AWSがAmazon Managed Blockchain終了へ、問われる「ノードは誰が持つか」

Last Updated on 2026年10月5日 by Co-Founder/ Researcher

2018年に台帳データベースのQLDBと並んで発表されたAmazon Managed Blockchainが、2027年9月に幕を下ろします。QLDBはすでに2025年に終了しており、AWSが同時期に打ち出した台帳系の2サービスがそろって姿を消します。それでも移行ガイドが描くのは、ブロックチェーンからの撤退ではなく、台帳とノードを誰が持つかの選び直しです。


Amazon Web Services(AWS)は2026年9月29日、ブロックチェーン管理サービス「Amazon Managed Blockchain(AMB)」のサポートを2027年9月29日に終了すると発表した。新規顧客の受け付けは2026年10月29日に停止し、既存顧客は終了日まで利用できるが、その後は機能にアクセスできなくなる。

移行先としてAWSは、Ethereum・Bitcoin・Polygonへの接続にはAWS上の自前ノードかAlchemy、Quicknodeなどの事業者を、データ照会のAMB QueryにはQuicknodeかAlliumを挙げた。Hyperledger Fabricには別のマネージド環境、EC2やEKS上での自前運用、AWSのデータベースを示している。

From:文献リンクAmazon Managed Blockchain (AMB) end of support

AMBは2018年11月、台帳データベースのAmazon QLDBとともに発表され、2019年4月に一般提供が始まりました。当初はHyperledger Fabricのみの対応で、企業どうしが共有台帳を組むための基盤として出発しています。その後、Ethereum・Bitcoin・Polygonへの接続と、取引履歴や残高を引けるデータAPI(AMB Query)が加わり、現在は前者とFabricが「AMB Access」の名でまとめられています。

今回の終了告知は、AMB単独の撤退ではありません。2026年9月29日のAWSの告知は、DevOps GuruやBackint Agent for SAP ASEなど複数サービスの終了をまとめて伝えるもので、AMBはその一つとして並んでいます。

この発表で読むべきは、終了そのものより、AWSが示した移行先の分かれ方です。同じAMBでも、使っていた機能によって、移行で「手放すもの」と「取り戻すもの」がまったく違います。

パブリックチェーンへの接続は、3つのなかで最も移りやすい部分です。AMB Accessは標準的なRPCを公開しているため、多くのアプリはRPCメソッドとリクエスト形式を維持しつつ、接続先、認証、ネットワークのアクセス制御を変更して移行できます。

ここで選択肢は2つに分かれます。AlchemyやQuicknodeといった専門事業者に移れば、手間は少なく済みます。一方、AWSが公開するオープンソースのAWS Blockchain Node Runnersを使ってノードを自分で立てれば、運用は重くなる代わりに、チェーンの状態を自分のノードで直接確かめられます。どちらを選ぶかは、ブロックチェーンの答えを「誰から受け取るか」を決めることでもあります。

AWSの移行手順に、新旧の環境へ同じ読み取りを送り、固定したブロックや一定の確認深度で結果を突き合わせる工程が入っている点は示唆的です。接続先を替えるときこそ、返ってくる答えを検証する。Web3の「Don’t trust, verify」が、移行作業の手順として書き込まれています。

AMB Queryは事情が異なります。AWSは、標準的なノードはこうした索引済みの照会機能を持たないため、エンドポイントの差し替えだけでは移行できないと明記しています。取引履歴や残高を整えて返すAPIには、生のチェーンデータの索引化や正規化が含まれます。移行先のQuicknodeやAlliumのデータ形式を、アプリが期待するデータモデルに変換し、照会処理を調整する作業が伴います。

最も重いのがHyperledger Fabricです。AWSは、別のマネージドFabric環境や自前のFabricへ移る場合、ネットワークの状態とアイデンティティはコピーではなく再構築になると説明しています。一方、AWSのデータベースへ移る場合は、分散台帳の運用をやめ、データを照会可能な形で保持する道になります。

Fabricでは、参加者の身元や所属を認証局(CA)とメンバーシップ・サービス・プロバイダー(MSP)で管理し、取引にどの組織のピアによる承認が必要かを、エンドースメントポリシーで定めます。移行では、既存の身元情報や権限を新しい環境でどう引き継ぐかを、参加組織と調整しながら設計する必要があります。AWSが全参加組織との調整と早期の相談を勧めている点からも、技術に加えて合意形成が重要になると読めます。

注目したいのは、移行先の3つめに「AWSのデータベース」が挙がっている点です。複数組織での合意形成がもう要らず、履歴データだけ残したい利用者に向けた選択肢とされています。AWSは2025年7月31日に終了したQLDBでも、移行先としてAmazon Aurora PostgreSQLを案内していました。ブロックチェーンが本当に必要だったのか、という問いに、利用企業が自分で答える場面が来ています。

視野を広げると、Google Cloudも、マネージドノードのBlockchain Node EngineとBlockchain RPCを2026年12月15日に終了します。Googleは推奨移行先としてQuicknodeを挙げており、AWSの移行先にもQuicknodeの名前があります。

汎用クラウドがマネージドノードの提供から手を引き、その役割を専門事業者が担う。2社の動きはそう読むこともできます。ただし、両社の終了案内には具体的な撤退理由は示されておらず、これは発表の並びから見える一つの解釈です。

いま検討段階にあるプロジェクトは、注意が必要です。新規受け付けは2026年10月29日に止まります。これからAMBを使い始める計画では、終了までの移行も含め、代替基盤を前提に設計を見直す必要があります。なお、終了日はAWSの告知とドキュメントでは2027年9月29日ですが、製品ページは9月30日と記載しています(2026年10月3日時点)。計画は早いほうの日付で組むのが安全です。

既存の利用者に与えられた期間は1年です。パブリックチェーン接続の移行では、並行比較、段階的な切り替え、ロールバック期間の確保まで、AWSが手順として示しています。移行の道筋が具体的に用意されている点は、利用者にとって大きな支えになるはずです。

マネージドサービスは、ノードを持つ手間を引き受けてくれる存在でした。ノード運用を自分たちで担うか、別の事業者に委ねるかを決める今回の移行は、どこにノードを置き、誰の答えを信じ、誰と台帳を共有するのかを、もう一度自分たちで選び直す機会でもあります。この1年で各社が下す選択が、エンタープライズとパブリックの両方で、ブロックチェーン基盤の次の形を決めていきます。

【用語解説】

Amazon Managed Blockchain(AMB)
AWSが提供してきたブロックチェーンのマネージドサービス。ノードの構築や運用をAWSが代行し、利用者はAPIを通じてブロックチェーンを使える。

AMB Access
AMBのうち、ブロックチェーンのノードへの接続を提供する機能群。Ethereum・Bitcoin・Polygonへの接続と、Hyperledger Fabricのネットワーク構築を含む。

AMB Query
ブロックチェーン上の取引履歴や残高などを、索引化・標準化したデータとして返すAPI。利用者は自分でデータを整える必要がない。

Hyperledger Fabric
Linux Foundation傘下で開発される企業向けの許可型ブロックチェーン基盤。参加者を限定し、組織どうしで台帳を共有する用途に使われる。

RPC(Remote Procedure Call)
アプリがノードに処理を依頼する仕組み。ブロックチェーンでは、残高の照会や取引の送信をノードに求める標準的な窓口として使われる。

ノード
ブロックチェーンのネットワークに参加し、ブロックや取引のデータを保持・検証するコンピューター。アプリはノードを通じてチェーンにアクセスする。

エンドポイント
APIやRPCで接続する先のアドレス。事業者を替えると、通常はエンドポイントと認証情報の差し替えが必要になる。

確認深度
ある取引を含むブロックの後に、何ブロック積み重なったかを示す度合い。深いほど、その取引が覆る可能性は低くなる。

認証局(CA)
デジタル証明書を発行する機関。Hyperledger Fabricでは、ネットワーク参加者の身元を示す証明書を発行する。

メンバーシップ・サービス・プロバイダー(MSP)
Hyperledger Fabricで、証明書をもとに参加者の身元・所属組織・役割を認識する仕組み。

エンドースメントポリシー
Hyperledger Fabricで、取引が有効と認められるために、どの組織のピアの承認が必要かを定める規則。

ピア
Hyperledger Fabricで、台帳とスマートコントラクトを保持し、取引の承認や記録を担うノード。

Amazon QLDB(Quantum Ledger Database)
AWSが提供していた台帳データベース。変更履歴を暗号学的に検証できるが、中央の管理者が運用する。2025年7月31日に提供を終えた。

Blockchain Node Engine
Google Cloudのマネージドなブロックチェーンノードのサービス。2026年12月15日に、Blockchain RPCとともに終了する。

Don’t trust, verify
「信頼せず、検証せよ」の意。他者を信用するのではなく、自らデータを検証することを重んじる暗号資産コミュニティの標語。

【参考リンク】

Amazon Managed Blockchain(外部)
AWSのブロックチェーン管理サービスAMBの製品ページ。サポート終了の告知と、対応するブロックチェーンの一覧を掲載する。

AWS Blockchain Node Runners(外部)
AWS上でブロックチェーンのノードを立てるための、AWS公開のオープンソース構成集。自前ノードへ移る際の主な選択肢となる。

Hyperledger Fabric(外部)
企業向け許可型ブロックチェーン基盤Hyperledger Fabricの公式文書の日本語版。MSPやポリシーの仕組みを解説する。

Quicknode(外部)
複数チェーンのRPCとデータAPIを提供する事業者。AWSとGoogle Cloudの双方が移行先として名前を挙げている。

Alchemy(外部)
Web3開発向けのノードとAPIを提供する事業者。AMB Accessの移行先の例として、AWSが挙げている一社である。

Allium(外部)
企業向けにブロックチェーンのデータを索引化して提供する事業者。AMB Queryの移行先の候補としてAWSが挙げている。

【参考記事】

AWS Service Availability Updates(外部)
2026年9月29日のAWSの告知。AMBを含む複数サービスの終了予定と、Mechanical Turkの提供終了を伝えている。

Migrate to Quicknode before Dec 15, 2026(外部)
Google CloudがBlockchain Node Engineなど2サービスを2026年12月15日に終えると告げた移行案内。

AWS Announces General Availability of Amazon Managed Blockchain(外部)
2019年4月30日の一般提供開始の発表。提供開始時はFabricに対応し、Ethereumは同年後半に対応する予定とした。

Migrate an Amazon QLDB Ledger to Amazon Aurora PostgreSQL(外部)
2025年7月に終了したQLDBについて、AWSがAurora PostgreSQLへの移行手順を解説したデータベースブログの記事。

【Crypto Verse関連記事】

AWSのAmazon Managed Blockchainサポート終了と「ノードは誰が持つか」の問いを、より広い文脈で理解するための関連記事をご案内します。プロトコル改革とノード運用・機関金融オンチェーン化のエンタープライズ基盤・Big Techの決済インフラ動向・セルフカストディと自己検証を横断的に読むことで、「どこにノードを置き、誰の答えを信じ、誰と台帳を共有するのか」という設計問題が立体的に見えてきます。

ノードを誰が持つか・プロトコル改革

機関金融オンチェーン化・エンタープライズ基盤

AI×Web3・Big Tech決済インフラ動向

セルフカストディ・自己検証

日本の暗号資産業界動向

【編集部後記】

2019年4月30日、AMBの一般提供を伝えたAmazonのプレスリリースには、取引をQLDBへ複製しやすくする機能が紹介されていました。QLDBは、信頼できる中央の管理者を置く台帳として説明されています。

中央の管理者なしで記録を共有するための基盤に、最初から中央型の台帳への出口が添えられていたことになります。今回、移行先にデータベースが並んだのは、方針の転換というより、7年前から用意されていた選択肢が表に出てきたということなのかもしれません。

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By山本 達也

『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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