Ondo Finance(ONDO)とは|RWA(現実資産)トークン化市場の構造と主力プロダクトのメカニズム【2026年版】

Last Updated on 2026年6月4日 by Co-Founder/ Researcher

ブロックチェーン技術を用いて現実世界の資産(RWA:Real World Asset)をトークン化する市場は、暗号資産セクターにおける重要なインフラストラクチャの一つとして機能しています。その中心において、米国短期国債や銀行預金を裏付けとする利回り付きトークンを提供する代表的なプロトコルがOndo Finance(オンド・ファイナンス)です。本記事では、Ondo Financeの基盤技術、主力プロダクトであるUSDYおよびOUSGの設計、法的なコンプライアンス構造、ガバナンストークンであるONDOの役割、そして2026年における伝統的金融機関との接続実証の最新動向について、客観的なデータとプロトコルの仕様に基づき解説します。

本記事の目的

本記事の目的は、Ondo Financeが構築するRWAインフラストラクチャの全体像を正確に把握するための構造的なデータを提供することです。伝統的金融(TradFi)の資産を分散型金融(DeFi)のエコシステムに統合するメカニズムを分解し、投資の推奨や将来の市場予測といった主観的な推論を完全に排除した上で、プロジェクトの技術的および法的な事実のみを整理・提示します。

記事内容

Ondo Financeは、現実資産(RWA)のトークン化に特化した金融テクノロジー企業およびDeFiプロトコルです。2021年、Goldman Sachsのデジタル資産チーム(Global Markets部門)でVice Presidentを務めたNathan Allman(ネイサン・オールマン)氏らによって設立されました。プロトコルの管理は、ケイマン諸島を拠点とする非営利団体「Ondo Foundation」が担っています。

具体的には、BlackRockのトークン化ファンド「BUIDL」をプロダクトの基礎資産として活用しているほか、J.P. Morganのブロックチェーンプラットフォーム「Kinexys(旧Onyx)」や、Mastercardの「Multi-Token Network(MTN)」との接続実証・実験に参加するなど、機関投資家向けのオンチェーン環境の構築を進めています。

2026年4月時点で、プロトコルの預かり資産規模(TVL)は$3 billion(約30億ドル)を超え、RWAカテゴリーにおける代表的なプロトコルとして観測されています。

コンプライアンス・ファーストのアーキテクチャ

Ondo Financeのインフラストラクチャにおける最大の特徴は、パブリックブロックチェーン上で展開されながらも、KYC(本人確認)およびAML(マネーロンダリング対策)の規制枠組みをプログラムレベルで適用している点です。

無許可(パーミッションレス)で誰でも流動性プールに参加できる一般的なDeFiプロトコルとは異なり、Ondo Financeの主要プロダクトの一次発行(ミント)および償還(リディーム)プロセスには、適格投資家としての確認が必須となります。スマートコントラクト上には、Allowlist(許可リスト)およびBlocklist(拒否リスト)の機能が組み込まれており、認可されていないアドレスや制裁対象のアドレスへのトークン移転をコントラクト上で制限可能な設計が実装されています。

なお、2025年11月には、米国証券取引委員会(SEC)によるOndo Financeに対する約2年間の調査が、いかなる訴追・勧告も伴わずに正式に終結したと報じられています。この事象により、米国における規制の不確実性が一定程度低減し、同社は米国市場における事業展開を本格化させています。

主力プロダクト1:USDY(US Dollar Yield Token)

USDYは、米国短期国債および銀行の要求払い預金を裏付け資産とする利回り付きトークン(Yield-bearing token)です。主に米国以外の市場における適格者およびDeFiプロトコルでの利用を想定して設計されています。

  • 裏付け資産と法的隔離構造
    USDYは、デラウェア州に設立された破産隔離ビークル(Bankruptcy-remote vehicle)である「Ondo USDY LLC」を通じて発行されます。裏付けとなる米国債は規制対象金融機関によって管理されるカストディ(保管)口座で保持され、銀行預金は複数のFDIC(連邦預金保険公社)加盟銀行に分散して管理されます。この法的構造により、万が一Ondo Finance本体が破綻した場合であっても、USDYの裏付け資産はOndo Financeの債権者から法的に保護されることを目的とした構造が採用されています。
  • FDIC(連邦預金保険公社)保険に関する重要事実
    ここで留意すべきファクトとして、FDICによる預金保険は、裏付け資産の一部を構成する「銀行預金部分」に適用される制度であるという点です。USDYトークン自体や、裏付け資産の大部分を占める米国短期国債そのものをFDICが直接保証しているわけではありません。
  • 利回り発生のメカニズム
    法定通貨に価格がペッグ(連動)され利回りを生み出さない一般的なステーブルコインとは異なり、USDYは裏付け資産から発生する実際の利回り(米国債の利息など)をトークン保有者に還元します。プロトコルは管理手数料(年率数ベースポイント)を差し引いた純利回りを、日次でトークンの価値に反映させます。
  • リベース型と非リベース型の仕様
    USDYには技術的に2つの仕様が存在します。
  1. 非リベース型(USDY): ウォレット内のトークン数量は一定のまま、時間の経過(利回りの蓄積)とともに1トークンあたりの償還価格(ドル建て価値)が上昇する設計です。
  2. リベース型(rUSDY): 1トークン=1ドルの価格を維持したまま、利回りの発生分がトークン数量の増加としてウォレット内に自動的に付与される仕組み(リベース機能)を採用しています。スマートコントラクトを介して、ユーザーはいつでも両者を等価で変換可能です。
  • 対象者の制限とジオブロック
    米国の証券法制(レギュレーションS等)を遵守するため、USDYは米国居住者および特定の制限地域からのアクセスを遮断しており、規制基準を満たした米国以外の適格者のみを対象に提供されています。

主力プロダクト2:OUSG(Ondo Short-Term US Government Treasuries Fund)

OUSGは、主に米国内の適格投資家(Qualified Purchasers)や機関投資家向けに設計されたトークン化米国債ファンドです。

  • 基礎資産へのエクスポージャー
    OUSGは、BlackRockが運用するBUIDL(BlackRock USD Institutional Digital Liquidity Fund)等の短期国債ファンドに対して直接的なエクスポージャーを持ちます。OUSGの裏付けファンドであるOndo I LPは、その資産の大部分(約99.5%)をBUIDLに投資する構造を採用しています。これにより、機関投資家はブロックチェーンのインフラを利用しながら、流動性ファンドの利回りを享受する仕組みとなっています。
  • 流動性と運用サイクル
    BUIDL本体の最低投資額が$5 millionである一方、OUSGはBUIDLの流動性とサードパーティの規制されたステーブルコイン(USDC等)を組み合わせることで、最低投資額を引き下げ、24時間365日の即時ミント・償還を実現する設計を採用しています。OUSGはアキュムレーティング型(標準)とリベース型(rOUSG)の両形式で提供されます。ただし、基盤となる伝統的金融市場の休業日や接続するステーブルコインの流動性状況によっては、即時償還が制限される場合があります。

拡張プロダクト:Ondo Global Markets(Ondo GM)

Ondo Global Marketsは、利回り付きドル資産を超えて、上場株式やETF(上場投資信託)などのトークン化された証券への米国外投資家向けアクセス基盤の提供を目指すプラットフォームです。

このシステムは、スマートコントラクトのメッセージング機能と既存の証券ブローカーディーラーの注文・清算システムとの連携を想定しています。オンチェーンでのトークン管理とオフチェーンの証券口座内の権利関係を調和させることで、ブロックチェーン上のインフラから伝統的な株式市場の流動性へアクセスするための実務的・法的な検証が進められています。商品の最終的な権利設計や利回り(配当等)の扱いは、対象市場や具体的なプロダクトの仕様に依存します。

Ondo Chain:RWA決済特化の独自L1構想

Ondo Financeは、RWA決済に特化したLayer 1ブロックチェーン「Ondo Chain」の構築を進めています。Ondo Chainは、プロトコル組み込み型のProof-of-Reserves(準備金証明)オラクル機能を備え、機関投資家向けのRWA決済インフラとして設計されています。2025年5月には、J.P. MorganのKinexysとChainlinkが、Ondo Chainのテストネット上でDvP(証券と資金の同時受け渡し)取引を実行する実証実験が完了したと報じられています。これは、J.P. Morganの決済インフラがパブリックブロックチェーンと直接相互作用した最初の事例として位置づけられています。

2026年の主要マイルストーン:Ripple・JPMorgan・Mastercardとのクロスボーダー償還

2026年5月には、Ondo Finance、J.P. Morgan(Kinexys)、Mastercard、Rippleの4社が連携し、トークン化米国債ファンドOUSGのクロスボーダー償還パイロットを完了したと公式発表されています。報道によれば、RippleがXRP Ledger上で保有するOUSGを償還し、Mastercard Multi-Token Networkが決済指示をKinexysに転送、J.P. Morganのコルレス銀行ネットワーク経由でRippleのシンガポール銀行口座に米ドルが送金されました。XRP Ledger上のオンチェーン処理は5秒以内に完了し、伝統的な銀行営業時間外での24時間決済が技術的に可能であることを実証する事例として位置づけられています。

マルチチェーン展開と流動性の管理

Ondo Financeは特定の単一ブロックチェーンに依存しない、マルチチェーン戦略を採用しています。Ethereumをプライマリーネットワークとしつつ、Solana、Aptos、Sui、Polygon、XRP Ledger、Mantleなどの複数のネットワーク上でプロダクトを展開しています。

サードパーティのクロスチェーンブリッジ(トークンを別のチェーンに転送するプロトコル)への依存は、ハッキングリスクを伴います。そのためOndo Financeは、特定のネットワーク上でトークンの供給をバーン(焼却)し、別のネットワーク上で同額をネイティブにミント(発行)するプロセス(Ondo Bridged Tokens等にみられる独自仕様)を構築し、ブリッジリスクの低減を図りながらエコシステム全体の総供給量をコントロールしています。

ONDOトークン(ガバナンストークン)の役割

ONDOは、Ondo Financeのエコシステムを管理するガバナンストークンです。2024年1月にエアドロップと共に流通を開始しました。

  • プロトコルの意思決定
    ONDOトークンの保有者は、Ondo DAO(分散型自律組織)を通じてプロトコルの将来的な方向性、新規プロダクトの追加、スマートコントラクトのアップグレード、手数料構造の変更などの重要な意思決定に対する投票権を行使します。
  • 利回りの非分配性(最重要ファクト)
    構造理解において最も重要な事実として、ONDOトークン自体は利回り付きトークンではないという点です。ONDOを保有・ステーキングしているだけで、USDYやOUSGの裏付け資産から生じる米国債の利息や収益の分配を受け取ることはできません。ONDOトークンの主たる機能は、プロトコル全体のガバナンスへの参加権(投票権)に限定されています。

FAQ

Q: USDYは一般的なステーブルコインと同じ仕組みですか?
A: 異なります。USDCやUSDTのような一般的なステーブルコインが主に「1トークン=1ドル」の価値を維持するように設計され、ユーザーに対して利回りを生み出さないのに対し、USDYは裏付け資産(米国短期国債等)の利回りに応じて価値が上昇(または数量が増加)する「利回り付きトークン(トークン化された債券)」に分類されます。

Q: ONDOトークンを購入・保有すれば米国債の利回りを得られますか?
A: 得られません。ONDOはOndo Financeプロトコルのガバナンストークンであり、米国債の利回りを保有者に分配する機能はスマートコントラクト上に存在しません。利回りを得るためのプロダクトは、USDYやOUSGとして別途個別に設計・発行されています。

Q: OUSGとUSDYの構造的な違いは何ですか?
A: 主な違いは対象となる投資家層と法的な提供枠組みです。OUSGは米国の厳格な適格投資家基準(Qualified Purchasers)を満たす機関投資家向けに特化して設計されています。一方、USDYは米国の証券法制の対象外となる米国以外の適格個人・法人向けに設計されており、より広範なDeFiプロトコルなどでの流通が想定されています。

Q: BlackRockはOndo Financeに直接出資していますか?
A: 一般的な報道においては、BlackRockはOndo Financeへの直接的な出資者ではなく、BUIDLファンドという形でOUSGの基礎資産を提供している関係性であると説明されています。両者の関係は出資関係ではなく、機関投資家向けRWAインフラとしてのプロダクト連携が中心です。

Q: 今後、Ondo Financeの市場シェアやONDOトークンの価格は上昇しますか?
A: 確実なデータがないため、将来の市場シェアや価格動向については「わからない」と回答します。各国の金融規制の変更、伝統的金融機関のブロックチェーン採用速度、他のRWAプロジェクトとの技術的・シェア競争など、予測不能な変数が多数存在するため、将来の動向を確定的に断定することは不可能です。

まとめ:構造理解のためのフレームワーク

Ondo Financeのエコシステムを構成する各プロダクトの構造的差異は、以下のフレームワークで整理されます。

プロダクト / トークン裏付け資産・機能対象者・アクセス制限利回り分配の有無
USDY / rUSDY米国短期国債、銀行要求払い預金米国以外の適格投資家(米国居住者は不可)あり(債券等の利回りに連動)
OUSG / rOUSG短期国債ファンド(BlackRock BUIDL等)米国内の適格投資家・機関投資家あり(ファンドの利回りに連動)
Ondo GMトークン化株式・ETFへのアクセス基盤米国外投資家・規制に準拠した許可制商品設計による
Ondo ChainRWA決済特化のL1ブロックチェーン機関投資家向け決済インフラプロトコル機能
ONDOガバナンス権(プロトコルの方向性決定)制限なし(暗号資産取引所での流通)なし(利回り分配機能は持たない)

Crypto Verseからのメッセージ

RWA(現実資産)のトークン化は、伝統的金融の厳密なコンプライアンス要件とブロックチェーンの技術的基盤が交差する複雑な領域です。Ondo Financeのアーキテクチャは、オンチェーンのスマートコントラクト技術そのものの優秀さ以上に、オフチェーンにおける法的枠組みの構築(破産隔離ビークルの設立や独立したカストディ口座による資産分離)がプロトコルの信頼性を担保する上でいかに重要であるかを示しています。エコシステムの表面的な預かり資産規模(TVL)だけでなく、裏付け資産の監査体制や法的保護のメカニズムを構造的に理解することが、Web3における客観的なリスク評価の基本となります。

データ参照元・出典

本記事のデータ、仕様、および法的構造は、以下の一次情報源および公式開示資料に基づいています。

※本記事に記載されている仕様および接続実績は、2026年6月時点の観測データに基づくものです。

重要な注記

本記事に記載されたスマートコントラクトの仕様、提供されるプロダクトの対象地域、および関連する法的枠組みは、プロトコルのガバナンス投票や各国における金融規制の変更により、予告なく変更される可能性があります。特に米国における暗号資産および証券規制の動向は、RWAプロジェクトの運営構造に直接的な影響を与える要素となります。

本記事はOndo Financeの個別プロトコル解説に焦点を当てたRWA領域の個別事例記事です。RWA(現実資産トークン化)領域全体の俯瞰(オフチェーン法的枠組み・オラクル・オンチェーン台帳の3層アーキテクチャ、ステーブルコインとの構造的接続)については「RWA(現実資産のトークン化)とは?」記事、トークン化米国債の市場構造と日本投資家の実務論点については「米国債をオンチェーンで保有する時代。RWAトークン化の構造と日本投資家の実務論点」記事を、関連記事リストよりご参照ください。

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ByCo-Founder/ Researcher

2015年、ITエンジニアリングの領域から暗号資産(Cryptocurrency)の世界へ。

当初、私の網膜を焼いたのは、証券市場には存在しない「眠らないマーケット」の衝撃でした。CEX(中央集権取引所)に渦巻いていた当時の熱狂とカオスは、単なる投機ではなく、次なる時代の胎動そのものでした。

やがて技術はDEX、そしてDeFiへと進化し、マネーは「プログラム可能な金融」へと昇華する。その過程で私が魅せられたのは、コードが自律的に経済圏を構築する「自律分散システム」の構造的な美しさです。

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