BybitがFranklin Templetonと協業、トークン化ファンドを担保に使える仕組みを開始

Last Updated on 2026年10月1日 by Co-Founder/ Researcher

Franklin Templetonのファンド持分は、取引所の外にあるカストディに置かれたまま、Bybitで取引与信枠の裏付けになります。その保管先ByCustodyは、Bybit自身が自社のカストディの枠組みと呼ぶものでもあります。「外に置く」とは、いったい誰の手元に置くことなのでしょうか。


Bybitは2026年9月28日、Franklin Templetonとの戦略的協業を発表した。Bybitは利用者8,000万人超と説明している。最初の取り組みとして、適格クライアントは、Benji Technology Platformで発行されたトークン化マネー・マーケット・ファンドの持分を、ByCustody経由で差し入れ、BybitでUSDTまたはUSDCの取引与信枠を使える。

原資産はオフ取引所のカストディに残り、価値がBybitの取引環境に反映され、利回りも受け取り続ける。BybitとMantleチェーン上ではトークン化ウェルス商品も予定され、詳細は別途公表される。

From: Bybit and Franklin Templeton Form Strategic Collaboration to Expand Access to Tokenized Investing

取引所の取引口座に預けず、取引所の外に置いたまま、価値を取引に使う。 BybitとFranklin Templetonの協業の第1弾は、この一文で言い表せます。

発表の流れを整理すると、次のようになります。投資家は、Franklin TempletonがBenji Technology Platformで発行した、トークン化マネー・マーケット・ファンドの持分を持っています。これを、機関投資家向けのカストディ基盤ByCustodyに差し入れます。すると、その価値がBybitの取引環境に反映(ミラー)され、投資家はBybit上でUSDTまたはUSDCの取引与信枠を利用できます。発表によれば、持分は取引の間もオフ取引所のカストディに置かれたままです。

ここで押さえたいのは、担保を取引所の口座に「預ける」のではなく、カストディに置いたまま「価値を反映させる」という点です。取引所に資産を預ける従来の形では、取引所の運営や財務の状態が、預けた資産の安全性に直結していました。オフ取引所という形は、その結びつきを弱める設計です。ByCustodyが一般向けに公開している手順には、利用者、ByCustody、取引所の三者が関わる管理の形や、取引所が破綻した場合に担保の拘束を外す手順が示されています。一方で、ByCustodyはBybit自身が自社の機関投資家向けカストディの枠組みと説明しているものでもあります。取引所から独立した第三者の保管先と言えるかどうかは、公開資料だけでは分かりません。

この設計は、Bybitにとって初めてではありません。Bybitは2023年1月にCopperのClearLoopとの提携を発表しており、Zodia Custodyとの連携も公表されています。外部のカストディ事業者と組んだオフ取引所型の取引が、段階的に広がってきました。担保の面でも、Bybitは2026年7月に、最上位格付けのマネー・マーケット・ファンドを裏付けとするFinloopのFUIDLを、取引の担保に使えるようにしています。今回加わったのは、Franklin TempletonのBenji基盤で発行されたファンド持分を担保に使う選択肢です。発表は、差し入れている間も利回りを受け取り続けられる点を特徴に挙げています。

同じ型は、Franklin Templetonが2026年2月にBinanceと始めたプログラムにもあります。こちらの発表は、カストディを担うCeffu Custody FZEを、ドバイで免許を受け監督されている事業者と明記しています。Bybit側の発表はByCustodyの運営主体や免許には触れておらず、代わりにUSDTまたはUSDCの与信枠と、ウォレット型の投資家向け商品に言及しています。両プログラムの条件が同じかどうかは、公表された資料からは判断できません。それでもFranklin Templetonにとっては、同じBenjiの持分を担保に使える取引所が、Binanceに加えてBybitにも広がったことになります。

ByCustodyの自社サイトには、リスクを語る言葉が並んでいます。トップページは取引所のデフォルトリスクと決済リスクを「なくす」と掲げ、詳細ページも見出しに「Zero Counterparty Risk」を置く一方、本文では取引所への直接預託を避けることでカウンターパーティリスクを「減らす」と説明しています。今回のリリースの言葉も「カウンターパーティ・エクスポージャーの低減」です。読むときの基準は、「ゼロ」よりも「低減」に置くのが実態に近いでしょう。資産を取引所に置かないことで、取引所の破綻に巻き込まれる経路は細くなります。ただ、与信の返済や担保価値の評価、決済の際に担保を動かす手順といった部分は残ります。今回のBenji持分に適用される掛け目や清算の条件は、公表資料では確認できません。対象地域や適格要件も示されていないため、日本の読者が利用できるかどうかも、まだ分かりません。

協業のもう一つの柱は、ウォレット型の投資家に向けたものです。BybitとMantleチェーン上で、Franklin Templetonの運用戦略にアクセスできるトークン化ウェルス商品を用意するとしています。商品の詳しい内容は、BybitとMantleが別途知らせるとされ、開始時期は今回の発表では示されていません。あわせて、目標ベースの投資や分散投資といった考え方を学べるコンテンツも出すとされています。機関投資家向けの担保とウォレット型投資家向けの商品が、Franklin Templetonの運用戦略を通じてつながる構図です。

この協業が示しているのは、利回りを生む資産が、取引所の外に置かれたまま取引の裏付けとして働き始めていることです。資産を取引所の口座に直接置かないなら、次に問われるのは、誰がその資産を保管し、その価値をどんな規則で取引に認めるのかという設計の標準になります。規則と開示が揃っていくほど、この仕組みは読者が自分で検証しやすい地図になっていきます。

【用語解説】

オフ取引所
取引に使う資産を取引所の口座に置かず、外部のカストディに保管したまま、その価値だけを取引所の取引環境に反映する方式だ。

ミラー(価値の反映)
カストディに置いた資産の価値を、取引所側の残高や取引枠に対応させて記録すること。資産そのものを取引所へ移すことを意味しない。

カストディ
利用者に代わって資産を保管・管理すること、またはその事業者。

マネー・マーケット・ファンド
短期の債券や現金などで運用する投資信託。今回は、その持分をブロックチェーン上のトークンとして記録・移転できるようにしたものを指す。

取引与信枠
差し入れた担保の価値を根拠に、取引のために使える範囲。今回はUSDTまたはUSDC建てとされている。

掛け目(ヘアカット)
担保の評価額を決めるために、時価に掛ける率、またはそこから差し引く率。国内では評価率を掛け目、割引率をヘアカットと呼び分けることがある。

カウンターパーティリスク(エクスポージャー)
取引の相手方が約束を果たせなくなる危険。取引所の場合は、破綻や停止が預けた資産に及ぶ可能性を指す。エクスポージャーは、その影響を受ける範囲だ。

USDT/USDC
ステーブルコイン(米ドルなどの法定通貨に価値を連動させる暗号資産)。USDTはTether社、USDCはCircle社が発行している。

FUIDL
Finloop USD Instant Digital Liquidityの略。Finloopが提供するトークン化された米ドル流動性商品で、最上位格付けのマネー・マーケット・ファンドを裏付けとしている。

【参考リンク】

Bybit Press(外部)
Bybitの公式プレスルーム。同社のニュースやイベントの情報、各種の発表リリースを英語でまとめて掲載しており、一次資料の確認に使える。

Franklin Templeton(外部)
Franklin Templetonの公式サイト。運用会社としての事業や商品、およびデジタル資産への取り組みを紹介している。

Benji(Franklin Templeton)(外部)
Franklin TempletonのBenji紹介ページ。ブロックチェーン上で記録されるトークン化ファンドの仕組みを説明する。

ByCustody(外部)
機関投資家向けのカストディとオフ取引所決済を提供するByCustodyの公式サイト。英語で仕組みや対応資産を紹介している。

Mantle(外部)
Mantleの公式サイト。機関投資家向けの資産をオンチェーンで扱うネットワークとして、自らの位置づけを英語で紹介している。

Binance(外部)
Binanceの公式サイト。Franklin Templetonが2026年2月にオフ取引所担保プログラムを始めた暗号資産取引所。

【参考記事】

CoinDesk|Crypto-friendly institution Franklin Templeton brings its tokenized collateral service to Bybit(外部)
ファンド持分がUSDTまたはUSDCの取引与信枠の担保になると報じる。原資産はByCustodyが取引所の外で保管する。

Business Wire|Franklin Templeton and Binance Advance Strategic Collaboration With Institutional Off-Exchange Collateral Program(外部)
Binanceで先に始まった同型プログラムの原文。カストディはCeffu Custody FZEで、ドバイで免許を受けた事業者とする。

ByCustody|Off-Exchange Settlement for Institutions(外部)
オフ取引所口座の公式手順書。Bybit向けの決済周期は2時間で、取引所が破綻した場合の担保の拘束を外す手順も日数で示している。

PR Newswire|Bybit Unveils 2026 Vision as “The New Financial Platform,” Expanding Beyond Exchange Into Global Financial Infrastructure(外部)
Bybitが、ByCustodyを自社の機関投資家向けカストディの枠組みと説明している。50億ドル超の資産を支えるとする。

Copper|Bybit strengthens custodial services for institutional investors(外部)
BybitがCopperのClearLoopと組み、機関投資家が資産を取引所の外のカストディに置いたまま取引できるようにする提携。

The Daily Hodl|Bybit Introduces Finloop’s FUIDL backed by an AAA-rated Money Market Fund(外部)
最上位格付けのマネー・マーケット・ファンドを裏付けとするFUIDLを、Bybitが取引の担保に使えるようにするとの発表。

【Crypto Verse関連記事】

Bybit×Franklin Templetonのトークン化ファンド担保仕組みと「取引所の外に置いたまま価値を反映」の構造を、より広い文脈で理解するための関連記事をご案内します。トークン化ファンド・機関金融オンチェーン化・取引所セキュリティ対比・ステーブルコイン制度を横断的に読むことで、「ゼロではなく低減」という表現の実態と、速い時計と営業日の時計が同居する設計の意味が立体的に見えてきます。

トークン化ファンド・RWA・機関金融オンチェーン化

取引所セキュリティ・カストディ

ステーブルコイン制度・USDT/USDC・決済設計

Ethereum L2・Mantle関連

日本の暗号資産業界動向

【編集部後記】

ByCustodyが一般向けに公開している手順には、取引所が破綻した場合に担保の拘束を外す流れが、日数で示されています。初回の応答は48時間以内、事実の確認と承認は最長7営業日、解除の実行は2〜5営業日です。

一方、Bybit向けの決済は2時間ごとに回ります。速い時計と、営業日で進む時計が、同じ仕組みの中に同居しているわけです。今回のBenji持分に同じ条件が当てはまるかは、まだ分かりません。二つの時計の差は、担保の置き場所を選ぶとき、どの項目で確かめられるのでしょうか。

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※本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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By山本 達也

『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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