Last Updated on 2026年9月29日 by Co-Founder/ Researcher
約12.8秒かかっていた取引の確定を、約150ミリ秒へ縮める。Solanaの新しいコンセンサス「Alpenglow」が、その目標を掲げてテストネットとデブネットで有効になりました。ただ、この数字の陰で入れ替わるのは速さだけではありません。取引が覆らなくなったことを、誰が、何を手掛かりに確かめるのかという仕組みも、一緒に変わります。
Solana財団は、次期コンセンサス「Alpenglow」の移行ガイドを公開している。第1段階のVotorはTowerBFTを置き換え、バリデーターは投票をトランザクションではなく直接交換して証明書に束ね、1〜2回の投票でブロックを確定させる。確定までの時間は現在の約12.8秒に対し、約150ミリ秒を目標とする。SVM、トランザクション形式、手数料は変わらず、利用者の対応は不要とされる。
一方で投票トランザクションはブロックから消え、confirmedとfinalizedは同じ状態になる。Votorは敵対的なステーク20%とオフラインの20%を同時に許容する。フィーチャーゲートはテストネットとデブネットで有効化済みで、メインネットは未有効化である。
From: Alpenglow | Solana Media
【編集部解説】
8月に取り上げたスロットタイムの短縮は、ブロックを作る「時計」を刻み直す話でした。その記事の後半で、別の軌道として触れたのがAlpenglowです。こちらは時計ではなく、ブロックが「もう覆らない」と決まる仕組みそのものを作り替えます。
その新しい仕組みが、報道によれば9月24日(UTC)にテストネット、25日(同)にデブネットで動き始めました。財団の案内では、Alpenglowのフィーチャーゲートはテストネットとデブネットで有効、メインネットでは未有効化です。各ネットワークの実際の移行状態は、専用のRPCで確認できます。
9月28日にメインネットで有効化される、という見出しを目にした方もいるかもしれません。Anzaのv4.3スケジュールで9月28日に置かれているのは、メインネットでフィーチャーの有効化を「再開」する日です。Alpenglowの日付ではありません。Anzaの説明は一貫していて、テストネット、デブネット、観察期間を経てメインネットへ、という順序です。
「速くなる」の中身を分けておく
150ミリ秒という数字は、ブロックが作られる間隔ではなく、取引が覆らなくなるまでの時間です。財団自身がこの区別を明記しています。スロットタイムは現在300ミリ秒で、200ミリ秒へ向けて別の段取りで縮められています。
これまでのTowerBFTでは、バリデーターが投票をトランザクションとしてブロックに書き込み、32スロット分の投票が積み重なって初めて確定していました。およそ12.8秒です。実務ではその手前の「confirmed」を使うのが一般的でしたが、これは強い期待であって、理屈の上では覆りうる状態でした。
Votorでは、バリデーターが投票を互いに直接送り合い、一定量が集まった時点で証明書に束ねます。1回目の投票で80%以上のステークが賛成すれば、その場で確定します。届かなくても60%以上の賛成があれば2回目に進み、そこでも60%以上が揃えば確定します。
その結果、confirmedとfinalizedが同じ状態になります。これまで利用者が「速さ」を取るか「確実さ」を取るかで選んでいた2つの段階が、一つに畳まれるわけです。取引所やブリッジのうち、ブロックの確定を運用上の判断材料にしているサービスにも、影響が及びえます。
数字の読み方が変わる
利用者に求められる対応はありません。ウォレットも、送金の手順も、手数料の仕組みも変わりません。変わるのは、ブロックを読む側です。
投票がトランザクションでなくなるため、ブロックから投票が消えます。Solana Compassの集計では、9月24日のメインネットで、投票が約2億1710万件、それ以外の取引が約1億6880万件でした。投票を含めて数えてきたトランザクション件数とTPSの表示は、メインネットの切り替え後に大きく下がる見込みですが、利用が減ったことを意味しません。財団はこれを処理能力の後退ではなく集計上の変化だと説明し、ダッシュボードや警告のしきい値を取り直すよう求めています。
Solanaの利用規模を件数で語ってきた資料は、切り替えの前後で単純に比べられなくなります。日本でSolanaの採用を検討している事業者が社内資料を作るときにも、覚えておきたい点です。
もう一つ、プログラムが読む時刻の決まり方も変わります。これまでは各バリデーターが投票に添えた時刻の加重中央値でしたが、今後はブロックを作るリーダーが、直前のブロックの時刻を起点とする一定の範囲内で設定します。時刻に厳密さを求める処理を持つ開発者は、この変更を一度確かめておく必要があります。
確定は、誰でも検証できる証明書になる
Crypto Verseの視点から見て、今回いちばん大きな変化はここです。
TowerBFTの確定は、ブロックに積み重なった投票から判断されていました。Votorでは、集まった投票を1枚の証明書に束ねます。財団によれば、この証明書はリーダーだけが作れる特別な情報ではなく、十分な投票を集めたバリデーターなら誰でも作成して共有できます。投票とバリデーターのBLS公開鍵を持つ人は、証明書を独立に検証できます。確定を確かめる手掛かりが、投票の積み重ねから、持ち運べる1枚の証明書へ変わるのです。
ただし、確定を知る速さは、ノードがどの情報を受け取れるかによって変わります。Votorの投票は、毎エポック選ばれる最大2,000のバリデーターのあいだで交わされます。その外側のノードは、選ばれたバリデーターと組んでメッセージを受け取るか、後続ブロックの末尾に載る証明書を確認することで、確定を知ります。Anzaはこの経路を3段階に分けて公開し、末尾の証明書を使う経路では通常1ブロック分ほどの遅れになると説明しています。財団は、末尾の証明書欄は任意で、載らないブロックも正常だとしています。
参加の入り口は、すでにメインネットで動いています。BLS鍵を登録し、ステークなどの条件を満たした最大2,000のバリデーターだけが合意に加わる仕組みが、7月から先に適用されているのです。ただし投票は、まだトランザクションとして行われています。
Alpenglowへの切り替え後は、この参加者に毎エポックの参加費(VAT)が課され、報酬として誰かに渡るのではなく焼却されます。財団は、従来の投票費用(1エポック約2 SOL)に近い水準として1.6 SOLを示しています。一方、スロット短縮の仕様SIMD-0525は、VATをスロット時間の段階に合わせて調整すると定めており、現在の300ミリ秒段階では1.2 SOLです。
クライアントの多様性は、いまAgaveに集まっている
テストネットの移行は、AnzaのAgave 4.3を前提に行われました。報道によれば、Jump CryptoのFiredancerと、その混成版であるFrankendancerは、このテストネットの切り替えに対応していませんでした。
ただ、Firedancerの開発リポジトリでは、9月21日から25日にかけて、Votorの証明書処理や、ステークを持たないノードで確定を追う機能などの変更が相次いで提出され、その一部はすでに取り込まれています。追いかける作業は、この1週間でも着々と進んでいます。プロトコルの中核を入れ替える局面では、まず一つの実装で道を通し、ほかの実装が後から合流する。多実装のネットワークがたどる、自然な順序だと言えます。
メインネットの日付は、まだ決まっていない
メインネットの時期については、財団の公式ページ同士でも書き方が揃っていません。Alpenglowのページは「2026年第3四半期」、7月に更新されたVATのページは「第4四半期の見込み」としています。Anzaは日付を示さず、観察期間の長さも明かしていません。
報道によれば、Anzaがデブネットの切り替えにあわせて開発者に求めたのは、観察期間のあいだに自分のプログラムと連携を試すことでした。日付を先に約束するのではなく、公開のテスト網で動かしながら確かめる。その順番そのものが、このアップグレードの姿勢を表しています。
確定までの目安を約12.8秒から約150ミリ秒へ縮めることの意味は、単に速くなることではありません。店頭での決済のように、これまで「念のため待つ」ことを前提に組まれてきた仕組みを、待ち時間の短い前提で設計し直す余地が生まれます。その変化が日本の利用者の手元に届くのは、メインネットの切り替えの先です。
【用語解説】
Alpenglow(アルペングロー)
Solanaの次期コンセンサスプロトコル。仕様はSIMD-0326。第1段階のVotorで投票と確定の仕組みを置き換え、第2段階のRotorでブロックの配信を置き換える計画である。
TowerBFT
Solanaのメインネットで現在使われているコンセンサス。バリデーターが投票をトランザクションとしてブロックに書き込み、32スロット分の投票が積み重なるとブロックが確定する。
Votor
Alpenglowの投票・確定の仕組み。投票をバリデーター同士で直接送り合い、一定の賛成が集まった時点で証明書に束ねる。1〜2ラウンドで確定する。
証明書(Votor)
一定量のステークによる投票を1つにまとめたもの。バリデーターの投票とBLS公開鍵があれば、誰でも独立に検証できる。
BLS公開鍵
多数の署名を1つに束ねられるBLS署名の公開鍵。Alpenglowに参加するバリデーターは、投票用のアカウントにこの鍵を登録する必要がある。
VAT(Validator Admission Ticket)
Alpenglowの合意に加わるバリデーターに、毎エポック課される参加費。焼却され、報酬として誰かに渡ることはない。額はスロットの段階に応じて調整する規定がある。
confirmed/finalized
取引の確定の段階を表すコミットメントレベル。TowerBFTではconfirmedのあとにfinalizedが来るが、Alpenglowでは同じ状態になる。confirmedは後のリリースで廃止される予定である。
フィーチャーゲート
プロトコルの変更をオンチェーンで有効化する仕組み。ネットワークごとに、別々の時点で有効になる。
RPC
外部のプログラムがノードに問い合わせるための窓口。Agave 4.3には、ネットワークがAlpenglowに移行したかどうかを返す専用のメソッドが加わった。
SIMD(Solana Improvement Document)
Solanaのプロトコル変更を提案・記録する文書。本記事で扱うSIMD-0525は、スロットタイム短縮の仕様である。
エポック
Solanaの運用上の区切り。432,000スロットで固定されているため、スロットが短くなるほど実時間も短くなる。
スロットタイム
1つのブロックを作る時間の区切り。確定までの時間とは別の概念で、現在のメインネットでは300ミリ秒である。
テストネット/デブネット
メインネットの前に変更を試す公開ネットワーク。デブネットは、アプリ開発者がプログラムを試す場として使われる。
TPS(Transactions Per Second)
1秒あたりのトランザクション数。Solanaの従来の集計は投票を含むため、Alpenglowの切り替え後は、数値の意味が変わる。
Frankendancer
Firedancerの通信とブロック生成の部分に、Agaveの実行と合意の部分を組み合わせた混成型のクライアント。
ステーク
バリデーターに預けられたSOLの量。投票の重みはこの量で決まる。
リーダー
そのスロットでブロックを作る担当のバリデーター。Alpenglowでは、ブロックに記録する時刻もリーダーが一定の範囲内で設定する。
SVM(Solana Virtual Machine)
Solanaでプログラムを実行する環境。Alpenglowの影響を受けない。
【参考リンク】
Solana(外部)
高速処理を特徴とするレイヤー1ブロックチェーンの公式サイト。Alpenglowを含むアップグレードごとの解説ページも公開している。
Agave(GitHub)(外部)
Anzaが開発するバリデータークライアントのリポジトリ。各バージョンのリリーススケジュールと変更履歴をWikiで公開している。
Alpenglow|Anza Docs(外部)
Anzaによる運用者向けの解説ページ。承認枠の外にいるノードが確定を知る3つの経路と、時刻の扱いの変化を具体的に説明している。
Agave v4.3 Release Schedule(外部)
Alpenglowを搭載したAgave 4.3の段階的な展開予定。テストネットからメインネットまで、各段階の予定日と実績日を表で示す。
BLS Pubkey and the Validator Admission Ticket(外部)
BLS鍵の登録とVATを説明する財団の公式ページ。2,000枠の選び方と、Alpenglowへの切り替え前後での違いを整理している。
Reduced Slot Times(外部)
スロットタイム短縮の公式ページ。350ミリ秒と300ミリ秒の有効化日、日程が未定の250ミリ秒と200ミリ秒の状況を示す。
SIMD-0525(外部)
スロットタイム短縮の仕様書。スロットの段階に合わせてVATの額を調整し、1日あたり約0.8 SOLに保つ規定を含んでいる。
Firedancer(GitHub)(外部)
Jump Cryptoが開発するバリデータークライアントのリポジトリ。9月下旬からVotorに対応するための変更が相次いで進められている。
Solana Compass(外部)
Solanaのネットワーク統計やニュースを公開する独立系の分析サイト。2021年9月からメインネットでバリデーターも運営している。
【参考動画】
【参考記事】
Solana’s Alpenglow Upgrade: Agave v4.3 Hits General Adoption Day Ahead of a Testnet-First Rollout(外部)
Agave 4.3の一般採用日を伝える記事。9月28日をAlpenglowの日付とした初版の誤りを、9月23日に訂正している。
Alpenglow Heads to Solana Testnet as Frankendancer Era Ends; Anza Publishes Agave v4.4 Schedule(外部)
テストネット切り替えを前に、Frankendancerの運用者に求められた対応と、公開されたAgave 4.4の日程を伝えている。
Solana starts testing upgrade that could cut finality from 12.8 seconds to 150 milliseconds(外部)
Solanaが確定を約13秒から0.15秒へ縮める試験を始めたことを、取引所の入金やブリッジなど確定を待つ場面の例とあわせて伝えている。
Alpenglow Is Live on Solana Devnet as Anza Retires TowerBFT at Slot 504148999(外部)
デブネット切り替えの経過を時刻とともに伝える記事。9月24日のメインネットで、投票が取引件数の約56%を占めたとする集計も示す。
【Crypto Verse関連記事】
Solana Alpenglow Votorのテストネット・デブネット有効化と「確定は誰でも検証できる証明書に」の変化を、より広い文脈で理解するための関連記事をご案内します。Solanaエコシステム・日本発Solana採用動向・他基盤プロトコル改革の対比軸・機関金融オンチェーン化を横断的に読むことで、「確定を確かめる手掛かりが投票の積み重ねから持ち運べる1枚の証明書へ変わる」意味が立体的に見えてきます。
Solanaエコシステム・プロトコル改革
- Solanaが400ミリ秒の壁を破った日―メインネットで350ミリ秒への切替が完了 → 本記事内で明示的に言及される、8月のスロットタイム短縮を扱った直接連動記事。「ブロックを作る時計(スロットタイム)」「取引が覆らなくなる時計(Alpenglow)」の2つの軌道を両記事併読で立体的に理解できます。
- Solanaとは?高速・低コストのブロックチェーンの仕組みと特徴を徹底解説 → 本記事のTowerBFT・Votor・スロット・エポックの動作原理を理解する起点となる、Solanaの全体像。
- SBI×Solana財団―SBI R3 Japan「SBI Solana Global(仮称)」、日本発オンチェーン金融市場の創出へ → 本記事のAlpenglow動向と並ぶ、日本発Solanaを軸にしたオンチェーン金融基盤動向。「確定が150ミリ秒」の変化が日本の機関金融にとって何を意味するかを理解できます。
- bitFlyer SOL上場の本当の意味─Solanaに集まる日本企業と金融商品取引法改正 → 本記事のAlpenglow動向と並ぶ、日本市場でのSolana採用動向。「confirmedとfinalized統合」が取引所運用にもたらす影響を理解できます。
- CAC「Pactora」提供開始―未実施の工程まで書いた手順書 → 本記事のSolanaプロトコル動向と並ぶ、Solana RWAの日本発マルチチェーンDvP決済基盤動向。
- Moody’s×Solana×AlphaLedger:信用格付けがトークンに直接埋め込まれる時代へ。TIEがメインネット稼働 → 本記事のSolana動向と並ぶ、Solana上での機関金融データ実装事例。
- SpaceX・Solanaが変える株式投資|3つのトークン化商品、その仕組みとリスク → 本記事のSolana動向と並ぶ、Solana上での株式トークン化実装事例。
- enishがビットコイン全売却、Solana中心の「DAT 2.0」へ転換|運用型トレジャリーの狙い → 本記事のSolana動向と並ぶ、日本企業のSolanaシフト動向。
- Claude Codeに「Solana AI Kit」登場―Solana開発を一括構築 → 本記事の開発者向け影響と並ぶ、Solana×AI開発エコシステム動向。
他基盤プロトコル改革
- Ethereum「Lean Ethereum」始動—ブテリンが量子耐性・プライバシー・拡張性を最優先に → 本記事のSolana本体プロトコル改革動向と対比される、Ethereum本体側のプロトコル改革動向。「Solanaの段階的改革」「Ethereumの全体設計改革」の対比を理解できます。
- EIP-8141「Frame Transaction」、Hegotá実装候補入り。ブテリンが週末投稿で解説 → 本記事のプロトコル改革動向と並ぶ、Ethereum本体側の直近改革動向。
- BlackRock・Strategy・Coinbaseら9社が Bitcoin Security Consortium 設立、量子対策を含むセキュリティ開発へ3年1500万ドル → 本記事のプロトコル改革動向と並ぶ、BTC 9社連合による量子対策動向。
- Polygonが直してから話した理由—非公開で先に配る手順が残した記録 → 本記事の「テストネット→デブネット→観察期間→メインネット」順序と対比される、Polygon L2側のプロトコル改革開示手順動向。「公開のテスト網で確かめる(Solana)」「非公開で先に配って事後開示(Polygon)」のガバナンス手法の対比を理解できます。
- XRPL機密送金、5億ドル市場と対象規格にずれ → 本記事のプロトコル改革動向と並ぶ、XRPL本体側の直近改革動向。
【編集部後記】
財団の移行ガイドには、移行したかどうかを日付やバージョン番号で判定しないように、という一文があります。代わりに案内されているのは、ネットワーク自身に問い合わせる専用のRPCです。移行前は空の値が、移行後は新しいコンセンサスで作られた最初のブロックの証明書が返ってきます。
いつ切り替わるかを発表で知るのではなく、切り替わったかどうかをネットワークに尋ねて確かめる。確定を証明書で確かめられるようにするアップグレードが、自らの移行にも同じ作法を求めている。そこに、この設計の一貫性が表れています。
——————–
※本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
詳細は当サイトの免責事項をご確認ください。
——————–

