【解説】CryptoPawnへの警告は貸金業法だった|19者の一覧に残る1行

【解説】CryptoPawnへの警告は貸金業法だった|19者の一覧に残る1行

Last Updated on 2026年9月15日 by Co-Founder/ Researcher

金融庁がBit Hills Inc.に警告を出しました。使われたのは資金決済法ではなく、貸金業法です。同じ一覧には、勧誘手段にファクスを挙げる国内の業者が18者並んでいます。暗号資産を担保に貸す仕組みは、なぜこの棚に置かれることになったのでしょうか。


金融庁は2026年9月11日、Bit Hills Inc.に対し、貸金業者向けの総合的な監督指針Ⅲ-1-1(4)③に基づく警告を行い、ウェブサイトで公表した。同社は「無登録で貸金業を行っている者等」として掲載され、備考欄には、インターネット上で金銭の貸付けを行っている「CryptoPawn」を運営していると記された。資料上の所在地は英領バージン諸島トルトラ島ロードタウンで、代表者は不明とされる。

金融庁は、これらの記載がインターネット上の情報に基づくもので、現時点のものでない可能性があると付記している。所管は銀行・証券監督局総務課貸金業室。同日時点の一覧に掲載されているのは、金融庁が警告を行った者1者と、関東財務局が警告を行った者18者である。

資金決済法ではなく、貸金業法だった

2026年9月11日18時1分、金融庁の公式Xが1本の投稿を出しました。相手はBit Hills Inc.。暗号資産を担保に資金を貸す「CryptoPawn」の運営元です。ただし、適用されたのは資金決済法でも金融商品取引法でもありません。貸金業法でした。

この1点に、いま日本で「クリプトで借りる」ことがどう扱われているかが、ほぼ全部詰まっています。

19者の一覧で、備考欄が埋まっているのは1件だけ

金融庁が同日付で更新した「無登録で貸金業を行っている者等」の一覧を開くと、構造がよく見えます。

名前が載っているのは、関東財務局と本庁だけ

一覧は、金融庁本庁と全国11の財務局・支局ごとに区切られています。近畿、東海、九州、北海道、東北、北陸、中国、四国、福岡財務支局、沖縄総合事務局——この10欄は、いずれも「現在、無登録で貸金業を行っている等として警告を行った者はありません」。

実際に名前が載っているのは、関東財務局の18者と、金融庁本庁の1者。あわせて19者です。

関東財務局の18者は、2025年6月13日から2026年6月26日までに掲載されたもので、すべて国内の法人です。勧誘手段の欄を数えると、18者のうち14者がファクスを含みます。内訳はファクス単独が8者、ファクスとホームページの併記が5者、電話とファクスが1者。残りは電話とホームページが1者、ホームページとその他が3者です。備考欄は、18者とも「該当なし」で揃っています。

本庁の欄に、備考が埋まった1者

そして金融庁本庁の欄に、ただ1者。

Bit Hills Inc.。勧誘手段は「ホームページ、その他」で、この分類自体は関東財務局の3者と同じです。違うのは備考欄でした。19者のうち、備考が埋まっているのはこの1件だけです。そこには、インターネット上で金銭の貸付けを行っている「CryptoPawn」を運営している、と書かれています。

掲載19者のうち、所在地が国外なのもこの1者だけです。これまでの掲載例は、勧誘手段にファクスを挙げる国内法人が大半を占めてきました。そこへ、英領バージン諸島を所在地とする暗号資産担保ローンが、本庁の名で1行だけ加わった。この並びが、今回のニュースの中身だと言えます。

警告は、捜査当局への連絡とセットで行われる

金融庁が根拠に挙げた「貸金業者向けの総合的な監督指針Ⅲ-1-1(4)③」は、無登録業者への対応手順を定めた箇所です。中身を読むと、警告という言葉の重さが変わります。

指針が定める3つの分岐

指針は、無登録の疑いがある業者への対応を3つに分けています。故意性も悪質性もなく利用者保護の観点で問題がない場合は、直ちに登録の申請を求める。故意性・悪質性が認められる場合は、捜査当局に連絡するとともに、行為を直ちに取り止めるよう文書で警告する。貸付けの実行までは確認できないものの、貸金業を営む旨の表示・広告や勧誘が認められる場合も、捜査当局に連絡したうえで警告する。

つまり、公表を伴う警告に至る2つの経路は、指針上、いずれも捜査当局への連絡を伴います。無登録営業は貸金業法第11条第1項に反し、同法第47条により10年以下の拘禁刑もしくは3,000万円以下の罰金、またはその併科が定められています。法人にはさらに重い罰金が科されうる類型です。

ただし、行政処分ではない

同時に、警告そのものは行政処分ではありません。指針は、掲載から3年以上が経過し、当該業者に係る苦情等の情報と活動の実態が確認できなくなったときは、情報をウェブサイトから削除すると定めています。この一覧は、過去の警告をすべて積み上げた台帳ではありません。金融庁自身も、掲載されている業者が必ずしも現在も無登録営業を続けていることを示すものではない、と添えています。

担保が暗号資産でも、貸すのが金銭なら貸金業

10日前の9月1日、金融庁は香港のIzakaya Limitedにも警告書を出しています。こちらは、資金決済法上の登録を受けずに暗号資産交換業を行っていたとして、事務ガイドラインに基づいて発出されたものでした。

わずか10日のあいだに、暗号資産にまつわる2つのサービスが、別々の法律で、別々の部署から警告を受けたことになります。Izakaya Limitedは無登録の暗号資産交換業として。Bit Hills Inc.は暗号資産を担保とする金銭の貸付けとして。今回の連絡先に記された「銀行・証券監督局総務課 貸金業室」という部署名が、その分かれ方を端的に示しています。

X上では両サービスのつながりを疑う指摘が出ていますが、運営主体の同一性は確認されていません。ここでは、関係の有無とは独立に成り立つ構造の話として読んでください。

利用者の側から見ると、どちらも「暗号資産を預けて、その分の資金を動かす」という同じ体験です。ところが制度の側では、その取引に金銭の貸付けが含まれるかどうかで、問われる法律が変わります。担保が暗号資産であることは、貸金業法の適用を外す理由になりません。受け取る通貨の種類で決まる話でもなく、CryptoPawnの公式サイトは日本円のほかドル・ユーロでの受け取りも案内しています。自分が使っているサービスがどちらの入口に立っているのかは、画面を眺めていても分かりません。

問われたのは金利ではない

暗号資産担保ローンと聞くと、高金利を警戒する方が多いかもしれません。今回はその逆です。

日本では、利息制限法が上限金利を元本10万円未満で年20%、10万円以上100万円未満で年18%、100万円以上で年15%と定め、出資法が年20%という刑事罰の線を引いています。CryptoPawnの公式サイトは、貸付利率を月利0.1%、実質年率1.2%と案内しています(2026年9月11日時点の表示)。この水準は、上限のはるか下です。

それでも警告の対象になります。貸金業の登録が要るかどうかは、金利の高低とは無関係に決まるからです。国や地方公共団体、銀行、事業者による従業員への貸付けなど、貸金業法第2条第1項が定める適用除外に当たらない限り、業として金銭を貸し付けるなら、無利息であっても登録が要る。それがこの法律の立て付けです。

「金利が安いから健全なはずだ」という直感は、ここでは働きません。むしろ低金利であるがゆえに、登録を確かめる手が止まってしまうこともあり得ます。利率や上限額といった条件面の数字は事業者側の表示に基づくもので、時期によって変わることも、あわせて頭の隅に置いておきたいところです。

線は、いま引き直されている最中

もう一つ、時間軸の話をしておきます。

2026年7月15日、「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、7月23日に公布されました。暗号資産に係る規制を資金決済法から金商法へ移し、「暗号資産交換業」を「暗号資産取引業」へと改める大きな改正で、施行は公布から1年以内とされています。

この改正法は、暗号資産取引業者が行える付随業務を列挙しています。そのなかに、「顧客のために管理する暗号資産を担保とする金銭の貸付け(内閣府令で定めるものに限る)」という一項があります。暗号資産を預かり、それを担保に金銭を貸すという、今回まさに問題になった形の業務が、暗号資産取引業者の側の枠として用意されたわけです。どこまでが対象になるかは内閣府令に委ねられており、貸金業規制との適用関係も、これから整理が進むと見られています。

今回の警告は、その線が引き直される手前で、現行の枠組みで処理された事例として記録されることになります。数年後に振り返ったとき、制度の切り替わりの直前に置かれた一件として見えてくるはずです。

「売らずに借りる」という発想自体は、筋が通っている

最後に、サービスの発想そのものについて触れておきます。

暗号資産を売却すれば所得の計算が必要になる一方、単純に担保として差し入れるだけなら、それだけで売却益が確定するわけではありません。ただし、所有権が移転する形の契約や、担保が処分される場面では扱いが変わるため、個別の確認が要る領域です。それでも「売らずに資金を得たい」という動機は、日本の税制の下ではきわめて自然なものです。海外では、テザーがLednと組み、金連動トークンXAU₮を担保とするローンを2026年後半に始める計画を示しています。

問われているのは発想ではなく、それを日本の居住者に向けて誰が、どの登録の下で提供するかという一点です。改正法が施行され、貸付けをめぐる適用関係が整理されれば、暗号資産担保ローンが国内の登録事業者の手で、制度の内側から提供される道も見えてきます。

そのとき、今日の一覧に並んだ1行は、線がどこにあったかを示す座標として残ります。ただし一覧のほうは、載っていないことの証明にはなりません。掲載されていない者であっても無登録営業に該当する行為を行っていることがあり得る、と金融庁自身が断っています。確かめる向きは逆で、警告のリストを眺めるのではなく、登録されている側の名簿を引く。取引の前に「登録貸金業者情報検索サービス」や「金融事業者一括検索機能」で相手を検索してみる、という地味な手順に尽きます。2026年4〜6月に金融サービス利用者相談室へ寄せられた相談は、暗号資産等が1,374件、貸金等が669件。今回の一件は、この2つの分類のちょうど境目に立っています。

【用語解説】

貸金業
業として金銭の貸付けまたは金銭の貸借の媒介を行うこと。貸金業法第2条第1項が定義する。国や地方公共団体が行うもの、銀行が行うもの、事業者が従業者に対して行うものなど、明文の適用除外がある。利息の有無は定義の要件ではない。

無登録営業
貸金業法第11条第1項が禁じる、登録を受けずに貸金業を営む行為。貸金業を営む旨の表示・広告や、貸付契約の締結についての勧誘も規制の対象に含まれる。同法第47条により10年以下の拘禁刑もしくは3,000万円以下の罰金、またはその併科が定められている。

貸金業者向けの総合的な監督指針
金融庁が定める、貸金業者の監督事務の手引き。法令そのものではなく行政の内部基準にあたる。今回根拠とされたⅢ-1-1(4)③は、無登録業者を把握したときの対応手順を定めた箇所で、警告と、その公表・削除の運用を規定している。

事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)
暗号資産交換業者など金融会社の監督事務について、金融庁が定める指針。監督指針と同じく行政の内部基準である。無登録の暗号資産交換業者への警告は、これに基づいて発出される。

暗号資産担保ローン
保有する暗号資産を担保として差し入れ、売却せずに資金の融通を受ける仕組み。担保掛目(LTV)を設定し、担保価値が一定の水準を下回ると清算される設計が一般的である。日本では、貸し付けられるものが金銭であれば貸金業法の適用が問題になる。

利息制限法
金銭消費貸借契約の上限金利を定める法律。元本10万円未満で年20%、10万円以上100万円未満で年18%、100万円以上で年15%とし、これを超える部分の利息の約定を無効とする。

出資法
正式名称は「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」。貸金業者について年20%を超える利息の契約等を刑事罰の対象とする。利息制限法が民事上の効力を定めるのに対し、出資法は刑事罰の線を引く。

暗号資産交換業/暗号資産取引業
前者は資金決済法上の登録業種で、暗号資産の売買や交換、その媒介、顧客の暗号資産の管理などを業として行うもの。2026年に成立した改正法により、規制が金融商品取引法へ移り、名称も「暗号資産取引業」に改められる。

付随業務
登録を受けた業者が、本業に付随するものとして行える業務。改正金商法第35条の2の2第1項は暗号資産取引業者の付随業務を列挙しており、その第3号に「顧客のために管理する暗号資産を担保とする金銭の貸付け(内閣府令で定めるものに限る)」が置かれている。

XAU₮(Tether Gold)
テザーが発行する、金と連動するトークン。1トークンが金1トロイオンスに対応する設計で、裏付けとなる現物はスイスの保管施設に置かれるとされる。

【参考リンク】

金融庁「無登録で貸金業を行っている者等について(Bit Hills Inc.)」(外部)
2026年9月11日付で公表された資料。業者名と代表者、所在地、備考の3項目のみを記載した、A4縦1ページのPDFである。

金融庁「無登録で貸金業を行っている者等」(外部)
警告を受けた者の名称、勧誘手段、備考、掲載年月日を、金融庁と全国11の財務局・支局ごとに欄を分けて掲載している一覧ページである。

金融庁「貸金業者向けの総合的な監督指針Ⅲ」(外部)
事務処理上の留意点を定めた章。無登録業者を把握したときの対応の3つの分岐と、警告の公表および削除の具体的な運用を規定している。

登録貸金業者情報検索サービス(外部)
商号や所在地、代表者名、電話番号などの一部を入力することで、登録を受けている貸金業者を検索できる金融庁のサービスである。

金融庁「各種情報検索サービス」(外部)
金融事業者一括検索機能への入口。業種をまたいで、免許や許可、登録等を受けている金融事業者をまとめて検索できる画面である。

CryptoPawn(外部)
Bit Hills Inc.が運営する暗号資産担保ローンのサービスサイト。貸付利率や受け取りに使える通貨などを掲載している。

Ledn(外部)
ビットコイン担保ローンを手がける事業者の金関連ページ。XAU₮の保有と売買に加え、担保ローンの提供計画についても告知している。

【参考記事】

金融庁、クリプトポーン運営会社に無登録貸金業で警告(外部)
警告の事実に加え、CryptoPawnが公式サイトで月利0.1%、実質年率1.2%と案内していたことを伝える。IZAKA-YAとの関係を疑う声にも触れているが、運営主体の同一性は確認されていないとする。

2027年施行 暗号資産に関する金商法・資金決済法改正の概要(外部)
2026年7月15日成立・7月23日公布の改正法について、施行時期、暗号資産取引業への名称変更、兼業規制の枠組みを解説する。付随業務とそれ以外の2分類で、後者に事前届出を求める設計を整理している。

2026年金商法等改正案に基づく暗号資産に係る規制の見直しの概要と実務への影響(外部)
規制移管の全体像を扱い、暗号資産取引業者による貸付けが付随業務に位置づけられることから、貸金業規制の適用関係についても整理が進むとの見通しを示す。

金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案について(外部)
改正金商法35条の2の2第1項が列挙する付随業務6類型を条文番号つきで整理する。第3号が「顧客のために管理する暗号資産を担保とする金銭の貸付け」であることを示す。

Gold-Backed Crypto Loans Are Coming: Tether Taps Ledn for XAUT Collateral(外部)
XAU₮を担保とするローンが2026年後半に開始予定であり、金利や担保掛目は未公表であること、EUとカナダの居住者は対象外となることを伝える。

金融サービス利用者相談室における相談等の受付状況(外部)
2026年4月から6月までの受付件数を分野別に集計した資料。暗号資産等が1,374件、貸金等が669件と記載されている。

【Crypto Verse関連記事】

CryptoPawnへの金融庁警告が「貸金業法」だった構造を、より広い文脈で理解するための関連記事をご案内します。日本の暗号資産制度整備・金商法改正で新設される暗号資産担保金銭貸付の付随業務・海外の暗号資産担保ローン事例・無登録業者への警告シリーズを横断的に読むことで、「担保が暗号資産でも、貸すのが金銭なら貸金業」の意味が立体的に見えてきます。

日本の暗号資産制度整備・金商法改正

暗号資産担保ローン・レンディング

無登録業者・警告・被害者保護

日本のステーブルコイン・電子決済手段

セルフカストディ・鍵管理

【編集部後記】

一覧を眺めていて手が止まったのは、ページ冒頭の但し書きでした。掲載されているのは警告時点で無登録営業が確認できた者に限られる、だから載っていない業者が安全とは限らない——金融庁はそう先回りして書いています。

警告リストは、黒を教えてくれても白を保証しません。確かめるなら向きを変えて、登録されている側の名簿を引くしかない。使おうとしているサービスの名前を、一度そこに打ち込んでみたことはあるでしょうか。

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By山本 達也

『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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