Tom Lee Flags Peak Market Fear as SharpLink Buys 10,000 ETH(BeInCrypto)(外部)
SharpLinkの取得単価が直後に含み損化した点や、ETHの過去最高値からの下落経緯を確認した。

Ethereum Price to $95K? Bullish Robert Kiyosaki Call Resurfaces(CCN)(外部)
キヨサキ予測が3月の投稿で、6月に再投稿で拡散した経緯を確認。「再燃」と位置づける根拠とした。

Robert Kiyosaki predicts ETH to hit $95,000 after ‘biggest bubble in history’(Finbold)(外部)
予測全体像(金・銀・BTC・ETH)とETHスポットETFへの純流入額を確認するために参照した。

【Crypto Verse関連記事】

本記事のEthereum 1,560ドル支持帯テスト・キヨサキ「9万5000ドル」予測再燃・Bitmine 570万ETH保有(供給量4.7%)・SharpLink含み損17億ドル規模推計・ETF流出が買いを2対1で上回る・ウィンドウドレッシング要因・ETH 3四半期連続下落の構造的背景をより深く理解するための、Crypto Verseの関連解説記事をご案内します。

企業のトレジャリー戦略(DAT)とEthereum

Ethereum・機関投資家・ETFフロー動向

BTC市場・マクロ動向

RWA・トークン化・長期ファンダメンタルズ

AI×Web3・自律エージェント決済(長期ファンダメンタルズ)

ステーブルコイン決済インフラ

Ripple/XRPL関連

日本市場・実需領域

米国規制動向・アジア圏動向

AI×身分証・AI業界動向

基盤チェーン解説

決済プラットフォーム動向

セキュリティ・運用リスク

【編集部後記】

9万5000ドルという数字は、たしかに胸が高鳴りますよね。でも今回いちばん気になったのは、価格が下がり続けるなかでも企業が黙々とETHを買い続けている、その静かな確信のほうでした。祭りの喧騒と、水面下で進む地殻変動。みなさんはどちらに未来の手触りを感じるでしょうか。

もしよければ、「トレジャリー企業」という新しい主役の動きを、これから一緒に追いかけてみませんか。答え合わせは、たぶん数年後にやってきます。

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※本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
 詳細は当サイトの免責事項をご確認ください。
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By山本 達也

『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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