Last Updated on 2026年9月2日 by Co-Founder/ Researcher
金融庁の暗号資産交換業者登録一覧に、4年2か月ぶりで新しい名前が加わりました。野村グループのLaser Digital Japanです。ただし発表資料を読むと、サービスを提供する相手は個人ではなく、すでに登録を受けている交換業者だと書かれています。
野村グループのデジタルアセット事業会社Laser Digitalの日本法人であるLaser Digital Japanは2026年8月21日、日本の資金決済法に基づく暗号資産交換業者としての登録を完了したと発表した。登録番号は関東財務局長第00032号。金融庁の登録一覧によれば、取り扱う暗号資産はBTC、ETH、XRP、BCH、LTC、SHIBの6銘柄で、登録後の全業者数は27社となった。
同社は2023年10月設立、資本金1億円、代表取締役社長は工藤秀明である。まず暗号資産交換業者向けにサービスを提供して国内市場の流動性向上に貢献するとし、今後は日本の機関投資家へのデジタルアセットの取引機会の提供も検討する。サービス開始時期および提供サービスの詳細は今後改めて公表するとしている。
From: Laser Digital Japan、日本における暗号資産交換業者としての登録を完了
【編集部解説】
「4年ぶり」が何を指すのか、登録簿を開くと見えるもの
リリースは「2022年以来、約4年ぶりの新規参入事例」とだけ書いていて、どの登録を起点にしているかまでは説明していません。金融庁が公表している暗号資産交換業者登録一覧を開くと、その中身がわかります。
Laser Digital Japanの一つ手前は、第00031号のBinance Japan(令和4年10月14日)です。ただしこの行には注記が付いていて、旧登録番号として近畿財務局長第00003号、旧登録日として平成29年12月1日が記されています。別の事業者がゼロから審査を通ったケースとは、区別して見る必要があります。
そうやって区別しながら遡ると、直前の新規参入事例は第00030号のメルコイン、令和4年6月17日まで戻ります。2026年8月21日までのおよそ4年2か月、新しい事業者の登録はありませんでした。
その4年あまりのあいだ、顔ぶれのほうも動いています。2025年6月末時点の同じ一覧では全業者数は28社でした。2026年8月21日版の27社からLaser Digital Japanの1社を除けば26社ですから、2025年6月末より2社少ない計算になります。増え続けている市場ではなく、いったん絞られた市場に、大手金融グループの子会社が入ってくる。今回の登録は、その構図のなかに置いて読むほうが正確です。
一般向けの取引所ができるわけではない
もう一つ、読み違えやすい点があります。リリースは提供先をはっきり書いています。「暗号資産交換業者向けにサービスを提供し、国内市場の流動性向上に貢献」。相手は交換業者であって、個人の利用者ではありません。
機関投資家への提供についても、「検討しております」という書き方です。個人向けの提供をしないと述べているわけではありませんが、今回発表されたのは、個人向け取引所の開設ではありません。
ではこれが個人に無関係かというと、そうでもありません。交換業者に対して厚い流動性を供給する事業者が増えれば、板の厚みやスプレッドという形で、最終的に画面の向こう側にいる利用者の執行環境に効いてきます。効き方が見えにくいだけで、経路はつながっています。
流動性の供給は、目立つ仕事ではありません。注文が来たときに反対側に立ち、値段を提示し続ける。それだけのことですが、この役回りを担う事業者が薄いと、市場は少し大きな注文が入っただけで値が飛びます。国内市場の厚みを支える部分に、機関投資家向け事業をグローバルで手掛けてきたLaser Digitalグループの日本法人が一社加わる。今回の登録が最初に意味するのは、そこです。
そのLaser Digitalは、トレーディング、アセットマネジメント、ソリューション、アーリーステージ投資を手掛ける総合デジタルアセットサービスプロバイダーとして、野村グループが設立した会社です。グループのなかでは、中東でLaser Digital Middle East FZEがドバイのVARA(仮想資産規制庁)の認可を受け、英国ではLaser Digital UK LtdがFCA認可・規制下のStrata Global Ltdの指定代理人(appointed representative)として活動しています。規制の枠組みが異なる複数の法域で、それぞれの当局の下に入って事業を組み立ててきた実績が、今回の日本での登録の背景にあります。
取扱6銘柄の読み方
登録一覧に記載されたLaser Digital Japanの取扱暗号資産は、BTC、ETH、XRP、BCH、LTC、SHIBの6銘柄です。機関投資家という言葉から連想される顔ぶれのなかにSHIB(シバイヌ)が並んでいることに、意外さを感じた方もいるかもしれません。
ここで押さえておきたいのは、この欄が何を意味しているかです。一覧の注記にあるとおり、記載された暗号資産は事業者の説明に基づいて資金決済法上の定義に該当することを確認したものであり、金融庁・財務局が価値を保証したり推奨したりするものではありません。この欄は、その事業者が取り扱う暗号資産として登録・届出の手続きを経た銘柄を示すものです。記載があること自体は、各銘柄のサービスが始まっていることを意味しません。
流動性を供給する相手が国内の交換業者である以上、その交換業者側で現に取引されている銘柄が並ぶのは自然なことです。SHIBは国内でも複数の交換業者が扱っています。
制度の追い風は、どちらを向いているか
リリースは「ステーブルコイン関連を含む重要な制度改革が実施され」と書いています。この点は、リリースの外にある一次資料まで見ておく価値があります。
2026年7月15日、暗号資産の業規制や不公正取引規制などを資金決済法から金融商品取引法へ移す改正法が成立しました。暗号資産規制の移管にあたる中心規定の施行日を指定する政令は、本稿執筆時点では確認できていません。改正法の一部を8月12日に施行するための関係政令は7月29日に公布されていますが、これは無登録業への罰則引上げなど、公布から20日後に施行される部分です。制度は決まった段階で、中心部分はまだ動き出していません。
同じ7月21日には骨太の方針2026が閣議決定され、資産運用立国の施策として「オンチェーン金融の推進」が盛り込まれました。少なくとも前年の骨太の方針2025には、この文言はありません。骨太の方針は脚注でオンチェーン金融を定義していて、ブロックチェーン上でトークン化預金やステーブルコイン等による資金決済が、商流・物流等のデータ管理とプログラムによって連動・一体化される金融、としています。
脚注が具体例として挙げているのはトークン化預金とステーブルコインで、暗号資産は明示されていません。ただし「ステーブルコイン等」とあるため、暗号資産を定義から排除しているとまでは読めません。それでも、政策が真っ先に名指ししている対象が決済とトークン化のほうにあることは、押さえておいてよいと思います。
そのうえで今回の登録は、4年以上新規登録がなかったなかで新しい事業者が登録されたという事実として、それ自体に見る価値があります。
調査2026を、原典の定義で読む
リリースが根拠に挙げている「デジタルアセットの投資動向に関する機関投資家調査2026」も、原典を開くと輪郭がはっきりします。
調査は国内の機関投資家、ファミリーオフィス、公益法人などに在籍する運用担当者518名を対象に、2025年12月16日から2026年1月29日にかけてオンラインで実施されました。公表は2026年4月16日、前回調査は2024年6月です。
ここで効いてくるのが、回答が集まった時期です。2025年末から2026年初め。先ほどの改正法成立も骨太の方針も、まだ起きていない時点の回答にあたります。「制度改革を受けて機関投資家の見方が変わった」という因果で読むと、時系列が逆転します。この調査が捉えているのは、制度が動く前の温度です。
数字の読み方にも一点あります。リリースは「調査回答者の65%が暗号資産をポートフォリオの分散投資の機会として捉えており、そのうち約79%が今後3年以内に投資を行う計画がある」と書いています。原典の調査リリースでは、65%が分散投資の機会と捉えている(前回62%)としたうえで、79%については「今後3年間で暗号資産に投資したいと考える回答者のうち」と母集団を置いています。引用する側は、原典の定義に合わせておくほうが安全です。
そのうえで、この調査でもっとも示唆的なのは百分率ではないと考えています。原典が、投資家の懸念事項がデジタルアセットそのものへの理解不足から、実際の投資運用に関するより実務的な課題へと移行している、と述べている部分です。何であるかを問う段階から、どう扱うかを問う段階へ。今回の登録は、その後者の問いに対する供給側の答えのひとつとして置かれています。
オンチェーンには出てこない仕事
Crypto Verseの視点から、一つ書いておきたいことがあります。
交換業者向けの流動性提供では、相対やRFQといった形で執行される場合があります。相対やRFQで執行された取引は、公開の注文板には出ません。ただし、これは執行の話であって、決済の話ではありません。暗号資産の受渡しをオンチェーンで行えば、トランザクションは記録されます。
Laser Digital Japanがどういう執行・決済方式を採るのかは、まだ公表されていません。
いずれにせよ、機関向けの取引を支えるのは制度の側です。資金決済法に基づく登録、利用者財産の分別管理、そして自主規制。Laser Digital Japanは2025年9月19日にJVCEAへ入会し、8月21日の登録を受けて、8月24日付で事業準備会員から事業会員へ会員種別が変更されています。
見えないものを信じるのではなく、制度と手続きで裏づける。オンチェーンの自己検証性とは性質が違いますが、チェーンの外側には、分別管理と監査、そして自主規制によって利用者の財産を守る仕組みが置かれています。
リリース末尾には12項目の注意事項が付されています。価格変動やサイバー攻撃による消失に加えて、法規制の強化を含む外部環境の変化や自社グループの財務状況の悪化によって事業が継続できなくなる可能性まで、発表する側が自ら列挙しています。定型の文言ではありますが、記録しておく価値のある姿勢です。
これから見るべきこと
サービス開始時期は公表されていません。どの交換業者と、どの銘柄で、どういう建て付けで繋がるのかも、これからの話です。
その意味で今回のニュースは、何かが始まった知らせというより、始められる状態になった知らせです。4年あまりぶりに、新しい名前が登録簿に加わりました。次に見たいのは、その先で国内の交換業者の板がどう変わるかという、もっと地味で、もっと実質的な変化のほうです。
【用語解説】
暗号資産交換業者
暗号資産の売買・交換や、利用者のための暗号資産の管理を業として行う事業者。資金決済法に基づき、財務局への登録を受ける必要がある。
資金決済法
資金決済に関する法律。暗号資産の業規制を定めてきた法律で、2026年7月成立の改正により、業規制の中心が金融商品取引法へ移ることが決まっている。
流動性
売りたいとき、買いたいときに、価格を大きく動かさずに約定できる度合い。流動性が薄い市場では、少し大きな注文が入るだけで値が動く。
板・スプレッド
板は売り注文と買い注文の並びで、価格ごとにどれだけの注文が積まれているかを示す。スプレッドは最良の売り気配と買い気配の差。板が厚くスプレッドが狭いほど、大きな注文を有利な条件で吸収しやすいとされる。
相対取引(OTC)
取引所の板を介さず、当事者どうしが直接、条件を決めて行う取引。機関投資家の大口取引で用いられることが多い。
RFQ
Request for Quote の略。買い手が複数の相手に価格の提示を求め、もっとも条件のよい相手と約定する方式。公開の板には現れない。
分別管理
事業者が自己の財産と利用者の財産を分けて管理すること。資金決済法および金融庁の事務ガイドラインが、暗号資産交換業者に求めている。
デジタルアセット
暗号資産に加え、トークン化された資産全般を含む広い呼び方。指す範囲は業界内でも一様ではない。
骨太の方針
経済財政運営と改革の基本方針。政府が毎年閣議決定する、経済財政政策の基本方針を示す文書である。
オンチェーン金融
骨太の方針2026が脚注で定義した概念。ブロックチェーン上で、トークン化預金やステーブルコイン等による資金決済が、商流・物流等のデータ管理とプログラムによって連動・一体化される金融を指す。
指定代理人(appointed representative)
英国の制度で、FCAの認可を受けた事業者の責任のもと、その傘下で規制対象業務を行う事業者のこと。
事業会員・事業準備会員
JVCEAの会員種別。事業会員は暗号資産交換業者など、事業準備会員は登録の申請中または申請を予定する事業者を指す。
【参考リンク】
Laser Digital Japan株式会社(外部)
野村グループのデジタルアセット事業会社Laser Digitalの日本法人。会社概要や登録番号、問い合わせ先を掲載した日本語ページ。
Laser Digital(外部)
トレーディング、アセットマネジメント、ソリューション、アーリーステージ投資を手掛けるグループの公式サイト。拠点情報も掲載。
金融庁 免許・許可・登録等を受けている事業者一覧(外部)
暗号資産交換業者登録一覧を含む、金融庁所管の事業者一覧の入口ページ。登録番号や取り扱う暗号資産はPDFで随時更新される。
一般社団法人日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)(外部)
暗号資産交換業などの自主規制団体。認定資金決済事業者協会と認定金融商品取引業協会を兼ね、会員種別や統計情報を公表している。
野村ホールディングス(外部)
Laser Digitalを設立した野村グループの持株会社。今回のリリースや機関投資家調査を、日英の両方で公開している。
内閣府 経済財政運営と改革の基本方針2026(外部)
2026年7月21日に閣議決定された骨太の方針の本文。オンチェーン金融の定義は本文ではなく、脚注のほうに置かれている点に注意。
【参考記事】
「デジタルアセットの投資動向に関する機関投資家調査 2026」を公表(外部)
野村ホールディングスとLaser Digitalが2026年4月16日に公表した調査。国内の機関投資家など518名が対象。
令和8年金融商品取引法等改正(20日後施行)に係る政令の公布について(外部)
金融庁が2026年7月29日に公表した政令。8月12日に施行される部分にあたり、暗号資産規制の移管とは切り分けて読む必要がある。
当協会会員における事業会員への会員種別変更について(外部)
JVCEAが2026年8月24日に公表。Laser Digital Japanの会員種別が事業会員へ変更されたことを伝えている。
第二種会員として1社入会しました(外部)
JVCEAが2025年9月19日に公表した入会情報。今回の登録のおよそ11か月前にあたる時点の、協会への加入を伝える記録である。
オンチェーン金融と日本法(外部)
骨太の方針2026のオンチェーン金融が、暗号資産よりもトークン化預金とステーブルコインを中心に据えている点を扱った法律事務所の解説。
【Crypto Verse関連記事】
Laser Digital Japan登録完了と「相手は個人ではなく交換業者」の構造を、より広い文脈で理解するための関連記事をご案内します。日本の暗号資産取引所業界の再編・金商法改正と監督体制・機関金融インフラのオンチェーン化・骨太の方針「オンチェーン金融」を横断的に読むことで、4年2か月ぶりの新規登録が置かれた地図が立体的に見えてきます。
日本の暗号資産取引所・業界再編動向
- SBI、ビットバンクを467億円で完全子会社化─暗号資産の預かり資産で国内首位へ → 本記事の登録業者数27社動向と対をなす、日本の暗号資産取引所業界の統合動向。「4年間新規登録なし」の局面で起きた業界再編を両記事併読で立体的に理解できます。
- bitFlyer SOL上場の本当の意味─Solanaに集まる日本企業と金融商品取引法改正 → 本記事の金商法改正動向と並ぶ、既存交換業者側の対応動向。「新規参入」「既存業者の銘柄拡大」両軸で日本市場が動く構造を理解できます。
- HyperLending、日本初HYPE対応の暗号資産レンディング開始 → 本記事の日本暗号資産関連サービス動向と並ぶ、日本市場での関連サービス動向。
日本の制度整備・金商法改正・監督体制
- 【解説】暗号資産の分離課税はまだ動かない。金商法改正成立で投資家が知るべき3つの変化 → 本記事で言及された金商法改正の詳細解説。「制度は決まった段階で、中心部分はまだ動き出していない」現状を理解できます。
- 金融庁の新課名から「ブロックチェーン」が消えた|暗号資産監督の再配置を読む → 本記事の登録動向と並ぶ、監督組織再編動向。「新規登録」「監督再配置」両軸で日本の制度整備動向を理解できます。
機関金融インフラ・骨太の方針「オンチェーン金融」(本記事の主対象領域)
- SBI×Solana財団―SBI R3 Japan「SBI Solana Global(仮称)」、日本発オンチェーン金融市場の創出へ → 本記事の機関投資家向け動向と並走する、日本発オンチェーン金融の基盤整備動向。「機関投資家向け流動性(Laser Digital)」「機関投資家向け基盤(SBI Solana Global)」両軸で日本の機関マネー整備を理解できます。
- MUFG、国債レポをオンチェーンへ―権利は振替国債のまま帳簿と連動 → 本記事の骨太の方針「オンチェーン金融」動向と直接連動する、機関金融オンチェーン化実装事例。
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日本のステーブルコイン・電子決済手段動向
- JPYSC始動―SBI・Startaleが国内初の信託型円ステーブルコインを発行 → 本記事の骨太の方針「オンチェーン金融」動向と関連する、日本の信託型ステーブルコイン制度整備動向。
- SBI VCトレード×リップル―「RLUSD」が国内初の「4号電子決済手段」として取扱い開始 → 本記事の骨太の方針動向と並ぶ、日本市場でのドル建てステーブルコイン導入動向。
機関投資家動向・グローバル
- Ethereum下落でも買い続ける機関投資家─ロバート・キヨサキ「9万5000ドル」予測再燃の裏側 → 本記事の機関投資家関心動向と並ぶ、グローバル機関投資家の直近動向。
- BlackRock・Strategy・Coinbaseら9社が Bitcoin Security Consortium 設立、量子対策を含むセキュリティ開発へ3年1500万ドル → 本記事の機関投資家動向と並ぶ、米国機関9社連合による長期戦略動向。
【編集部後記】
登録一覧を眺めていて、目に留まった行があります。第00018号と第00028号の取り扱う暗号資産の欄が、どちらも「取扱いなし」になっているのです。
登録を受けていることと、実際に何かを扱っていることは、別のことなのだとわかります。Laser Digital Japanの6銘柄も、いまは登録簿の上に並んでいる段階です。この欄がどう埋まっていくのか、あるいは埋まらないままなのか。半年後にもう一度、同じPDFを開いてみようと思います。
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