Solana、スロットタイムを350ミリ秒に短縮 稼働開始以来はじめて

By山本 達也

2026年8月26日 #Solana
Solana、スロットタイムを350ミリ秒に短縮 稼働開始以来はじめて

Last Updated on 2026年8月26日 by Co-Founder/ Researcher

Solanaのブロック生成間隔が、稼働開始から6年あまりを経てはじめて動きました。400ミリ秒から350ミリ秒へ。ただし1ブロックに詰め込める計算量も、同じ比率で削られています。速くなったのに、毎秒の処理量は増えていません。この一見ちぐはぐな設計に、今回の狙いが表れています。


Solana財団は8月24日、8月20日週の開発状況をまとめたChangelogを公開した。メインネットのスロットタイムが400ミリ秒から350ミリ秒へ短縮され、テストネットは250ミリ秒から200ミリ秒へ移行した。SIMD-0525が定める4段階の短縮計画の第1段階にあたり、最終目標は200ミリ秒である。

同週にはAgave v4.3.0-beta.0とv4.2.1、Frankendancer v0.1106.40201、Solana Kit v7.1.1が公開された。提案面では、ノンスアカウントを自身のプログラムIDとして使うことを禁じるSIMD-0602と、ランタイムのステークキャッシュから非アクティブなステークを除去する提案の2件が提出されている。

From: 文献リンクSolana Changelog: August 20, 2026

【編集部解説】

Solanaが速くなった、というニュースの見出しを見て、真っ先に「確定が速くなるのか」と考えた方は多いはずです。ここは丁寧に分けておきたいところです。

今回直接変わったのはスロットタイム、つまりバリデータがブロックを作る時間の区切りです。ただし、確認やファイナライズにはスロット単位で進む条件が含まれるため、1スロットが短くなれば実時間としての到達も早くなります。SIMD-0525も、確認とファイナライズ双方のレイテンシ低下を効果として挙げています。ファイナリティの判定ルールそのものではなく、その到達にかかる実時間を縮める変更だと捉えるのが正確です。

400ミリ秒という数字は、Proof of Historyの1ティックあたりのミリ秒数に、1スロットあたりのティック数64を掛けたものです。この値が2020年の稼働開始から一度も変わっていませんでした。Solana財団のジェイコブ・クリーチ氏は、今回の350ミリ秒への移行を、稼働開始以来はじめてのスロットタイム短縮だと説明しています。

そしてもう一つ、押さえておきたい点があります。SIMD-0525による変更だけを見れば、単位時間あたりの処理上限は設計上ほぼ変わりません。

この提案は、スロットが短くなるぶん1スロットの作業上限を比例して削ると明記しています。データシュレッドとコーディングシュレッドの上限は各32768個から28672個へ。実時間あたりの予算を一定に保つための設計であり、提案本文もその意図を「実時間あたりの処理レートをおおむね不変に保つため」と書いています。

7月末の動きと合わせて読む

Solanaは7月29日、SIMD-0286によって1ブロックあたりの計算量上限を6000万CUから1億CUへ引き上げました。66%の拡張です。400ミリ秒換算にすると、毎秒あたりの上限が1億5000万CUから2億5000万CUへ増えたことになります。

その約3週間後に来たのが、350ミリ秒化でした。SIMD-0525は既存の上限変更との合成を明示的に規定しており、1億CUが有効な状態から350ミリ秒へ移った場合の上限を8750万CUと定めています。8750万CU÷0.35秒は、毎秒2億5000万CU。7月に引き上げた水準が、そのまま保たれています。

7月に容量を上げ、8月に待ち時間を削った。1か月足らずのあいだに、性質の異なる2本のレバーが順番に引かれたことになります。350ミリ秒化だけを取り出すと「速くなった代わりに1ブロックが小さくなった」と読めてしまいますが、7月の拡張とセットで見れば、増やした毎秒あたりの上限を保ったまま応答だけを速めた、という順序が見えてきます。

では、何が変わるのか

一つはレイテンシです。スロットが短くなれば、確認までの待ち時間もそのぶん縮みます。財団は最終的な200ミリ秒到達時に、利用者の体感で確認速度が2倍になると説明しています。マーケットメイカーにとっては、提示するスプレッドを狭められるという直接の効果があります。

そしてもう一つが、Crypto Verseの視点からはこちらが本命です。リーダーが単独でブロックを組める時間が縮みます。

Solanaでは1人のリーダーが連続4スロットを担当します。名目で、400ミリ秒なら1.6秒、350ミリ秒なら1.4秒、200ミリ秒まで到達すれば0.8秒。この時間が、リーダーが取引を遅らせたり、並べ替えたり、選んで取り込んだりできる最悪ケースの窓になります。次のリーダーにブロック生成の順番が回れば、その窓は閉じます。

SIMD-0525は、この最悪ケースの時間を半分にすることを動機の一つとして明示しています。財団の公式ページはさらに踏み込んで、この変更を検閲耐性の措置だと位置づけています。速度の話に見えて、実際には単一の主体が持つ裁量の窓を物理的に削る話なのです。連続リーダースロットを4から2へ減らすSIMD-0497も出されていましたが、こちらのPRは6月28日に活動停止としてクローズされ、未マージのままです。この方向がふたたび動けば、窓はさらに狭くなります。

4回分のブレーキ

400から200へ一息に飛ばず、50ミリ秒ずつ4段階に割ったのは、各段階で実際の挙動を確かめるためです。それぞれが独立したフィーチャーゲートを持つため、ネットワークの状態を見ながら段階ごとに止められます。ブロックスキップ率が高ければ次の短縮へ進まない、というのがバリデータ討論での合意事項です。ブレーキが4回分、設計に組み込まれていることになります。

各ゲートには1エポックの遅延も入っています。ゲートが有効になったエポックでは旧設定のまま走り、次のエポックの先頭スロットから新しい時間が適用される。この遅延は、シュレッド上限の縮小をTurbineが確実に反映できるようにするための措置です。バリデータには、およそ1エポック分の猶予が与えられます。

エポックが短くなるということ

1エポックは432,000スロットで固定されています。スロットが短くなればエポックそのものが短くなり、設計上の目安では400ミリ秒時の約48時間が、350ミリ秒では約42時間に。200ミリ秒まで到達すれば約24時間です。ただしSIMD-0525は、これらの時間がプロトコルに明示された値ではなく実際とはずれうる、という注釈を自ら添えています。

ステーキング報酬も、この区切りに従います。エポックが短くなれば、報酬計算のサイクルは実時間で短くなります。現在の仕様では、新しいエポックの最初のブロックで報酬を計算し、投票報酬はそこで配りきる一方、ステーク口座への配布は2番目のブロック以降、複数のブロックに分けて処理されます。

この分割配布にも、今回の比例縮小が効いています。1ブロックあたりのステーク報酬の書き込み上限は4096件から3584件へ縮小します。名目上の上限で見ると、4096件÷0.4秒と3584件÷0.35秒は、いずれも毎秒10,240件です。ここでも、実時間あたりの書き込み予算をほぼ動かさない設計になっています。

ただし、国内事業者が顧客に報酬を渡す周期は、これとは別物です。たとえばSBI VCトレードは、毎月1日から月末までを算定期間とし、翌月15日までに付与する月次の仕組みを採っています。オンチェーンの周期が動いても、利用者の手元に届くタイミングまで連動するわけではありません。なお、インフレ率そのものは実時間ベースで不変になるよう、年間スロット数を逆比で増やす調整が入っています。

もう一つの軌道、Alpenglow

この短縮とは別の軌道で、Alpenglowという新しいコンセンサスの移行も進んでいます。冒頭で分けた、ファイナリティの判定ルールそのものを担うのがこちらです。8月14日に公開されたAgave v4.3.0-beta.0の変更ログには、63件の項目のうち21件にvotor、BLS署名検証、Alpenglow互換性に関するものが並んでいます。ブロックを速く作る話と、確定の仕組みそのものを作り替える話が、いま同時に走っている。SIMD-0525がAlpenglowのバリデータ参加費(VAT)を段階ごとにスケールさせる規定を持っているのも、両者が交差する前提で書かれているからです。ただしこの規定は、Alpenglowが有効になるまで効力を持ちません。

週の残りの動きから

新しいトランザクション形式であるV1への対応が、Web3.js、Solana Kit、Solana Goで進んでいます。数週間のうちにリリースされる見込みで、対応が遅れたクライアントの利用者にはエラーが出る可能性がある、と財団は注意を促しています。国内でSolana対応のプロダクトを持つ事業者は、依存しているSDKのバージョンを一度確かめておく時期です。

同じ流れで、ノンスアカウントを自分自身のプログラムIDとして指定できてしまう再帰的なケースを禁じるSIMD-0602が提出されました。提案者はこれを、アドレスルックアップテーブルの制約緩和(SIMD-0192)をきれいに実装するうえで望ましい変更だと説明しています。ほかに回避策もあるため必須ではないものの、特殊なケースを一つ禁じることで、その先の機能をより単純に実装できる。プロトコル開発の積み重ねが見える提案です。

なお、Changelogが「Firedancer」として挙げているv0.1106.40201は、リリース名としてはFrankendancer Mainnetです。Jump Cryptoのネットワークスタックとブロック生成部を使い、実行と合意はAgaveのコードで動くハイブリッド版のほうを指しています。クライアント多様性の現在地を測るときは、この区別が効いてきます。

Solanaは日本で、SBIの機関向け構想、bitFlyerでのSOL取り扱い、CACのRWAトークン化と、金融の側から入ってくる話題が続いてきました。その足元で、プロトコル本体は静かに時計を刻み直しています。350ミリ秒は、稼働開始以来はじめて動いた針の、最初の一目盛りです。次の300ミリ秒が、いつ、スキップ率などの実運用指標が許容できる水準にあることをどこまで見極めてから起動するのか。そこにこのネットワークの慎重さと本気度の両方が表れます。

【用語解説】

スロットタイム
バリデータが1つのブロックを作る時間の区切り。Solanaでは長らく400ミリ秒だった。ブロックが確定するまでの時間(ファイナリティ)とは別の概念である。

Proof of History(PoH)
時刻を暗号学的に記録するSolana独自の仕組み。1スロットは64ティックで構成され、ティックあたりのミリ秒数を掛けた値がスロットタイムになる。

フィーチャーゲート
プロトコル変更をオンチェーンのアカウントで制御する仕組み。バリデータの合意で有効化され、エポック境界で切り替わる。段階的な変更では段階ごとに別のゲートが用意される。

エポック
Solanaにおける運用の単位。432,000スロットで固定されており、リーダー担当表の更新や報酬計算の区切りとなる。スロットが短くなればエポックの実時間も短くなる。

CU(コンピュートユニット)
命令の計算量を測る単位。1ブロックに詰め込める総量に上限が設けられており、この上限が実質的なブロックの容量にあたる。

シュレッド
ブロックをネットワーク上で配るために分割した断片。データシュレッドと、欠損を補うためのコーディングシュレッドがある。

Turbine
シュレッドをバリデータ間に段階的に配るSolanaの伝播プロトコル。ブロックの実行経路の外側でシュレッド数の上限を検査する。

リーダー
そのスロットでブロックを生成する担当のバリデータ。Solanaでは1人が連続4スロットを担当する。

PER(分割エポック報酬)
ステーキング報酬を複数ブロックに分けて配る現行方式。エポック最初のブロックで計算し、ステーク口座への書き込みは2番目のブロック以降に分散させる。

Alpenglow
開発中のコンセンサス刷新。ファイナリティの判定ルールそのものを作り替えるもので、スロットタイム短縮とは別系統の取り組みである。votorと呼ばれる投票方式を導入する。

VAT(バリデータ参加費)
Alpenglow下でバリデータが参加時に負担する費用。SIMD-0525はスロットタイムの段階に応じてこの額をスケールさせる規定を持つが、Alpenglow稼働までは効力を持たない。

Frankendancer
Firedancerのネットワーク処理とブロック生成部を使いつつ、実行と合意はAgaveのコードで動くハイブリッド構成。Firedancer完全版とは区別される。

ノンスアカウント
有効期限の制約を受けずに取引を成立させるための仕組みを保持するアカウント。SIMD-0602は、この種のアカウントが自分自身をプログラムIDとして参照する特殊なケースを禁じる。

アドレスルックアップテーブル(ALT)
取引が参照するアドレスを外部の表から引く仕組み。1件の取引でより多くのアカウントを扱えるようにする。

ブロックスキップ率
割り当てられたスロットでブロックが生成されなかった割合。ネットワークの健全性を測る指標として使われる。

【参考リンク】

Solana(外部)
高速なレイヤー1ブロックチェーンの公式サイト。開発者向け情報とアップグレードの解説を公開している。

Reduced Slot Times(外部)
スロットタイム短縮の公式解説ページ。4段階の計画と、検閲耐性の措置としての位置づけを示す。

200ms Dashboard(外部)
現在のスロットタイムとクライアント採用率を実測で表示する公式トラッカー。進捗を随時確認できる。

SIMD-0525(外部)
スロットタイム短縮の規範仕様。段階ごとのフィーチャーゲートと、比例縮小される各上限値を規定している。

SIMD-0118(外部)
エポック報酬の分割配布を定めた仕様。ステーク報酬を複数ブロックに分けて配る現行の方式を規定する。

100M CU Blocks(外部)
7月29日にメインネットへ適用された、1ブロックの計算量上限を1億CUへ引き上げる変更の公式解説。

Agave(外部)
Anzaが開発するバリデータクライアント。リリースノートと変更履歴をGitHubで公開している。

Firedancer(外部)
Jump Cryptoが開発するバリデータクライアント。Agave併用版のFrankendancerも配布する。

SBI VCトレード ステーキング(外部)
国内の暗号資産交換業者。SOLを含む対象銘柄を保有するだけで報酬を受け取れるステーキングを提供する。

【参考記事】

Solana cuts mainnet slot time to 350 milliseconds in first step toward 200ms goal(外部)
スループット増加が目的ではないと明記し、完全なファイナリティは現在およそ12.8秒かかると伝えている。

Solana Cuts Slot Time to 350ms at Epoch 1020, the First Reduction Since Genesis(外部)
毎秒の計算量予算が約2億5000万CUで一定に保たれる点を数値で示す。テストネットの実測値にも触れている。

Solana 350ms Slot Time Reduction: SIMD-0525 Goes Live, Roadmap to 200ms(外部)
7月の1億CU化と今回の8750万CUへの縮小を並べ、毎秒あたりの容量がほぼ変わらないと整理している。

Solana cuts slot time to 350ms for first time since network launch(外部)
SIMD-0525が5月14日に承認・マージされた経緯と、切り替え直後の平均スロットタイムを伝えている。

Solana Aims to Cut Block Time in Half, and You Can Watch It Live(外部)
公式トラッカーの表示をもとに、必要なソフトウェアを稼働させているステークの割合を示している。

Summary of Solana Validator Discussions: July 31 – August 7(外部)
エポックを432,000スロットのまま据え置く判断や、年間インフレは倍にならないという整理を伝えている。

【編集部後記】

350ミリ秒は、あくまで目標値です。SIMD-0525は、自らの表に並ぶ時間の数字について、プロトコルに明示された値ではなく実際とはずれうる、とわざわざ注釈を添えていました。

そのSolanaは、solana.com/200ms で現在のスロットタイムを実測値のまま公開しています。目標を掲げた側が、目標との差が見える場所を自分で用意している。この順序に、このプロジェクトの気質が表れているように思います。

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By山本 達也

『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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