Last Updated on 2026年6月27日 by Co-Founder/ Researcher
「ドルのステーブルコインがまた一つ日本で買えるようになった」——そう聞くと、暗号資産に詳しい人だけの話に思えるかもしれません。けれど今回の出来事は、少し毛色が違います。日本がステーブルコインを受け入れるために用意しておきながら、これまで誰も座っていなかった「空席」が、初めて埋まったからです。法律の条文の片隅にあった区分が、ある日とつぜん現実の商品に姿を変える。その瞬間に、海外発のデジタルドルと、日本の金融制度が静かに握手を交わしました。派手な値上がりニュースの陰で進む、こうした「制度とテクノロジーのかみ合わせ」こそ、数年後の私たちの財布や送金のあり方を決めていきます。まずは何が起きたのか、順を追って見ていきましょう。
SBIホールディングスの連結子会社であるSBI VCトレードは、2026年6月24日のメンテナンス終了後から、VCTRADEサービスにおいて、Ripple Labs Inc.の米ドル建てステーブルコイン「RLUSD」の取扱いを開始した。国内初の4号電子決済手段となり、入出庫の手数料は無料である。
RLUSDは、ニューヨーク州認可の特定目的信託会社である米Standard Custody & Trust Company, LLC.が発行し、米ドル預金や米国短期国債などで裏付けられ、第三者会計事務所による月次の検証を受けている。SBI VCトレードは2025年3月から米ドル建てステーブルコインのUSDCを取り扱っており、これでドル建ては2銘柄となった。
VCTRADEサービスの対応チェーンはイーサリアムのみで、出庫上限は1回あたり100万円相当額である。SBIグループとリップルは2016年から協働してきた。
From: 国内初※1の4号電子決済手段※2となるステーブルコイン「RLUSD」取扱い開始のお知らせ ~SBIグループとリップルとの強固なパートナーシップにより実現~
【編集部解説】
このニュースの核心は、日本の資金決済法が定める電子決済手段のうち、これまで国内で誰一人として指定されてこなかった「4号」という空席に、RLUSDが初めて座った(※SBI VCトレード調べ)という点にあります。
まず「4号電子決済手段」という耳慣れない言葉を整理しておきましょう。改正資金決済法は、ステーブルコイン(デジタルマネー類似型)を1号から4号までの4種類に区分しています。1号は法定通貨を裏付けに発行され同額償還を約束するもの、3号は信託会社(信託銀行を含む)が発行する「特定信託受益権」型です。そして4号は、1号から3号に準じるものとして内閣府令で定める、いわば「受け皿」の区分です。
重要なのは、複数の法律事務所や監査法人が施行当初から「4号に指定されるものは当面見込まれていない」と解説してきた、その空席に今回初めて具体的な銘柄が当てはめられたという点にあります。制度上の「未踏区分」が初めて実体を持った瞬間と言い換えてもよいでしょう。
なぜRLUSDは1号でも3号でもなく4号だったのか。SBI VCトレードは脚注で、RLUSDが米国法上は信託受益権ではないと明記しつつ、日本法の観点から4号にあたると整理した旨を述べています。つまり、海外で発行された規制準拠型ドルステーブルコインを、日本の制度のどこに収めるかという「翻訳作業」の答えが4号だった、という構図です。
ここで一つ、参照元とは異なる角度を提示しておきます。発行元のリップルといえば独自ブロックチェーンXRP Ledger(XRPL)の印象が強いものの、今回VCTRADEが入出庫に対応するチェーンはイーサリアムのみです。RLUSDはイーサリアムとXRPLの両方で発行されていますが、日本の利用者がまず触れるのはイーサリアム版になります。海外メディアのProtosは、この点と1回あたり約6,200ドル(100万円相当額)という上限を「規制という現実」として淡々と指摘しており、祝祭ムードとは一線を画した冷静な視点として記録に値します。
この技術によって何が可能になるのか。RLUSDは米ドル預金や米国短期国債で裏付けられ、第三者会計事務所による月次検証を受けています。これにより、ドル建ての価値をオンチェーンで保持し、原則24時間365日(メンテナンス時間を除き、出庫には時間を要する場合があります)、手数料無料で入出庫できる選択肢が日本の利用者に増えます。リップルのジャック・マクドナルド氏が「決済、トークン化、担保管理の架け橋」と表現したように、企業の資金移動や担保運用といった実需への接続が視野に入ります。
ポジティブな側面は、選択肢の多様化と透明性です。SBI VCトレードのドル建てステーブルコインは2025年3月取扱い開始のUSDCに続いて2銘柄となり、利用者は裏付け構造や発行体の異なる商品を比較できるようになりました。コンプライアンスと準備資産の透明性を売りにするRLUSDは、規制を重視する日本市場の体質と相性がよいと評価する声もあります。
一方で、潜在的なリスクから目を逸らすべきではありません。発行元の米Standard Custody & Trust Companyが破綻した場合の償還義務、裏付け資産(米ドル)との価格乖離、為替変動による円換算価値の目減りなど、SBI VCトレード自身が注意事項として列挙しています。1回100万円の出庫上限や日次預託上限も、利便性の制約として理解しておく必要があります。
規制への影響という長期的な視点では、今回の「国内初の4号電子決済手段としての取扱い」は、実務上の前例として機能する可能性があります。海外発のステーブルコインを日本の枠組みに組み込むひな型ができたことで、後続の銘柄が同じ道を通りやすくなる可能性があります。実際、同じ2026年6月24日には、SBIグループがStartale Groupと共同で、同社発表によれば国内初となる信託型円建てステーブルコイン「JPYSC」(3号型)も発行しました。こちらは当初SBI VCトレードの口座内限定での先行提供で、外部ウォレットへの出庫は当面できませんが、関係法令や税務実務の整理を経て、パブリックチェーン上での流通を目指すとしています。さらに、三菱UFJ・みずほ・三井住友の3行は、共同発行するステーブルコインの2026年度中(2027年3月まで)の実取引開始をめざしています。
総じて、今回の発表は派手な値動きのニュースというより、日本のデジタル金融インフラが法制度の面で一段成熟したことを示す「静かな節目」です。未来を報じる立場から見れば、ドルと円、海外発と国産、4号と3号といった複数の選択肢が同じ日に日本市場へ出そろい始めた、その地図の更新点として記憶しておくべき出来事だと言えます。
【用語解説】
ステーブルコイン
法定通貨など特定の資産に価値を連動させ、価格変動を抑えるよう設計されたデジタル資産。ビットコインなどと異なり「1コイン=1ドル」のように価値を一定に保つことを目指す。決済や送金、オンチェーン金融での利用が想定される。
4号電子決済手段
資金決済法2条5項が定める電子決済手段の4類型(1〜4号)のうち、1〜3号に準じるものとして内閣府令で定める「受け皿」区分。
特定信託受益権(3号電子決済手段)
信託会社(信託銀行を含む)が発行し、受け入れた金銭の全額を預金等で管理する金銭信託受益権の形をとるステーブルコイン。保有者は信託受益権を持つ。
JPYSC
SBIグループがシンガポールのStartale Groupと共同開発した信託型円建てステーブルコイン。SBI新生信託銀行が発行する3号型で、RLUSDと同じ2026年6月24日に発行された。当初はSBI VCトレードの口座内限定での先行提供で、外部ウォレットへの出庫は当面不可。今後、パブリックチェーン上での流通を目指す。
【参考リンク】
SBI VCトレード(公式サイト)(外部)
本件を発表したSBIグループの暗号資産・電子決済手段の取引事業者。RLUSDの取扱銘柄・手数料・口座開設情報を掲載している。
Ripple(リップル 公式サイト)(外部)
RLUSDの発行と世界展開を主導する米国の企業向けブロックチェーン/暗号資産ソリューション企業。決済・カストディ事業も手がける。
Ripple USD(RLUSD)紹介ページ(外部)
RLUSDの仕組みや裏付け資産、対応チェーン(XRPL・イーサリアム)、月次検証を発行元自身が解説する公式ページ。
SBIホールディングス(公式サイト)(外部)
SBI VCトレードの親会社で、2016年からリップルと協働してきた金融グループ。企業情報やIR資料を掲載している。
Circle / USDC(公式サイト)(外部)
SBI VCトレードが2025年3月から取り扱う、もう一つの米ドル建てステーブルコインUSDCの発行元による公式情報。
Ethereum(公式サイト)(外部)
今回VCTRADEがRLUSDの入出庫に対応する唯一のブロックチェーン。スマートコントラクトを支える基盤の公式情報。
【参考記事】
SBI Partners with Ripple to Launch RLUSD Stablecoin in Japan by 2026(AInvest)(外部)
世界のステーブルコイン市場を約3,000億ドル、RLUSD時価総額を6.66億ドル超とするなど数値を整理した記事。
Ripple Taps SBI to Distribute RLUSD Stablecoin in Japan, But XRP Falls(CryptoPotato)(外部)
RLUSD流通量6.66億ドル、市場シェア0.24%など、提携発表時の市場反応を数値で押さえた記事。
Ripple used Ethereum to list its RLUSD stablecoin in Japan(Protos)(外部)
VCTRADEのRLUSDがイーサリアム上のみで提供される点や、上限約6,200ドルを冷静に指摘した記事。
Ripple and SBI to Launch RLUSD Stablecoin in Japan by Early 2026(Decrypt)(外部)
改正資金決済法が外国発行体に市場を開いた制度的背景を、専門家コメントを交えて解説した記事。
Japan’s SBI nears launch of yen stablecoin JPYSC(Digital Today)(外部)
3メガバンクの実取引目標やStartaleの資金調達など周辺動向を伝える記事。JPYSCを発行間近と報じるが、実際は6月24日に先行提供を開始済み。
Ripple (XRP) News: SBI Group Is Building Japan’s First XRP ETF(24/7 Wall St.)(外部)
SBIが2016年来リップルの筆頭外部株主で約9%を出資する、両社の関係の深さを数値で示す記事。
ステーブルコインに関する法規制の概要とポイント解説(EY Japan)(外部)
電子決済手段の1〜4号区分を、法令と金融庁資料に基づき整理した日本語の法規制解説。
国内初の信託型円建てステーブルコイン「JPYSC」の提供開始に関するお知らせ(SBI VCトレード)(外部)
JPYSCが6月24日に発行・口座内限定で先行提供開始した事実を確認した一次情報。JPYSC関連の訂正に使用。
【Crypto Verse関連記事】
本記事のSBI VCトレード×Ripple RLUSD取扱開始・国内初の4号電子決済手段・改正資金決済法の4類型・USDCに続くドル建て2銘柄目・SBIとRippleの2016年来の協働・JPYSCとの同日ローンチの構造的背景をより深く理解するための、Crypto Verseの関連解説記事をご案内します。
SBI×ステーブルコインの同日ペア記事
- JPYSC始動―SBI・Startaleが国内初の信託型円ステーブルコインを発行 → 本記事のRLUSD取扱開始と同日(2026年6月24日)に発行された、SBIグループの円建てステーブルコイン。「ドル(4号・本記事)」と「円(3号・JPYSC)」の二刀流戦略を、両記事併読することで立体的に理解できます。
Ripple/RLUSD関連の動向
- Ripple、XRPとRLUSDでAIエージェント決済へ参入─USDCが席巻するx402市場に挑む → 本記事のRLUSD国内上場と並走する、グローバル市場でのRLUSD戦略動向。USDCに対する後発参入の競争構造を、日本市場の文脈でも理解できます。
- Ripple、XRPL「AI Starter Kit」でAIエージェント決済へ──x402対応とGenAI人材募集の狙い → 本記事の日本市場展開と並走する、RLUSDのAI決済対応動向。「決済資産としてのRLUSD」のグローバル戦略を理解できます。
- RLUSDに利回り活用の道─SOILとXRPL Lending Protocolが拓くXRPLネイティブ融資 → 本記事の日本市場展開と並ぶ、XRPL上でのRLUSD利回り活用動向。「決済」「利回り」両軸でのRLUSD用途拡張を理解できます。
- XRP Ledger(XRPL)とは?分散型ブロックチェーンの仕組みと特徴を徹底解説 → 本記事のRippleが運営に関わるXRP Ledgerの全体像。本記事ではEthereum版のみ対応のRLUSDが、本来はXRPLとの両対応である背景を理解できます。
ステーブルコイン・決済インフラの動向
- ステーブルコインとトークン化で家計は軽くなる?米上院公聴会、賛否とCLARITY Actの行方 → 本記事の日本での4号上場と並ぶ、米国側のステーブルコイン議論動向。「日本の実装」と「米国の議論」の同時並行を理解できます。
- Coinbase、ステーブルコイン決済の課税撤廃を米議会に要請 ― 暗号資産税制改革の行方 → 本記事のRLUSD国内導入と並ぶ、米国側のステーブルコイン税制改革動向。日米双方の制度整備の比較理解に役立ちます。
- Visa×OpenAIが拓くAIエージェント決済|Visaのステーブルコイン決済は年換算70億ドル規模に → 本記事のRLUSDが目指す決済インフラと並走する、TradFi×暗号資産統合の最新事例。
- X Money決済とは?イーロン・マスクが描く「総合金融プラットフォーム」の正体 → 本記事の決済インフラ動向と並ぶ、別経路(プラットフォーマー主導)での金融プラットフォーム構想。
日本の規制環境・金融機関動向
- bitFlyer SOL上場の本当の意味─Solanaに集まる日本企業と金融商品取引法改正 → 本記事のRLUSD上場と並走する、日本市場での暗号資産関連サービス拡大事例。「銘柄追加」「制度整備」両軸での日本市場の成熟を理解できます。
- SecondFi始動|「鍵は自分のまま」EMURGOが挑む、暗号資産で使う・貯める・稼ぐ時代 → 本記事のVCTRADEサービス(運営者にカストディ)と対極にある、自己管理型サービスの実装事例。
- HyperLending、日本初HYPE対応の暗号資産レンディング開始 → 本記事のSBI VCトレードによるRLUSD取扱と並ぶ、日本市場での暗号資産関連サービスの拡大事例。
- メタプラネット、Siiibo証券を21億円で買収—ビットコイン連動金融商品「Project Nova」始動 → 本記事のSBIグループのステーブルコイン戦略と並ぶ、日本企業による金融商品化動向。
- enishがビットコイン全売却、Solana中心の「DAT 2.0」へ転換|運用型トレジャリーの狙い → 本記事のSBI連合と並ぶ、日本企業の暗号資産戦略動向。
米国規制動向との対比
- CLARITY Act、Coinbase・Rippleら200社超が上院に採決要求─成立確率60%に低下 → 本記事のRippleが推進する米国規制整備動向。日本での4号上場と並走するグローバル規制環境を理解できます。
- FBI被害113億ドル受け、米議会がクリプト犯罪対策の連邦タスクフォース新設法案を提出 → 本記事の「コンプライアンスと透明性」の議論と並ぶ、米国側の被害者保護動向。
RWA・トークン化資産
- XRP Ledger vs Ethereum、RWA資本移動説の真相─未検証の15億ドルをどう読むか → 本記事のRLUSDが将来の決済資産として接続するRWA市場の動向。
- Moody’s×Solana×AlphaLedger:信用格付けがトークンに直接埋め込まれる時代へ。TIEがメインネット稼働 → 本記事のRLUSDが対応する機関金融インフラと並ぶ、信用格付けのオンチェーン化動向。
- SpaceX・Solanaが変える株式投資|3つのトークン化商品、その仕組みとリスク → 本記事のRLUSDが決済を狙うトークン化資産市場の実装事例。
通貨インフラ・国家戦略
- CBETS始動と中国人民銀行のステーブルコイン警戒—デジタル人民元 vs ドルの「通貨OS」争いが本格化 → 本記事のドル建てRLUSD国内上場と対比される、中国の国家主導型決済網動向。「民間ドル」「国家人民元」「民間円」の三軸でのステーブルコイン競争を理解できます。
機関化・ETF・市場動向
- Morgan Stanley、ステーキングETF参戦|イーサリアム・ソラナで報酬95%を投資家へ → 本記事のRLUSD機関採用と並走する、米国の機関投資家のオンチェーン参入動向。
- ビットコイン6万2000ドル割れ、Strategy 32BTC売却が招いた18億ドル清算の連鎖 → 本記事の制度整備と並走する、暗号資産市場全体の動向。
- ビットコインETF、過去最長13日の純流出。約43億ドルが抜けた背景とETFが「限界的な買い手」になった構造変化 → 本記事の機関フローと並ぶ、ETF経由フローの動向。
- ビットコイン7万ドル回復なるか、スカラムッチ・ノボグラッツが挙げるCLARITY法案・債務・SpaceX → 本記事の規制整備と並走する、市場心理が織り込む期待動向。
- Strategy、マイケル・セイラーの「ドット」投稿が新たなビットコイン購入観測を再燃させる → 本記事のSBI連合と並ぶ、別企業の暗号資産戦略動向。
基盤チェーン解説
- Solanaとは?高速・低コストのブロックチェーンの仕組みと特徴を徹底解説 → 本記事のEthereumと並ぶ、別の主要ブロックチェーンの構造解説。
- Hyperliquidとは?HYPE基盤のレイヤー1ブロックチェーンとオンチェーンCLOBアーキテクチャの完全解剖 → 本記事のEthereumと並ぶ、別のレイヤー1ブロックチェーンの構造解説。
AI×Web3・身分証
- アライドアーキテクツ × Nyx Foundation、AIがDeFiの安全を”検算”する時代へ → 本記事のRLUSDがオンチェーンで流通する際の、安全性検証動向。
- Claude Codeに「Solana AI Kit」登場―Solana開発を一括構築 → 本記事のEthereum版RLUSD流通と並ぶ、別チェーンでの開発者支援動向。
- Worldcoin(WLD)とは?AI時代の「本人性証明」と独自のデジタルIDインfraストラクチャ【2026年版】 → 本記事のVCTRADE口座必須要件と並ぶ、本人性証明インフラの動向。
- Worldcoin(WLD)はヘイズなしで価格を保てるか—AI時代の身分証トークンを読む → 本記事のRLUSD市場心理と並ぶ、新興トークンの市場動向事例。
セキュリティ・運用リスク
- Hola Browser にクリプトマイナー混入、Sophos が発見—サプライチェーン侵害の手口とは → 本記事のRLUSD利用時のエンドユーザー側で残るセキュリティリスク事例。
【編集部後記】
「空席が埋まった」と書きましたが、椅子そのものは何年も前から置かれていました。日本がステーブルコインの居場所をあらかじめ法律の中に用意していたという事実は、振り返ってみると示唆に富んでいます。新しい技術が現れてから慌てて枠をつくるのではなく、来るべきものを見越して「とりあえず席を空けておく」という構え。今回はその席に、海外で生まれた規制準拠型のデジタルドルが、日本の事業者の手を借りて初めて腰を下ろしました。
ここで少し立ち止まって考えたいのは、私たちが「お金が動く」と言うとき、その裏側で何が信頼を支えているのか、ということです。これまでは銀行という大きな存在が、台帳を管理し、価値を保証してきました。ステーブルコインは、その役割の一部をブロックチェーンと、裏付け資産を毎月チェックする仕組みに置き換えようとしています。便利さの話に聞こえますが、本質は「誰を、何を信じてお金を預けるのか」という、とても古くて新しい問いの作り替えなのだと思います。
同じ日に、円建ての国産ステーブルコインが口座の中だけで動き始めたことも、見逃せません。ドルと円、海外発と国産が、まるで申し合わせたように同時に第一歩を踏み出した。これは偶然ではなく、日本の金融インフラが「次の層」を積み上げ始めた合図のように、私たちには映ります。今はまだ上限や対応範囲に制約があり、誰もが日常で使う段階ではありません。けれど、最初のATMが一度に10ポンドしか引き出せなかった時代から今を思えば、制約のある第一歩こそが、後の当たり前をつくってきました。
未来を見据える立場として、私たちはこの動きを「投資の好機」としてだけではなく、「お金という社会の基盤が、静かに作り替えられていく過程」として記録しておきたいと考えています。みなさんは、価値がブロックチェーンの上を国境も時間も越えて流れていく世界に、どんな期待を、あるいはどんな心配を抱くでしょうか。その感覚こそが、これから整えられていくルールの形を左右していくはずです。私たちも、その問いを抱えたまま、次の一歩を見つめ続けます。
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