ビットバンクはSBI傘下でも別会社のまま、完全子会社化が完了し取締役を相互派遣へ

By山本 達也

2026年10月2日 #bitbank, #SBI
ビットバンクはSBI傘下でも別会社のまま、完全子会社化が完了し取締役を相互派遣へ

Last Updated on 2026年10月2日 by Co-Founder/ Researcher

ビットポイントジャパンは、SBIの完全子会社になってから合併まで約3年、合併からサービス統合の発表までは約3か月でした。そのSBIが、今度はビットバンクを完全子会社にしました。発表された中身は吸収ではなく、取締役を互いに送り合う人事です。この「別会社のまま」という形は、どこまで続くものなのでしょうか。


ビットバンク株式会社は2026年10月1日、SBIホールディングス株式会社による同社の完全子会社化が完了したと発表した。同日、ビットバンクが株式会社MIXIおよび株式会社セレスから自己株式を取得し、2026年6月25日に公表した一連の取引が完了した。

新経営体制では、SBI VCトレード株式会社の代表取締役社長である近藤智彦氏がビットバンクの取締役に就任し、社外取締役の都木聡氏、金山伸宏氏、久保田雅也氏が退任した。代表取締役社長CEOの廣末紀之氏は続投し、ビットバンクの発表によれば、SBI VCトレードの「社外取締役」に就任する予定である。暗号資産取引所「bitbank」のサービスへの影響はないとしている。

From: 文献リンクSBIホールディングス株式会社による完全子会社化完了および新経営体制に関するお知らせ

6月の発表から約3か月、ビットバンクは予定どおり「10月頃」にSBIグループの一員となりました。ただ、完了の発表で目を引くのは、467億円という数字ではありません。ビットバンクを吸収せず、別の会社として残したまま、取締役を互いに送り合う形を取ったことです。

SBI VCトレードの近藤智彦社長がビットバンクの取締役に入りました。一方、ビットバンクの発表によれば、廣末紀之CEOはSBI VCトレードの「社外取締役」に就く予定です。SBIグループ側から取締役を迎えるだけでなく、ビットバンクの創業者も兄弟会社の取締役会に加わる。片道ではなく往復の人事です。

この形は、SBIがビットポイントジャパンで踏んだ手順と見比べると輪郭がはっきりします。SBIは2022年7月にビットポイントジャパンの株式51%を取得して連結子会社とし、2023年3月に残り49%を取得して完全子会社化しました。その後もしばらく別会社のまま運営し、SBI VCトレードとの合併を決めたのは2026年1月30日、効力発生は4月1日です。合併後も当面はBITPOINTブランドを維持するとされましたが、6月30日には、BITPOINTサービスを2026年12月末を目途にVCTRADEサービスへ統合することが発表されています。

つまり、完全子会社化、法人の合併、サービスの統合は、それぞれ別の段階です。ビットポイントジャパンの場合、完全子会社化から合併の決議までに約3年、合併からサービス統合の発表までに約3か月の間隔がありました。ビットバンクがこの先どの道を進むのかについて、今回の発表は何も述べていません。いま言えるのは、「完全子会社だが別会社」という最初の段階に入った、ということだけです。

その前提で読むと、6月にお伝えした内容にも一つ補足が必要です。6月の記事では、今回の買収を「三つの登録交換業者の機能を、ひとつのグループ基盤へ集約していく動き」と書きました。ビットポイントジャパンはすでにSBI VCトレードに吸収されているため、このとき数えた三つの交換業者のうち、法人として残るのはSBI VCトレードとビットバンクの二社です。現在は三つのサービスブランドを二社が運営しており、そのうちBITPOINTは12月末を目途にVCTRADEへ統合される予定です。

新しい取締役会の顔ぶれにも、この「残す」方針が表れています。退任したのは社外取締役の3名で、廣末氏と、野田直路氏・加藤正晃氏の両取締役はそのまま残りました。監査等委員である社外取締役3名の体制も維持されています。創業以来ハッキング被害ゼロを掲げてきた経営陣と監査の枠組みを、ほぼそのまま引き継いだ構成です。

近藤氏の経歴も示唆に富みます。リリースに添えられた略歴によれば、近藤氏は2026年6月からSBIクリプトアセットホールディングスの代表取締役社長も務めています。SBI VCトレードの社長とビットバンクの取締役を一人が兼ねることで、二つの取引所の経営判断が同じ人物の視野に収まる配置になりました。

6月の記事で「最初の関門」とした公正取引委員会の企業結合審査について、6月の開示では、クリアランスの取得などが取引実行の条件とされていました。今回、一連の取引の完了が公表されています。ビットバンク単体の2025年12月期は純損失6億9600万円と前年の黒字から赤字に転じていましたが、SBIは2027年3月期の連結業績への影響は軽微との見通しを、10月1日の開示でも示しています。

完了の6日前、9月25日には、もう一つ見逃せない発表がありました。ビットバンクが、子会社の日本デジタルアセットトラスト設立準備株式会社(JADAT)の全株式を三井住友信託銀行に譲渡すると決めたのです。JADATは、2022年5月から三井住友トラストグループと共同で検討してきた、デジタルアセット専門の信託会社の設立準備会社です。

ビットバンクは理由として、デジタル金融の進展を踏まえ、JADATが三井住友トラストグループの傘下で活動するほうが業界の発展に資すると説明しています。SBI入りとの関係には触れていません。ただ、グループ入りの直前に、信託によるカストディ構想を専業の信託銀行グループへ託すと決めたという順序は、ビットバンクが取引所という本業に軸足を置いてSBIに加わったことを示す一つの材料として読めます。これは筆者の解釈です。

利用者の立場から押さえておきたいのは、親会社が変わっても、サービスの提供と預けた資産の管理を担う法人は引き続きビットバンクだという点です。2026年10月時点の資金決済法は暗号資産交換業者に、利用者の金銭と暗号資産を自己の財産と分けて管理するよう義務づけています。その義務を負うのは交換業者自身であり、株主の変更だけで義務の帰属が変わるものではありません。そのうえでビットバンクは、今回の完全子会社化によるサービスへの影響はないとしています。

なお、SBIが掲げる「預かり資産約1.1兆円・口座数約292万」は、2026年4月30日時点のSBI VCトレードとビットバンクの数値を単純に合算したものです。順位の判定にはSBI VCトレードの調査による推計も含まれます。二つの取引所がいまも別々に運営されている以上、この数字は一つの取引所の規模ではなく、グループとしての規模として読むのが適切です。

では、なぜ独立系として歩んできたビットバンクがこの選択をしたのか。廣末氏は7月に掲載された東洋経済のインタビューで、最大の理由として、暗号資産を金融商品取引法の枠組みに移す動きを挙げています。株式や債券を含むあらゆる資産がブロックチェーン上で扱われるオンチェーン金融の時代には、総合的な金融機能が欠かせない、という見立てです。

取引所の看板と経営陣を残しつつ、グループの資本と金融機能を背後に置く。今回の完了で形になったのは、独立系取引所が培ってきた信頼を、金融グループの足腰で支えるという組み合わせです。暗号資産が金融商品として扱われる時代に向けて、この組み合わせが利用者に何を届けるのか。その答えは、これからのbitbankのサービスの中に現れてくるはずです。

【用語解説】

完全子会社化
ある会社の議決権の100%を、親会社が直接または間接に保有する状態にすること。今回は、SBIホールディングスの完全子会社であるSBICAH合同会社を通じた間接保有で、自己株式を除く議決権所有割合が100%となった。

自己株式
会社が、株主から自社の株式を買い取ること。取得した株式には議決権がない。今回はビットバンクがMIXIとセレスの保有株をすべて取得し、両社が株主から外れた。

合併
複数の会社が一つになる手続き。一方の会社が存続し、他方が消滅して権利義務を引き継がせる形を吸収合併という。2026年4月1日、SBI VCトレードを存続会社としてビットポイントジャパンが合併により消滅した。

社外取締役
業務執行から独立した立場で経営を監督する取締役。会社法第2条第15号が要件を定めている。

監査等委員
監査等委員会設置会社において、取締役でありながら監査等委員会の一員として、取締役の職務執行を監査・監督する役割を担う者。ビットバンクでは3名の社外取締役が務めている。

企業結合審査
合併や株式取得などが市場の競争を実質的に制限しないかを、公正取引委員会が確認する手続き。今回の取引は、そのクリアランスの取得などが実行の条件とされていた。

暗号資産交換業者
暗号資産の売買・交換や、その媒介、利用者の暗号資産の管理などを業として行う事業者。資金決済法に基づき、内閣総理大臣の登録を受ける必要がある。

カストディ
顧客の資産を預かり、保管・管理するサービス。デジタルアセットの分野では、秘密鍵の安全な管理を含む。

オンチェーン金融
株式・債券・通貨などの資産の発行・取引・決済・管理を、ブロックチェーン上で行う金融の形。

金融商品取引法
有価証券やデリバティブの取引について、開示や業者規制などを定める法律。暗号資産をこの法律の枠組みへ移す制度改正が進められている。

【参考リンク】

SBIホールディングス株式会社(外部)
東証プライム上場で、銀行・証券・保険・暗号資産などを擁する金融グループの持株会社。今回ビットバンクを完全子会社とした親会社である。

SBI VCトレード株式会社(外部)
SBIグループの暗号資産交換業者。2026年4月にビットポイントジャパンを合併し、VCTRADEとBITPOINTの2ブランドを運営する。

ビットバンク株式会社(外部)
暗号資産取引所「bitbank」を運営する交換業者のコーポレートサイト。2014年設立で、今回SBIの完全子会社となった。

暗号資産取引所 bitbank(外部)
ビットバンクが運営する暗号資産取引所のサービスサイト。完全子会社化が完了した後も、同社はサービス内容に変更はないとしている。

BITPOINTサービスからの移管 特設サイト(外部)
BITPOINTの口座と資産をVCTRADEへ移す手続きと日程をまとめたSBI VCトレードの案内ページ。統合の進め方が分かる。

金融庁 暗号資産交換業者登録一覧(外部)
金融庁に登録された暗号資産交換業者の一覧(PDF)。SBI VCトレードとビットバンクの登録状況を一次資料で確認できる。

公正取引委員会(外部)
独占禁止法を運用する国の行政機関。今回の取引は、同委員会の企業結合審査のクリアランスの取得などが実行の前提条件とされていた。

【参考記事】

ビットバンク株式会社の株式取得(完全子会社化)に関する基本合意書及び株式譲渡契約締結のお知らせ(SBIホールディングス)(外部)
SBIホールディングスの6月25日付の開示。取得価額467億円や取得株式数、日程、前提条件、ビットバンクの直近3期の業績を示す。

(開示事項の経過)ビットバンク株式会社の完全子会社化完了に関するお知らせ(SBIホールディングス)(外部)
SBIホールディングスによる10月1日付の完了報告。資本金80億5,000万円や、連結業績への影響が軽微との見通しを記載する。

株式会社ビットポイントジャパンの株式の追加取得による100%連結子会社化に関するお知らせ(SBIホールディングス)(外部)
残り49%を48億円で取得する2023年の開示。当時のSBICAH合同会社の代表社員がSBIクリプトアセットホールディングスと分かる。

SBI VCトレード株式会社と株式会社ビットポイントジャパンの合併に関するお知らせ(SBIホールディングス)(外部)
合併を決めた1月30日の発表で、効力発生日は2026年4月1日。合併後も当面は2ブランドを維持し、両サービスを継続するとしていた。

【重要】VCTRADEサービスとBITPOINTサービスのサービス統合について(SBI VCトレード)(外部)
SBI VCトレードの6月30日付のお知らせ。BITPOINTの新規口座受付を終える日程と、12月末目途の口座・資産の移管予定を示す。

当社子会社 日本デジタルアセットトラスト設立準備株式会社の株式譲渡に関するお知らせ(ビットバンク)(外部)
JADATの全株式を三井住友信託銀行に譲渡すると決めた9月25日付の発表。2022年5月からの共同検討の経緯も記している。

【独占】ビットバンク廣末社長が激白「SBIグループ傘下入り」の真意・・・大再編の号砲か、「圧勝できる可能性が高まる」(東洋経済オンライン)(外部)
廣末氏がSBI入りの最大の理由に金商法への移行を挙げた単独インタビュー。2026年7月6日公開で、一部は有料会員限定である。

【編集部後記】

BITPOINTのサービス統合で、利用者の手元に最初に届いた変化は、新規口座の受付終了でした。統合の発表は6月30日、受付を終える予定日は7月31日の午後2時とされました。既存の口座と資産は、12月末を目途にVCTRADEへ移される予定です。合併の決議から受付の終了まで、およそ半年です。
会社の形が変わる知らせよりも、こうした受付の案内のほうが、使う側にとっては実感のある節目になります。bitbankのこれからを見守るうえでも、私はまず、お知らせ欄に載るこうした一行に目を向けておきたいと思います。

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※本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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By山本 達也

『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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