Last Updated on 2026年6月4日 by Co-Founder/ Researcher
コンビニでおなじみの「ピザポテト」が、ブロックチェーン上のNFTとしてスマートフォンにやってきます。カルビーとSNPITが仕掛ける第2弾コラボは、なぜ今、この組み合わせで動き出したのでしょうか。
ギグワークス株式会社の子会社である株式会社GALLUSYSが開発するブロックチェーンゲーム「SNPIT」は、カルビー株式会社とのコラボレーション第2弾として、「ピザポテト」をテーマにした限定NFTを販売する。
第1弾は「じゃがりこ」であった。ピザポテト・ミントスクロールは、コモンが2,000点で約3,000円相当のSNPT、アンコモンが1,000点で約4,500円相当のSNPTで販売される。販売スケジュールは、ALNFT保有者限定の第1フェーズが2026年4月24日17:00から4月26日17:00まで、一般販売の第2フェーズが4月27日17:00から4月30日17:00までだ。第1弾「じゃがりこ」のアイテムと組み合わせて特別仕様のカメラを生成できる連動型ミントも実装された。共同オフラインイベント「BTC Pizza Potato Day」を2026年5月22日に渋谷で開催予定である。
From: 対戦型写真アプリ「SNPIT」、カルビーとの新たなコラボレーション企画「ピザポテト®」開催決定!

【編集部解説】
「ピザポテト」のデザインをまとったNFTがブロックチェーンゲームに登場する——一見するとユニークな販促コラボに見えますが、この企画が示しているのは、日本の大手消費財メーカーによるWeb3活用が「実験フェーズ」から「定常運用フェーズ」へと静かに移行しつつあるという事実です。
そもそも今回のコラボレーションは、2025年10月に実施された第1弾「じゃがりこ」企画の続編にあたります。一過性のPR施策ではなく、第2弾として企画が継続された点に注目しています。Web3マーケティングは過去数年、話題先行で終わる事例が少なくありませんでしたが、少なくともカルビーとSNPITは「続ける価値のある手応え」を得たと解釈できます。
SNPITを簡潔に説明すると、スマートフォンのカメラNFTで写真を撮ることでポイントを稼げる「Snap-to-Earn(スナップ・トゥ・アーン)」型のGame-Fiサービスです。歩いて稼ぐ「Move-to-Earn」のStepnや、キャラクター育成・対戦で稼ぐAxie Infinityに続く「〇〇して稼ぐ」系譜の日本発プロダクトであり、基盤には効率の高いPolygonチェーンを採用しています。
今回販売される「ミントスクロール」は、新しいカメラNFTを生成(ミント)する際の触媒のような消耗アイテムです。つまり単なるコレクターズアイテムではなく、ゲーム内で機能を持つ実用NFTである点が、従来の「絵が変わるだけ」のブランドコラボNFTとは一線を画しています。
さらに見逃せないのが「連動型ミント」という設計です。第1弾「じゃがりこ」のアイテムと第2弾「ピザポテト」のアイテムを組み合わせることで特別なカメラが生まれる仕組みで、過去の企画に参加したユーザーを次の企画にも引き込む、ブランド側から見れば極めて巧妙なリテンション(継続利用)装置として機能します。
連動企画として開催される「BTC Pizza Potato Day」というイベント名にも、編集部として触れておきたい文脈があります。5月22日は、暗号資産コミュニティで「Bitcoin Pizza Day」と呼ばれる記念日です。2010年のこの日、プログラマーのラズロ・ハニエツ氏が1万BTCで2枚のピザを購入した、世界初とされるビットコインの実用取引が行われました。その日付をあえて選んでいることは、クリプトネイティブ層への目配せが意図されているのは明らかでしょう。
カルビー側の狙いも、点ではなく線で捉える必要があります。新規事業部門「Calbee Future Labo」は2023年の立ち上げ以降、ライセンス商品を1年間で約80%増加させ、2025年にはブロックチェーンを用いたIP管理プラットフォーム「かるれっと」も稼働させています。2030年までに世界1,000万人へのリーチを掲げる同社にとって、SNPITのグローバル展開(韓国、MENA地域、英語圏への拡大が公表済み)は、日本IPを海外に届ける導線としても位置付けられるはずです。
もっとも、ポジティブな側面だけを強調することはフェアではありません。Snap-to-Earnを含む「X-to-Earn」モデルは、過去にトークン価値の下落とユーザー離れが連鎖する持続性の課題が指摘されてきました。SNPTトークンの価格変動、国内のNFT・暗号資産に関する税制・会計処理、そして一般ユーザーにとってのウォレット操作のハードルなど、越えるべき壁は依然として存在します。
それでも、「ピザポテトのミントスクロール」という、お菓子好きにも刺さる親しみやすい入り口がWeb3に用意されることの意味は小さくありません。技術を純粋な投機対象ではなく、日常の延長線上にある体験として実装する試みは、日本型のWeb3普及シナリオとして一つの型を示しているとも捉えられます。
未来を報じるメディアとしてinnovaTopiaが注視したいのは、こうした大手ナショナルブランドによるWeb3活用が、単発の話題づくりを超えて、継続的なファン資産(カメラNFTやコレクション)として消費者の手元に残っていくかどうかです。第3弾があるのか、そしてどのスナックと組み合わされるのか——この「シリーズ化」こそが、日本のWeb3マーケティングの成熟度を測る指標になるはずです。
【用語解説】
NFT(Non-Fungible Token/非代替性トークン)
ブロックチェーン上で発行される、唯一性を持つデジタルデータのこと。複製可能な通常のデジタルデータと異なり、発行記録と所有履歴が改ざん困難な形で残るため、デジタルアイテムの「所有」を成立させる仕組みとして用いられる。
Game-Fi(ゲーミファイ)
Game(ゲーム)とFinance(金融)を掛け合わせた造語である。ゲーム内のアイテムや通貨をNFTや暗号資産として扱い、プレイを通じて経済的な価値を獲得できるモデルを指す。
Snap-to-Earn(スナップ・トゥ・アーン)
写真を撮ることでトークンやポイントを獲得できるGame-Fiのジャンル。歩いて稼ぐMove-to-Earn(StepnなどのX-to-Earn系ジャンル)の派生形として登場し、SNPITは世界初のSnap-to-Earnを標榜している。
X-to-Earn / Play-to-Earn
特定の行動(Play=遊ぶ、Move=歩く、Snap=撮るなど)に対して暗号資産やNFTの形で報酬が支払われるモデルの総称だ。Axie Infinityがその代表格として2021年に爆発的に拡大した一方、トークン価格の下落による持続性の課題も経験している。
カメラNFT(Camera BOX)
SNPIT内で撮影に使用する中心的なゲームアイテム。性能値を持ち、強化することで獲得ポイント量や撮影可能回数が増える。ミントによって新たなカメラNFTを生成することが可能である。
ミントスクロール
新しいカメラNFTを生成(ミント)するために消費される、いわば触媒のようなアイテムだ。今回の「ピザポテト・ミントスクロール」は、使用することで「ピザポテト印」付きの限定カメラを生み出せる仕様となっている。
連動型ミント
過去に販売された別シリーズのミントアイテムと、今回のミントアイテムを組み合わせることで、特別仕様のカメラNFTを生成できる仕組み。第1弾「じゃがりこ」のアイテム保有者が第2弾へ参加する強い動機を生む、リテンション設計上の工夫といえる。
SNPT
SNPITが発行する独自のトークン(暗号資産)。ゲーム内ポイント(STP)をSNPTに変換し、外部の暗号資産取引所で流動化することが可能である。
ALNFT(Allow List NFT)
特定のNFT保有者に対して先行購入や優遇特典を付与する権利付きNFTを指す。今回の第1フェーズは、このALNFT保有者限定で販売される。
Polygon(ポリゴン)
イーサリアムの処理能力不足(スケーラビリティ問題)を解決するために設計された、スケーリング用のブロックチェーン・ネットワークである。主力の「Polygon PoS」は、厳密にはイーサリアムのサイドチェーンとして分類されるが、イーサリアム関連のスケーリング・ソリューションの代表格として広く参照されている。取引手数料が安く、消費電力も抑えられるため、GameFiやNFTプロジェクトに多く採用されてきた。
Bitcoin Pizza Day
毎年5月22日に暗号資産コミュニティで祝われる記念日。2010年5月22日にプログラマーのラズロ・ハニエツが1万BTCでパパ・ジョンズのピザ2枚を購入した、世界初の実用的なビットコイン決済を記念したものだ。今回のオフラインイベント「BTC Pizza Potato Day」の名称は、この日付に掛けたものと解釈できる。
MENA地域
中東・北アフリカ(Middle East and North Africa)を指す地域総称。若年人口比率が高く、暗号資産・Web3領域で近年注目を集めているマーケットである。
かるれっと
カルビーと博報堂キースリーが2025年4月に発表したブロックチェーンベースのIP管理プラットフォーム。クリエイターとのライセンス契約や二次創作の権利管理を効率化することを目的として設計されている。
【参考リンク】
SNPIT Whitepaper(外部)
SNPITのトークン設計、エコシステム、ロードマップを詳述した公式文書。
SNPIT 公式X(外部)
新コラボやキャンペーン情報が最速で告知される公式Xアカウント。
ギグワークス株式会社(外部)
SNPITを運営するGALLUSYSの親会社で、東証スタンダード上場企業。
株式会社GALLUSYS(外部)
SNPITやピクティアを手がけるアプリ開発会社のコーポレートサイト。
カルビー株式会社(外部)
じゃがりこやピザポテトを展開する大手菓子メーカーの公式サイト。
カルビー公式note「THE CALBEE」(外部)
Calbee Future Laboの取り組みやIP戦略を発信するカルビー公式note。
カルビーIP事業解説note記事(外部)
じゃがりこをNFTやスニーカーに展開するIP戦略の狙いを解説した記事。
IP管理プラットフォーム「かるれっと」解説note記事(外部)
ブロックチェーンを用いたカルビーのIP管理プラットフォーム開発の背景。
【参考記事】
カルビーのIP事業戦略 「食べる」以外の場面で顧客接点の拡大目指す(外部)
カルビーのライセンス商品が1年で約80%増、IP二次利用で将来的に50億円規模の収益目標を報じた記事。
What you didn’t know about Laszlo Hanyecz, the Bitcoin Pizza Day Legend(CoinDesk)(外部)
2010年5月22日、ラズロ・ハニエツが1万BTCでピザ2枚を購入した史実を詳述したCoinDeskの記事。
NFTゲーム市場規模レポート(GII Research)(外部)
NFTゲーム市場が2025年5,825億3,000万ドルから2030年1兆2,831億7,000万ドルへ拡大との予測レポート。
カルビー「ピザポテト」がブロックチェーンゲームに(NADA NEWS)(外部)
第2弾ピザポテトコラボの発行数・価格・日程を独立した視点で報じたNADA NEWSの記事。
From Japan to the World: SNPIT Expands with DePIN-Enhanced Snap-to-Earn Platform(外部)
SNPITの韓国・MENA・英語圏展開とBOBG提携を伝えるGlobeNewswireの英語プレスリリース。
カルビー、カメラGame-Fi「SNPIT」で「じゃがりこ」NFTを展開(CoinDesk JAPAN)(外部)
第1弾じゃがりこコラボの詳細を報じた記事。第2弾との比較文脈を把握するため参照した。
「IPは守るものから広げるものへ」。カルビー発の音楽レーベル『じゃがレコード』が目指す未来(外部)
Calbee Future LaboディレクターがWeb3・NFTを含むIP拡張戦略の思想を語る対談記事。
What is Polygon and how does it work?(The Block)(外部)
Polygon PoSがサイドチェーンとして機能する点を整理したThe Blockの解説記事。
【Crypto Verse関連記事】
本記事のSNPIT×カルビーNFTコラボ・日本企業のWeb3活用・GameFiの構造的背景をより深く理解するための、Crypto Verseの関連解説記事をご案内します。
【NFT領域】
- NFT(非代替性トークン)とは?過去の投機的なフェーズを完全に脱却しデジタル所有権の証明からRWA(現実資産)への進化を徹底解説
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→ 本記事のカルビー・SNPITコラボのような「エンタープライズNFT実装」の構造的位置づけ。Dynamic NFT・ERC-3643・ERC-6551・ERC-4337等の技術進化と、日本の大手消費財メーカーによるWeb3活用が「実験フェーズ」から「定常運用フェーズ」へ移行する潮流を実証的に解剖した記事です。 - イーサリアムトークン規格の技術的構造:ERC-20・ERC-721・ERC-1155の完全解剖【2026年版】
→ 本記事のミントスクロール・カメラNFTが採用するERC-721・ERC-1155規格の技術的構造を完全解剖。「連動型ミント」のような複雑なNFT設計の技術的基盤を理解できます。 - 【完全版】NFTスマートコントラクトのセキュリティ構造:クロスチェーン脅威と多層防衛アーキテクチャの解剖
→ 本記事のGameFi型NFT実装におけるスマートコントラクトのセキュリティ脅威と多層防衛アーキテクチャを解説。エンタープライズNFT実装における必須のリスク管理視点を提供します。 - CryptoPunksの歴史的変遷と2026年現在の権利構造:NFT市場における価値保存のメカニズム
→ 本記事のカルビーIP活用と対比される、NFT市場における「IP管理」の歴史的事例。Larva Labs → Yuga Labs → Infinite Node Foundationという権利移転の歴史と、「かるれっと」のようなIP管理プラットフォームの構造的位置づけを理解できます。 - BAYC・Cryptopunks フロア価格75.87%上昇、ブルーチップ NFT に選択的需要が回帰
→ 本記事のNFT市場全体の最新動向。ブルーチップNFT需要回帰の中で、SNPIT・カルビーのような実用型NFTがどう位置づけられるかの市場文脈を理解できます。 - Bored Ape NFTが88%暴落—スティーブ・アオキが語った「5年の予言」の結末
→ 本記事の「実用NFT」と対比される、PFP・コレクティブル型NFTの価格形成メカニズムの脆弱性。投機型NFTと実用型NFTの構造的差異を理解できます。 - OpenSea発ERC草案「ERC-8257」、NFTが資産から鍵へ—AIエージェント経済の見取り図
→ 本記事のミントスクロールが体現する「NFTがゲーム内機能を持つ実用アイテム」と並行する、NFTの新たな実用化シフトの最新展開。NFTがAIエージェントの「鍵」として機能する次世代設計を解説しています。 - Slonks登場:CryptoPunksをAIで再構成、自ら消滅していくNFTプロジェクトの全貌
→ 本記事のSNPITカメラNFTと対比される、AI×NFTの最先端実験事例。NFTの新たな表現可能性を解説しています。
【Web3俯瞰・マクロ】
- 2026年のWeb3概論:AIエージェント決済と公的資産保有に向けた構造的検証
→ 本記事のSNPIT×カルビーコラボを、2026年Web3全体のマクロ構造変化(AIエージェント決済・公的資産保有・RWA)の文脈に位置づけた俯瞰記事。日本企業のWeb3活用が「実験フェーズ」から「定常運用フェーズ」へ移行する潮流を理解できます。
【編集部後記】
「ピザポテト」の袋を手に取ったことがある方なら、今回のコラボには少し不思議な感覚を覚えるかもしれません。見慣れたお菓子のデザインが、ブロックチェーン上のNFTとして立ち上がる——。皆さんなら、どのブランドがNFT化されたら手に取ってみたいですか?
ゲームとして遊びたいブランド、コレクションとして残したいブランド、頭の中で選んでみるのはいかがでしょう。次にコンビニで過ごす時間が、少し違って見えるかもしれません。
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