Progmat、トークン化国債のオンチェーン・レポ取引WG設立―BlackRockやMUFG含む40超の機関が参加、2026年内の商用化目指す

Progmat、トークン化国債のオンチェーン・レポ取引WG設立―BlackRockやMUFG含む40超の機関が参加、2026年内の商用化目指す

Last Updated on 2026年5月9日 by Co-Founder/ Researcher

日本国債という巨大マーケットに、ステーブルコインとブロックチェーンが正面から接続される――そんな変化の号砲が、2026年5月8日に静かに鳴らされました。Progmatが3メガバンクやBlackRockを巻き込んで動かし始めた「トークン化国債×オンチェーン・レポ」という構想は、私たちが知る金融の決済スピードを根底から書き換える可能性を秘めています。


Progmat, Inc.(創業者兼CEO:サイトウ・タツヤ氏)は2026年5月8日、同社が議長を務めるDigital Asset Co-Creation Consortium(DCC、加盟331団体)の下に「Tokenized JGB / On-Chain Repo Working Group」を設立すると発表した。日本国債(JGB)の権利のオンチェーン管理と、ステーブルコインを現金レッグとするオンチェーン・レポ取引の商用化を、法務・会計・税務・オペレーション・テクニカルの観点から共同検討する。

キックオフは2026年5月、Reportの公表は2026年10月、TJGB発行プロジェクト立ち上げは2026年内を目標とする。背景として国債担保のレポ市場残高は2024年末で約16兆ドル(2022年比約20%増)、うち日本は約10%を占める。米国では2025年8月に米国債とUSDCを用いたオンチェーン・レポ取引が完了、2025年12月にはDTCCがDTC保管米国債のトークン化計画を発表しており、現在約339.2十億ドル規模のオンチェーン・レポ取引が執行中である。

日本のST累計発行額は3,600億円に達している。WGにはBlackRock Japan、MUFG Bank、Mizuho Bank、Sumitomo Mitsui Banking Corporation、Ava Labs、Digital Asset Holdings等が参加予定。

From: Launch of Joint Study on On-Chain Repo Transactions of Tokenized JGBs-Bringing institutional repo activity on-chain via stablecoins- | Progmat

【編集部解説】

このProgmatの発表は、単なるワーキンググループ設立のお知らせではありません。日本の金融インフラそのものを再設計する、極めて野心的なロードマップの起点と捉えるべき動きです。

まず押さえておきたいのは「なぜ今なのか」という文脈です。日本では2025年10月にJPYCが初の規制下にある円建てステーブルコインとして発行を開始し、同年11月には三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行の3メガバンクによるProgmatプラットフォーム上での共同ステーブルコイン構想(Payment Innovation Project)が、金融庁の「FinTech PoC Hub」の支援対象に選定されました。改正資金決済法のさらなる追加施行も2026年中(2026年6月頃が有力視される)とみられています。つまり、ステーブルコインという「現金レッグ」のインフラがようやく整いつつあり、次に必要となるのが優良な「担保レッグ」、すなわちトークン化国債だったわけです。

技術的なポイントを整理しましょう。従来のレポ取引はT+1(取引翌営業日決済)が標準でしたが、TJGBとステーブルコインをレンディング・プロトコル上で組み合わせると、同日中の建玉オープン・クローズ(T+0)が可能になります。借り手にとっては「イントラデイ・アルファ」、つまり1日の中で資金を回して収益機会を捕捉できるようになり、貸し手にとっては余剰ステーブルコインの安全な運用先が確保されます。資本効率の改善という意味で、機関投資家には極めて訴求力の高い設計です。

特に注目すべきは、プレスリリースが言及している「円転メリット」という日本特有の構造です。為替スワップ市場でドル調達需要が強い局面では、ヘッジファンド等の非居住者が極めて低コストで調達した円をGCレポで運用しスプレッドを稼ぐ。この取引フローが24時間365日、ブロックチェーン上で完結する世界が視野に入ってきました。日本のレポ市場は世界全体の約16兆ドルのうち約10%を占める巨大セグメントであり、ここがオンチェーン化されるインパクトは小さくないでしょう。

トークン化の手法選定にも踏み込んでおきます。プレスリリースはあえて「振替制度上のJGBを直接トークン化する方法はオンチェーンメリットが限定的」と明言しています。これは含意として、振替JGBに「紐づく権利」をトークン化する方式を念頭に置いていることを示唆します。具体的なスキーム(信託受益権型などの可能性)は今後の検討対象でしょう。既存のJGB決済インフラを破壊せず、その上にオンチェーン層を重ねるという、日本らしいレイヤード・アプローチと読めます。

参加組織の顔ぶれも重要なシグナルとなります。3メガバンク、BlackRock Japan、State Street系信託、五大法律事務所のすべて、そしてAvalanche陣営とCanton Network陣営という2大ブロックチェーンが同時に揃いました。これは単一プロジェクトというより、日本の金融エスタブリッシュメント全体が一斉に同じ方向を向いた瞬間と読み取れます。

一方で、潜在的なリスクも冷静に見ておく必要があります。レンディング・プロトコルを介する以上、スマートコントラクトの脆弱性や運用ガバナンスは新たな論点となります。ステーブルコインの取付リスクについては金融庁が「額面償還」を制度設計の根幹に据えていますが、JGBを担保とする大規模な再担保が連鎖した場合の挙動は、実装してみなければわかりません。非居住者の参加を前提とする以上、米国SECやEUのMiCA規制との接続も継続的な課題として残るはずです。

長期的な視点では、今回の動きは「ガラパゴス化を避けるための日本の選択」とも読み取れます。米国ではDTCCがDTC保管米国債のトークン化計画を進めており、本件プレスリリース時点で約3,392億ドル規模のオンチェーン・レポ取引が執行されています(出典:RWA.xyz)。グローバルな機関投資家の資金が「24時間決済可能なオンチェーン市場」へ流れ始めたとき、日本の国債市場が旧来のT+1レールしか持たなければ、流動性は静かに国外へ移っていきかねません。今回の動きは、その流出を防ぎ、むしろ日本がアジアのトークン化金融ハブになる選択肢を残すための布石と捉えるのが妥当でしょう。

2026年10月のReport公表、そして年内の発行プロジェクト立ち上げという極めてタイトなスケジュールが組まれていること自体が、関係者の本気度を物語っています。これは「未来の話」ではなく、今年中に動き始める変化なのだということを、読者の皆さんと共有しておきたいテーマです。

【用語解説】

レポ取引(Repo / Repurchase Agreement)
証券を担保に資金を貸借する取引のことだ。実質的には現金担保付の証券貸借、または買戻し条件付売買として行われ、機関投資家の短期資金調達・運用の中核をなす。担保銘柄を特定しないものを「GCレポ」、特定するものを「SCレポ」と呼ぶ。

TJGB(Tokenized JGB)
日本国債(JGB)に係る権利をブロックチェーン上のトークンとして表現したものを指す。振替制度上のJGBそのものをトークン化する方式と、JGBに紐づく権利(信託受益権など)をトークン化する方式の双方が検討対象となっている。

ステーブルコイン(Stablecoin)
法定通貨や安全資産に価値を連動させ、価格安定性を持たせた暗号資産だ。本件では取引の現金レッグとして用いられる。日本では改正資金決済法上、銀行・資金移動業者・信託会社のみが発行可能とされている。

T+0 / T+1決済
T+0は約定当日に決済が完了することを意味し、T+1は翌営業日決済を指す。従来のレポはT+1が標準だが、オンチェーン化によりT+0が実現可能となる。

イントラデイ・アルファ(Intraday Alpha)
1日のうちに資金を運用して収益を獲得する機会のことだ。決済がT+0となることで、日中のごく短時間でも資金を回す余地が生まれる。

レンディング・プロトコル(Lending Protocol)
スマートコントラクトを用いて貸借取引を自動執行する分散型金融(DeFi)アプリケーションを指す。本件では、TJGBを担保にステーブルコインを借りる(またはその逆)取引基盤として想定されている。

DeFi(Decentralized Finance、分散型金融)
中央集権的な仲介者を介さず、スマートコントラクトによって金融取引を実行する仕組みの総称である。

振替制度(Book-Entry System)
有価証券を物理的な紙ではなく、電子的な口座振替で管理する制度だ。日本のJGBは日本銀行の振替制度で管理されている。

円転メリット(円転コスト優位性)
為替スワップ市場で円を貸してドルを借りる場合の調達コストが、現物為替と比べて優位になる現象を指す。低コストで円を実質的に調達できる非居住者がGCレポで運用することで、スプレッドを得られる構造が日本特有の市場慣行として存在する。

Payment Innovation Project(PIP)
3メガバンクがProgmatプラットフォーム上で進める共同ステーブルコインの実証プロジェクトのことだ。2025年11月に金融庁の「FinTech PoC Hub」の支援対象に選定されている。

Canton Network
Digital Asset Holdings社が開発する、機関投資家向けのプライバシー保護型パブリックブロックチェーンである。DTCCの米国債トークン化計画でも採用されている。

Avalanche
Ava Labs社が開発する、サブセカンドのファイナリティ(取引確定性)とEVM互換性を持つパブリックブロックチェーンだ。Progmat STプラットフォームがAvalanche L1対応を進めており、移行完了は2026年6月末が予定されている。

MiCA規制(Markets in Crypto-Assets Regulation)
EUにおける暗号資産・ステーブルコインの包括的規制枠組みを指す。2024年から段階的に施行されており、グローバルなトークン化市場の制度設計に影響を与えている。

【参考リンク】

Progmat, Inc.(外部)
日本最大級のセキュリティトークン基盤を運営する企業。MUFGが中心となり設立し、本件WGの事務局を務める。

Digital Asset Co-Creation Consortium(DCC)(外部)
Progmatが議長を務める業界横断のコンソーシアム。331団体が加盟し、本件WGはDCC配下に設置される。

Ava Labs(Avalanche)(外部)
高スループットのパブリックブロックチェーンAvalancheを開発する企業。Progmatプラットフォームの基盤となる。

Digital Asset Holdings(Canton Network)(外部)
機関投資家向けブロックチェーンCanton Networkを運営する企業。DTCCの米国債トークン化計画にも採用されている。

Datachain, Inc.(外部)
クロスチェーン相互運用ソリューションを提供する日本企業。Progmatのマルチチェーン展開を支える。

DTCC(Depository Trust & Clearing Corporation)(外部)
米国の中央証券保管・決済機関。2025年12月にDTC保管米国債のトークン化計画を発表した。

JPYC(外部)
2025年10月に日本初の規制下にある円建てステーブルコインを発行開始したフィンテック企業。

BlackRock Japan(外部)
世界最大の資産運用会社BlackRockの日本法人。本件WGに参加予定。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(外部)
日本最大の金融グループ。Progmatの母体であり、3メガバンク共同ステーブルコイン構想の主要プレイヤー。

三井住友銀行(外部)
3メガバンクの一角。本件WG参加組織として名を連ねる。

みずほ銀行(外部)
3メガバンクの一角。Payment Innovation Projectの一翼を担う。

金融庁(FSA)(外部)
日本の金融行政を所管する行政機関。改正資金決済法に基づきステーブルコインを規制する。

RWA.xyz(外部)
リアルワールドアセット(RWA)のトークン化動向を可視化するダッシュボード。本件PR内で参照元として引用されている。

【参考記事】

Major Japanese Banks And BlackRock Join Progmat Initiative To Digitise JGB Repo Market With Instant Settlement Model(外部)
40超の組織が参加するWGの全体像と、Progmatの戦略上の位置づけを詳報した記事。

Avalanche Targets Japan’s $1.6T Bond Market With Progmat Collaboration(外部)
日本JGBレポ市場の規模(約1.6兆ドル)とT+0・24時間取引の意義を整理した記事。

Japan Is Putting Its $1.6T Repo Market on the Blockchain(外部)
DTCCの米国債トークン化(約3,300億ドル超)と日本の動きを比較分析した記事。

Japan Moves to Tokenize Government Bonds on Blockchain With Goal of 24/7 Settlement(外部)
24時間T+0決済を目指す本件と、グローバルRWAトークン化の文脈を解説した記事。

Japan Begins Digital Bond Era With Launch of Tokenized Government Debt(外部)
日本国債利回り動向と本件の決済インフラ効率化の意義を分析した記事。

Japan’s Progmat, backed by big 3 banks, plans tokenized stocks in 2026(外部)
Progmatの設立背景とトークン化株式・Tokenization Act立法に向けた動きを詳述した記事。

Progmat Migrates $2B+ of its Tokenized Securities to Avalanche(外部)
ProgmatのAvalanche L1移行計画(2026年6月末完了予定)と日本ST市場での位置づけを解説した記事。

Japan Big 3 banks’ stablecoin trial gets regulatory green light(外部)
3メガバンクのProgmatプラットフォーム上での共同ステーブルコイン構想の制度的背景を報じた記事。

FSA Weekly Review No.662 (November 10, 2025)(外部)
金融庁が「FinTech PoC Hub」の第1号案件としてPIPを採択したことを公表した公式情報。

【編集部後記】

「国債のオンチェーン化」と聞いて、どこか遠い金融機関同士の話のように感じるかもしれません。けれども、ステーブルコインで24時間動く金融市場が日本に立ち上がるとき、それは私たちの円という通貨の使われ方そのものが変わる瞬間でもあります。

皆さんは、この変化をどんな立場で迎えたいと考えますか。投資家として、技術者として、あるいは一人の生活者として。お気付きの点や違う視点があれば、ぜひ教えてください。一緒に考えていけたら嬉しいです。

——————–
※本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
 詳細は当サイトの免責事項をご確認ください。
——————–

ByTaTsu@innovaTopia

『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です