暗号資産サービス仲介業とは|2026年6月施行、誰が参入できるのか【資金決済法改正】

暗号資産サービス仲介業とは|2026年6月施行、誰が参入できるのか【資金決済法改正】

Last Updated on 2026年6月4日 by Co-Founder/ Researcher

2026年6月1日、金融庁は「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」の新制度を開始しました。電子決済手段等取引業者または暗号資産交換業者(所属業者)の委託を受け、国内で電子決済手段の売買・交換の媒介、または暗号資産の売買・交換の媒介のいずれかのみを所属業者のために業として行う場合、資金決済に関する法律にもとづく登録を受けることで業務が可能となります。電子決済手段等取引業者とは、法定通貨と連動するステーブルコインの仲介・管理等を業とするため登録を受けた者を指します。制度の根拠は資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)等で、関連内閣府令や登録申請・届出様式も公表されました。2026年5月15日には登録事前説明会が開催され、同年6月1日に概要書が公表されています。

From: 電子決済手段・暗号資産サービス仲介業を行うみなさまへ:金融庁

【編集部解説】

金融庁のお知らせは数行の短い文章ですが、その背後には日本の暗号資産・ステーブルコイン規制を一段階おし進める、大きな制度設計の転換が控えています。ここを掘り下げていきましょう。

まず押さえたいのは、この「仲介業」が何を「しない」かという点です。新制度の事業者ができるのは、利用者と所属業者を「引き合わせる(媒介する)」ことだけ。利用者の資産を預かること(預託)は禁じられています。つまり、自分で暗号資産を保管したり、交換の当事者になったりはしません。橋渡し役に徹する、軽い枠組みなのです。

この設計の肝が「所属制」と呼ばれる仕組みです。仲介業者は必ず特定の暗号資産交換業者や電子決済手段等取引業者(所属業者)に紐づき、その所属業者が指導・監督と一定の責任を担います。これは証券分野の金融商品仲介業(いわゆるIFA)とよく似た構造で、複数の専門家がその類似性を指摘しています。

なぜ、この軽い入口がつくられたのでしょうか。従来は、たとえ「紹介・媒介」だけを行いたい事業者でも、フルスペックの交換業ライセンスが事実上のハードルになっていました。新制度は、その重い扉とは別に、もう一つの小さな扉を用意したものと捉えると分かりやすいはずです。

実務面では、ゲーム事業者やウォレットアプリの提供者など、これまで暗号資産の本格事業には踏み込みにくかったプレーヤーが参入しやすくなると見込まれています。ただし、これはあくまで例示であり、誰もが無条件に参入できるわけではありません。登録の要件を満たし、所属業者の委託を受け、必要な体制を整えることが前提になります。それでも「未来に触りたい」と考える事業者にとって、参入の入口が一つ増えた意味は小さくないはずです。

一方で、この改正単体ではなく、パッケージの全体像を見ておく必要があります。今回の令和7年(2025年)資金決済法改正は、仲介業の創設に加えて、暗号資産交換業者等への「資産の国内保有命令」の導入、信託型ステーブルコインの裏付け資産運用の柔軟化、クロスボーダー収納代行への規制適用などを束ねた、複合的な制度整備でした。

特に「資産の国内保有命令」は、2022年11月に経営破綻したFTX(FTX Trading Limited)の教訓が色濃く反映されています。当時、現物取引のみを扱う事業者には資金決済法上この命令を出せないという「制度の隙間」が露呈しました。今回はその穴を塞いだわけです。規制緩和と利用者保護の強化が、同じ改正の中で同時に進んだ点が見逃せません。

長期的に見れば、これは日本がステーブルコインや暗号資産を「実用の決済・金融インフラ」として正面から制度に組み込もうとする流れの一里塚と言えるでしょう。入口を広げつつ、破綻時の安全網も張る——この両立をどう運用で機能させるかが、これからの焦点になります。

さらに視野を広げると、暗号資産をめぐる制度は「決済」の枠を超えて動き始めています。2026年4月10日、金融庁は暗号資産取引の規制を資金決済法から金融商品取引法(金商法)へ移管する法律案を国会に提出しました。暗号資産を、決済手段というより「投資対象としての金融商品」として位置づけ直し、インサイダー取引規制の創設など利用者保護を一段と強める内容です。成立すれば公布から1年以内、2027年中の施行が見込まれています。今回の仲介業はあくまで「決済・資金決済法ライン」での整備であり、その先には「投資・金商法ライン」への大きな再編が控えている——この二層構造を押さえておくと、変化の全体像がぐっと見通しやすくなります。

潜在的なリスクも見据えておきたいところです。所属制で責任の所在は明確化されますが、仲介事業者が増えれば、利用者にとっては「どこが信頼できる窓口か」を見極める目利きが一層必要になります。参入のしやすさは、玉石混交の入口が増えることと表裏一体なのですから。

「デジタルの窓口」として活動する私の立場から言えば、この制度は読者にとって遠い霞が関の話ではありません。今後、見慣れたアプリの中に暗号資産やステーブルコインを扱う機能が、少しずつ溶け込んでくるかもしれません。もちろん、実際にどこまで広がるかは事業者の登録や運用しだいで、いまはまだ起点に立った段階です。それでも、その第一歩が記されたのが2026年6月1日だった——そう捉えると、これからの動きを追う楽しみが少し増えるように思います。

【用語解説】

電子決済手段・暗号資産サービス仲介業
2026年6月1日に始まった新しい登録制の業態。所属業者の委託を受け、電子決済手段や暗号資産の売買・交換の「媒介(引き合わせ)」のみを行う。利用者財産の預託は禁止され、自ら取引の当事者にはならない。

電子決済手段
資金決済に関する法律上の概念で、法定通貨の価値と連動する、いわゆるステーブルコインなどが該当する。

電子決済手段等取引業者
法定通貨と連動するステーブルコインの仲介・管理などを業として行うために登録を受けた事業者。

暗号資産交換業者
ビットコインなどの暗号資産の売買・交換・管理を業として行うために、資金決済法上の登録を受けた事業者。

所属業者
新仲介業者が委託を受け、紐づく相手となる事業者の総称。電子決済手段等取引業者と暗号資産交換業者を指す。

所属制
仲介業者を特定の所属業者に紐づけ、その所属業者の指導・監督を通じて利用者保護を図る仕組み。証券分野の金融商品仲介業などでも採用されている。

媒介
取引の当事者同士を引き合わせ、契約成立を仲立ちする行為。当事者そのものにはならない点が、売買・交換を自ら行う交換業との違いである。

資金決済に関する法律(資金決済法)
資金移動や前払式支払手段、暗号資産・電子決済手段などのルールを定める法律。今回の新仲介業の根拠法である。

資産の国内保有命令
事業者の破綻時などに、利用者資産が国外へ流出するのを防ぎ、国内での返還を担保するために当局が出せる命令。今回の改正で資金決済法上の暗号資産交換業者等にも導入された。

FTX(FTX Trading Limited/FTX Japan)
海外を拠点に暗号資産事業を展開し、2022年11月に経営破綻した企業グループ。利用者資産保護の制度的不備を浮き彫りにし、今回の改正の背景の一つとなった。

金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」(決済WG)
金融制度のあり方を審議する金融庁の会議体の一つ。2025年1月22日に公表した報告書が、今回の制度整備の土台となった。

特定信託受益権(信託型ステーブルコイン)
信託のしくみを用いて発行されるステーブルコインに関わる権利。今回の改正で、裏付け資産の運用方法が一定の条件下で柔軟化された。

金融商品取引法(金商法)への移管
2026年4月10日に国会提出された改正法案で示された方向性。暗号資産取引の規制を資金決済法から金商法へ移し、暗号資産を投資対象の金融商品として位置づけ直す。成立すれば2027年中の施行が見込まれる。

【参考リンク】

電子決済手段・暗号資産サービス仲介業を行うみなさまへ:金融庁(外部)
新仲介業の制度概要、根拠法令、登録申請・届出様式、所属業者の登録一覧をまとめた金融庁の公式案内ページ。本記事の一次情報である。

資金決済制度等に関するワーキング・グループ報告書の公表について:金融庁(外部)
制度整備の土台となった決済WG報告書を掲載。改正の問題意識と方向性を一次情報で確認できる公式ページ。

第221回国会における金融庁関連法律案:金融庁(外部)
暗号資産規制を資金決済法から金商法へ移管する2026年提出の改正法案など、関連法律案の資料を掲載する公式ページ。

資金決済に関する法律:e-Gov 法令検索(外部)
新仲介業の根拠法である資金決済法の条文を確認できる、政府公式の法令データベースである。

【参考記事】

Column 資金決済に関する法律の一部を改正する法律(概要):GRANDIT(外部)
2025年6月13日公布(令和7年法律第66号)、信託裏付け資産は発行額の50%を上限に国債・定期預金運用可と整理。

令和8年6月施行!改正資金決済法の概要と実務対応:BUSINESS LAWYERS(外部)
新仲介業創設や資産の国内保有命令(62条の21の2等)を条文番号つきで解説。FTX事件の経緯も詳述している。

金融審議会 資金決済制度等に関するワーキング・グループ 報告:金融庁(外部)
2025年1月22日公表の一次情報。資産の国内保有命令が措置されていない制度の隙間を指摘した報告書である。

金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料:金融庁(外部)
2026年4月、暗号資産取引規制を資金決済法から金商法へ移管する方針を示した金融庁の一次資料である。

令和7年資金決済法改正の概要:有斐閣Online(外部)
改正法の内容を国内保有命令の導入や仲介業創設など5点に整理し、決済WG報告を背景として示している。

ステーブルコイン・暗号資産サービスへの扉を開く「新仲介業」:きんざいOnline(外部)
2025年6月6日成立を明記。ゲームやウォレットアプリ事業者など多様な参入への期待を展望している。

【2025年改正】電子決済手段・暗号資産サービス仲介業に関する資金決済法改正の概要:法律事務所ZeLo(外部)
所属制の意味、仲介業での利用者財産の預託禁止、外国法人の国内代表者選任などを実務目線で整理している。

【編集部後記】

ふだん使っているアプリの中に、暗号資産やステーブルコインを扱う機能が、ある日そっと現れる——そんな近い未来を、みなさんはどう感じるでしょうか。今回の新制度は、まさにその入口を広げる動きです。便利さが増す一方で、「どの窓口なら安心して任せられるか」を自分の目で見極める場面も、これから増えていくはずです。

2みなさんが新しいサービスに出会ったとき、何を判断のよりどころにしたいか、よければ聞かせてください。私もいっしょに考えていきたいと思っています。

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※本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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ByTaTsu@innovaTopia

『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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