Last Updated on 2026年4月3日 by Co-Founder/ Researcher
中東の緊張緩和への期待が、マーケットに久々の安堵をもたらしている。イスラエルメディアによるイラン停戦観測の報道をきっかけに、ビットコインは一時70,000ドル近辺まで回復し、原油価格は供給不安の後退から一時4%下落した。
From: Bitcoin jolted modestly higher on Iran ceasefire report; oil tumbles 4% – CoinDesk
【編集部解説】
今回のニュースは、ビットコインの価格変動を「暗号資産市場の内部要因」ではなく、「中東の地政学リスク」と「原油価格」というマクロ経済の変数がいかに直接的に動かしているかを示す、象徴的な出来事です。
2026年2月28日、米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃が開始されました。イランはこれに対抗し、ホルムズ海峡の封鎖を示唆。世界の原油輸送量の約20%が通過するこの海峡の封鎖リスクが現実味を帯びると、Brent原油は一時119ドル超まで上昇し、ビットコインは63,000ドル近辺まで下落しました。
今回報じられたイスラエルChannel 12の停戦観測報道は、そのような極度に緊張した局面に差し込んだ「光」です。交渉にはスティーブ・ウィトコフ氏やジャレッド・クシュナー氏の関与が報じられているが、詳細は確認されていない。報道によれば、提案には核施設の廃止や高濃縮ウラン在庫への対処、核兵器開発を放棄する保証などが含まれるとされます。ただし、正式合意として確認されたものではありません。
ただし、ここには重要な留保が必要です。今回の「停戦報道」はイスラエルのテレビ局Channel 12による単独報道であり、その情報源や信頼性は現時点では検証されていません。イランはこれまでも交渉の存在自体を繰り返し否定してきており、楽観的な見方を一足飛びにするのは危険です。その後、イラン側による否定も伝わり、ビットコインは70,000ドル近辺で不安定な推移をみせました。
市場の構造として注目すべき点があります。2024年のスポット型Bitcoin ETF承認以降、ビットコインは機関投資家の投資対象として組み込まれやすくなり、マクロ環境や他のリスク資産の値動きと連動して捉えられる場面が増えています。その結果、地政学リスクが高まった局面では株式と連動して売られ、リスクオフの流れに飲み込まれやすい構造になっています。
一方、注目すべき逆説的な動きも起きています。イラン国内ではNobitex(イランの主要暗号資産取引所)からの出金が700%急増したとの報告があり、こうした動きは、戦時下や制裁下で暗号資産が資金退避手段として使われる可能性を示唆しています。機関投資家にとっての「リスク資産」と、制裁下の市民にとっての「資産保全手段」。ビットコインはこの2つの顔を同時に持ちながら、今まさに歴史的な試練を受けています。
今後の焦点は原油価格です。一部の市場関係者の間では、原油高がインフレ再燃懸念を通じて米金融政策の緩和観測を後退させ、結果としてビットコインの上値を抑える可能性があるとの見方も出ています。逆に、中東情勢の鎮静化によって原油価格が落ち着けば、リスク資産全体のセンチメント改善につながる可能性はあります。ただし、ビットコインの具体的な上値目標を示すにはなお時期尚早です。ビットコインを動かしているのは、もはやホワイトペーパーでも半減期でもなく、中東の空の色なのです。
【用語解説】
Brent Crude(ブレント原油)
北海産の原油を指し、世界の原油価格の国際指標として広く使用されている。WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)と並ぶ代表的なベンチマーク価格であり、中東情勢の影響を特に受けやすい。
ホルムズ海峡
ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ幅約55kmの海峡。世界の原油海上輸送量の約20%が通過する要衝であり、封鎖されれば原油価格や世界経済に甚大な影響を与える。
スポット型Bitcoin ETF
実際のビットコインを裏付け資産として保有する上場投資信託。2024年1月に米国で承認・上場が実現し、BlackRockやFidelityなどの機関投資家が運用に参入。この承認以降、ビットコインは機関投資家の資金流入ルートとして注目され、他のリスク資産とあわせて語られる場面が増えた。
Channel 12(イスラエル)
イスラエルの民間テレビ局。今回の停戦観測は同局による報道として広く参照されたが、単独報道であるため慎重な確認が必要とされた。ただし単独報道は確認が必要であり、今回の停戦報道も他メディアによる裏付けが取れていない段階での発信だった。
【参考リンク】
IAEA(国際原子力機関)(外部)
核の平和利用促進と核不拡散監視を担う国際機関。イランの核問題をめぐる議論でも重要な役割を果たす。
BlackRock(外部)
世界最大の資産運用会社。Bitcoin ETF「iShares Bitcoin Trust(IBIT)」を運用し、機関投資家のビットコイン市場参入を牽引している。
Fidelity Investments(外部)
米国大手資産運用会社。Bitcoin ETF「Fidelity Wise Origin Bitcoin Fund(FBTC)」を運用するBlackRockと並ぶ主要プレイヤー。
Wintermute(外部)
ロンドン拠点の大手暗号資産マーケットメイカー。OTCヘッドのコメントが原油とビットコインの相関分析として今回の解説に引用されている。
Nobitex(外部)
イランの主要暗号資産取引所。空爆後にアウトフローが急増したとブロックチェーン分析会社が報告している。
【参考記事】
Oil and Bitcoin’s Correlation: US Iran War Impact Explained(外部)
2026年2月28日以降のビットコインと原油の相関を分析。Bitcoin ETFから38億ドルの純流出、金ETFへ160億ドルの流入を記録。Brent Crude 80ドル超が続く限りFed利下げは困難と指摘。
Bitcoin Price in the US-Iran War: Will BTC Crash or Rally? 3 Scenarios for 2026(外部)
イラン戦争後のビットコイン価格を3シナリオで分析。早期解決でBTC 75,000ドル〜80,000ドルの回復可能性と、長期化リスクを試算した記事。
How War Affects Bitcoin: Geopolitical Risk Framework 2026(外部)
イラン紛争を事例に地政学リスクと暗号資産の関係をフレームワーク化。Brent Crudeが116ドル→85ドルに急落しBTCが70,000ドル超に回復した経緯を詳述。
U.S. Negotiators Were Ill-Prepared for Serious Nuclear Negotiations with Iran(外部)
軍備管理協会による分析。ウィトコフの核技術誤認と専門家不在の交渉チームが開戦につながった可能性を詳述。停戦交渉の信頼性を測る重要な背景記事。
Trump’s team game planning for potential Iran peace talks(外部)
Axiosによる外交交渉の内幕レポート。イランの停戦・補償要求とTrumpの「賠償は論外」発言など、交渉の複雑な構造を複数の米政府関係者証言をもとに報告。
【編集部後記】
停戦観測報道の一報で、ビットコインが動き、原油が動く。私たちが目撃しているのは、暗号資産がもはや「テック界隈の話題」ではなく、地政学と金融が交差するリアルタイムの実験場になっている瞬間です。
あなたはこの新しい時代の資産の在り方を、どう捉えていますか?ぜひ一緒に考えていけたら嬉しいです。
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