Last Updated on 2026年6月19日 by Co-Founder/ Researcher
bitFlyerは2026年6月24日にSOL(Solana)の取り扱いを開始する。bitFlyerは2014年創業の日本の暗号資産取引所で、2017年に暗号資産交換業者として登録されて以降、その登録を維持している。
この上場は約2週間で3件目の日本とSolanaに関する機関レベルの動きとなる。6月4日にはSBI VCトレードが、WIZEのSolana保有資産について取引・保管・運用での連携開始を発表した。その数日後、東証上場のEnishが保有ビットコインを全売却し、Solanaのステーキングおよびバリデータ戦略へ転換した。並行して、日本の衆議院では暗号資産取引の規制を資金決済法から金融商品取引法へ移す改正法案が可決された。
暗号資産の利益への課税を最高約55%から約20%の申告分離課税へ見直す措置は、この改正の施行を前提に別途進められる。改正法案は参議院での可決と施行を要する。bitFlyerは日本、米国、欧州で取引所を運営している。
From: bitFlyer to List SOL on June 24 as FSA-Licensed Exchange Joins Japan’s Solana Push
【編集部解説】
今回の bitFlyer による SOL 上場は、単独で見れば「国内大手の取引所が、また一つ主要銘柄を増やした」という話に過ぎません。Crypto Verse がこのタイミングで取り上げる理由は、この一件が日本の暗号資産環境そのものが構造的に動き出した瞬間の、わかりやすい一断面だからです。
まず押さえておきたいのは、bitFlyer の発表が「販売所」での取り扱い開始を指している点です。同社の告知文は「ビットフライヤーの販売所で誰でも簡単・手軽に売買できるようになります」と述べています。販売所は取引所(板取引)と比べてスプレッドが広くなりやすく、初心者向けの入り口という性格を持ちます。海外メディアの一部は「order book(板)」と表現していますが、一次情報に当たると、まずは販売所での提供が起点だと読むのが正確です。
次に、元記事の核心である「日本の税制改正」について、重要な補足があります。元記事は法案が「今年のはじめ(earlier this year)」に可決されたと記していますが、実際に日本の衆議院が可決したのは2026年6月11日であり、記事公開のわずか5日前の出来事でした。
さらに踏み込むと、この法案の本体は「税率の引き下げ」そのものではありません。中身は暗号資産を資金決済法(Payment Services Act)の枠組みから金融商品取引法(FIEA)へと移す再分類です。株式や債券などの有価証券とまったく同じ扱いになるわけではなく、金商法上の「金融商品」として、有価証券とは別枠で規制が及ぶ整理です。
税率を約55%から一律20%へ下げる措置は、これとは別に「2026年度税制改正大綱」に基づくもので、施行は2028年が見込まれています。元記事はこの2つを一体のものとして描いていますが、複数の英語メディア(The Defiant、Unchained など)は両者を明確に分けて報じています。「55%→20%」という数字自体は正しいものの、「いつ・何が決まったのか」は分けて理解する必要があります。
なぜこの区別が読者にとって大切なのでしょうか。FIEA への再分類は、国内で取り扱われる暗号資産(報道では105銘柄規模とされます)に広く開示義務やインサイダー取引規制を及ぼし、暗号資産ETFへの制度的な道を開くものです。つまり影響範囲は SOL 一銘柄にとどまらず、日本市場の制度設計の根幹に関わります。
ここに、過去2週間で重なった3つの動き——SBI VCトレードによる WIZE のSolana取引・保管・運用サポート、Enish の全ビットコイン売却とSolanaステーキングへの転換、そして今回の bitFlyer 上場——を重ねると、「個別企業の判断」が「制度の追い風」と共鳴している構図が見えてきます。
ただし、これを「日本がこぞってSolanaに賭け始めた」と読むのは早計です。3者の動機はそれぞれ異なります。SBI は機関投資家向けカストディ事業の顧客獲得、Enish は値上がり益依存からステーキング利回り(報道では年6〜8%とされます)への転換、bitFlyer はリテール向け品ぞろえの拡充です。元記事も「協調的なキャンペーンではない」と認めており、ここは冷静に分けて捉えるべきところです。
潜在的なリスクにも触れておきます。Enish は保有していた8.063BTCを約7927万円で売却しました。会計上の売却損として計上されるのは約622万円ですが、取得価額(約1億400万円)との差で見れば、経済的にはより大きな目減りを抱えての方針転換です。利回りを取りに行く戦略は魅力的に映りますが、原資産であるSOLの価格は6月上旬に一時81ドルから66ドル台へ下落するなど、ボラティリティは依然として高い水準にあります。狙った利回りが価格下落で相殺される可能性は常に残ります。
規制の観点で見れば、bitFlyer が2017年以降、Coincheck流出事件後の取り締まりを含む数度の規制強化を生き延び、継続してFSA登録を維持してきた事実は重みを持ちます。同社が銘柄として取り扱うという事実は、「現在の金融庁が何を許容しているか」を推し量る一つの目安になる、という元記事の指摘は妥当だと考えます。ただし、登録や取り扱いは金融庁による価値の保証や推奨を意味するものではありません。
長期的な視座で言えば、今回の一連の動きは「日本が暗号資産を、別枠の特殊な資産から既存の金融システムの内側へ取り込む」という大きな転換の入り口に位置づけられます。税制改正の施行は2028年、ETFの実現は早くて2027年と、果実が出るのはまだ先です。しかも法案は参議院の可決という関門を残しています。
それでも、制度が整う前に主要プレイヤーが先回りして布石を打ち始めた、という事実こそが「未来を報じる」我々にとっての本質です。目先の上場というニュースの奥で、日本の金融の地図そのものが書き換わりつつあります。読者の皆さんは今、その地殻変動のごく初期に立ち会っているのかもしれません。
【用語解説】
カストディ
暗号資産を安全に保管・管理する受託サービス。秘密鍵の管理を含み、機関投資家が直接保有を避けて専門業者に委ねる際の要となる。
ステーキング
保有する暗号資産をネットワークに預け入れ、取引の検証に参加することで報酬を得る仕組み。Proof-of-Stake型ブロックチェーンで用いられる。
バリデータ
ブロックチェーン上で取引の正当性を検証し、ネットワークの安全を支える役割を担うノード(またはその運営者)。
暗号資産トレジャリー(戦略)
企業が自社の資産(財務)の一部を暗号資産で保有・運用する戦略。値上がり益を狙う型から、ステーキング等で継続収益を得る型へと広がりつつある。
Coincheck事件
2018年に国内取引所Coincheckで発生した大規模な暗号資産流出事件。これを契機に金融庁の規制強化が進み、体力の弱い事業者が市場から退出した。
【参考リンク】
bitFlyer(ビットフライヤー)(外部)
2014年創業の国内大手暗号資産取引所。今回SOLの取り扱い開始を発表した当事者で、公式サイトでプレスリリースを確認できる。
Solana(ソラナ)公式サイト(外部)
高速・低コストな処理を特徴とするブロックチェーン。今回上場対象のSOLはその基軸トークンで、技術仕様やエコシステム情報を掲載する。
SBI VCトレード(外部)
SBIホールディングス傘下の暗号資産取引所。SOLの取り扱いやステーキングを提供し、WIZEのSolana運用を受託した当事者である。
SBIホールディングス(外部)
SBI VCトレードの親会社で日本最大級の金融グループ。証券・銀行・暗号資産など幅広い金融事業を展開している。
株式会社enish(外部)
東証スタンダード上場のモバイルゲーム企業。保有ビットコインを全売却しSolanaステーキング戦略へ転換したと報じられた。
【参考記事】
Japan’s Lower House Passes Bill Moving Crypto Under Securities Law(The Defiant)(外部)
衆議院が暗号資産をFIEA下へ再分類する法案を可決。一律20%課税は別措置で施行2028年見込みと整理する記事。
Japan’s crypto tax bill clears Lower House, heads to Upper House(Crypto Briefing)(外部)
2026年6月11日に衆議院が法案を可決し参議院へ。約55%から一律20%への引き下げと施行2028年見込みを報じる。
Japanese game firm Enish dumps Bitcoin, Bets on Solana staking(Cryptopolitan)(外部)
Enishが8.063BTCを約7927万円で売却。取得価額約1億400万円との差で経済的な目減りを生じたと報じる。
Ripple-backed SBI takes control of WIZE’s Solana treasury(crypto.news)(外部)
SBI VC TradeがWIZEのSolana資産の取引・保管・運用を担うと報道。機関向けSBIVC for Primeでの提供と説明する。
Vietnam preps crypto pilot, HK pushes tokenization: Asia Express(Cointelegraph Magazine)(外部)
アジアの暗号資産動向をまとめた記事。WIZEが直接約32,100SOLを保有し運用分約121,000SOLを管理すると伝える。
One of Asia’s most regulated crypto markets just said yes to Solana(Yahoo Finance)(外部)
bitFlyerが6月24日にSOL取引開始と確認。SOLを時価総額7位と位置づけ、PoSとPoH併用の高速処理を紹介する。
Solana price prediction | ETF Inflows Lag Sell-Off(Capital.com)(外部)
2026年6月上旬のSOL価格動向を伝える記事。6月8日時点で約66ドル、節目の80ドル・70ドルを下抜けたと記す。
Japan’s Enish sells all bitcoin holdings, steps up Solana-focused digital asset strategy(Digital Today)(外部)
Enishの売却損を会計上約622万円と明記。本訂正で計上損と経済的損失を区別する根拠として参照した。
【Crypto Verse関連記事】
本記事のbitFlyer SOL上場・日本のSolana関連動向・金融商品取引法改正・税率20%引き下げ・2028年施行見込み・暗号資産ETFへの道筋の構造的背景をより深く理解するための、Crypto Verseの関連解説記事をご案内します。
Solanaの基礎を知る
- Solanaとは?高速・低コストのブロックチェーンの仕組みと特徴を徹底解説 → 本記事のbitFlyerが上場するSOLの基盤Solanaの全体像。高速処理・低手数料・PoSとPoH併用といった技術特性を、日本で取り扱いが拡大する文脈で理解する出発点として参考になります。
日本のSolana関連動向(過去2週間の3件目)
- enishがビットコイン全売却、Solana中心の「DAT 2.0」へ転換|運用型トレジャリーの狙い → 本記事が「3件目の動き」として位置づける、Enishの企業財務戦略転換の詳細。8.063BTC全売却とSolanaステーキング戦略の実態を理解できます。
- SpaceX・Solanaが変える株式投資|3つのトークン化商品、その仕組みとリスク → 本記事の日本でのSolana動向と並走する、Solanaエコシステムへのグローバル資金流入動向。「日本でSOLが買える」「Solana上でSpaceX株が取引される」両方向の動きを理解できます。
日本の暗号資産規制環境・制度動向
- メタプラネット、Siiibo証券を21億円で買収—ビットコイン連動金融商品「Project Nova」始動 → 本記事の金商法改正と並走する、日本企業による暗号資産の金融商品化動向。「制度の追い風」と「個別企業の判断」が共鳴する構造を理解できます。
- SecondFi始動|「鍵は自分のまま」EMURGOが挑む、暗号資産で使う・貯める・稼ぐ時代 → 本記事のbitFlyer販売所と対極にある、自己管理型サービスの実装事例。「取引所で買う」「自分で管理する」両方向の選択肢を理解できます。
- HyperLending、日本初HYPE対応の暗号資産レンディング開始 → 本記事のSOL上場と並走する、日本の暗号資産サービスの拡大事例。「品揃え」と「サービス領域」の両軸で日本市場が広がる動向を理解できます。
米国規制動向との比較
- CLARITY Act、Coinbase・Rippleら200社超が上院に採決要求─成立確率60%に低下 → 本記事の日本における金商法改正と並走する、米国の規制整備動向。日米それぞれの制度設計の違いを比較理解できます。
- Coinbase、ステーブルコイン決済の課税撤廃を米議会に要請 ― 暗号資産税制改革の行方 → 本記事の日本の税率20%引き下げと並ぶ、米国側の税制改革動向。各国の暗号資産税制の動向を比較できます。
- FBI被害113億ドル受け、米議会がクリプト犯罪対策の連邦タスクフォース新設法案を提出 → 本記事の規制強化の文脈と並走する、米国の被害者保護動向。グローバルな規制整備の全体像を理解できます。
機関投資家・市場心理・直前の市場動向
- ビットコイン7万ドル回復なるか、スカラムッチ・ノボグラッツが挙げるCLARITY法案・債務・SpaceX → 本記事と同時期に発表された、ビットコイン市場の回復シナリオ。「日本の制度整備」と「米国の回復期待」が同時並行で進む市場心理を理解できます。
- ビットコイン6万2000ドル割れ、Strategy 32BTC売却が招いた18億ドル清算の連鎖 → 本記事のSOL価格変動(81ドル→66ドル台)と類似する、BTC市場の調整局面。「制度整備」と「価格変動」の同時進行を理解できます。
- ビットコインETF、過去最長13日の純流出。約43億ドルが抜けた背景とETFが「限界的な買い手」になった構造変化 → 本記事の「日本での暗号資産ETF道筋」と対比される、米国の現物ETFフローの実態。日本のETF解禁が遅れている間に米国で進行する構造を理解できます。
Solana・他基盤チェーンとの比較
- XRP Ledger(XRPL)とは?分散型ブロックチェーンの仕組みと特徴を徹底解説 → 本記事のSOLと並ぶ、機関投資家向け基盤チェーンの構造解説。「日本市場でどのチェーンが採用されるか」の比較理解に役立ちます。
- Hyperliquidとは?HYPE基盤のレイヤー1ブロックチェーンとオンチェーンCLOBアーキテクチャの完全解剖 → 本記事のSolanaと並ぶ、別のレイヤー1ブロックチェーンの構造解説。「日本の販売所では扱われないが、グローバルでは利用されている」基盤の動向を理解できます。
- XRP Ledger vs Ethereum、RWA資本移動説の真相─未検証の15億ドルをどう読むか → 本記事の「日本がSolanaを取り込む」動きと並走する、グローバルなチェーン間競争の検証。資本がどのチェーンに集まるかの分析手法を理解できます。
決済・AI×Web3・新領域
- Visa×OpenAIが拓くAIエージェント決済|Visaのステーブルコイン決済は年換算70億ドル規模に → 本記事の日本での制度整備と並走する、グローバルなAI×決済の動向。「日本でSOLが買える」その先に何があるかを多角的に把握できます。
- Ripple、XRPとRLUSDでAIエージェント決済へ参入─USDCが席巻するx402市場に挑む → 本記事のbitFlyer SOL上場と並ぶ、決済領域のAI×ブロックチェーン動向。
- X Money決済とは?イーロン・マスクが描く「総合金融プラットフォーム」の正体 → 本記事の金融商品取引法改正による「暗号資産の金融化」と並走する、別経路での金融プラットフォーム化動向。
AI×Web3・身分証・セキュリティ
- アライドアーキテクツ × Nyx Foundation、AIがDeFiの安全を”検算”する時代へ → 本記事の日本の暗号資産制度整備と並走する、日本拠点のAI×セキュリティ研究動向。「日本がオンチェーン金融の安全を担う」基盤の構築を理解できます。
- Worldcoin(WLD)とは?AI時代の「本人性証明」と独自のデジタルIDインフラ構造【2026年版】 → 本記事のFIEA下でのインサイダー取引規制と関連する、本人性証明インフラの動向。
- Worldcoin(WLD)はヘイズなしで価格を保てるか—AI時代の身分証トークンを読む → 本記事のSOL価格変動と並ぶ、新興トークンの市場心理事例。
セキュリティ・運用リスク
- Hola Browser にクリプトマイナー混入、Sophos が発見—サプライチェーン侵害の手口とは → 本記事のbitFlyer販売所での取引と並走する、ユーザー側のセキュリティリスク事例。「販売所で買った後の自己防衛」の重要性を理解できます。
【編集部後記】
今回の一連の動きを、みなさんはどう受け止められたでしょうか。bitFlyerの上場という入り口の奥で、日本の暗号資産の制度そのものが静かに書き換わりつつあります。税制やETFの行方は、2027年、2028年へと続く長い物語の始まりかもしれません。
あなたなら、この変化のどこに未来の手触りを感じますか。よければ、その視点を聞かせてください。
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