Last Updated on 2026年6月4日 by Co-Founder/ Researcher
5月31日時点で、ビットコインは7万3000ドル前後で推移している。MN Trading Capital 創業者のマイケル・ファン・デ・ポッペ氏は土曜日のX投稿で、現在の水準を維持できなければ6万5000ドル未満で買いを入れると述べた。CoinMarketCap によると、ビットコインは2月初旬に年初来安値の6万ドルをつけた後、記事公開時点で7万3873ドルまで回復している。ファン・デ・ポッペ氏は7万1000ドル付近を重要なサポートとし、新たな安値は想定していないとした。
現在の水準を維持すれば7万6600ドルまで上昇しうるとも述べた。ピーター・ブラント氏は3月、6万ドルが2026年の最安値とは限らず、9月か10月に再試しうると予測した。ティモシー・ピーターソン氏は7月最終週までに天井をつけると述べた。現物ビットコインETFは10営業日連続で資金が流出し、5月15日以降の純流出額は29億7000万ドルを超え、純資産総額は1042億9000万ドルから941億7000万ドルへ減少した。
From: Bitcoin is at ‘pivotal level’ as $65K downside risk looms: Analyst
【編集部解説】
ビットコインが7万ドル台前半でもみ合うなか、一人のアナリストの「重要な節目」という言葉が注目を集めています。なぜ今、この一言が記事になるのでしょうか。それは、相場が「上にも下にも動きうる均衡点」にあり、ここでの値動きが今後数カ月の流れを左右しかねないからです。
まず、専門用語を少し整理させてください。記事で繰り返し登場する「サポート(支持線)」とは、価格が下げ止まりやすいとされる水準のことです。マイケル・ファン・デ・ポッペ氏が挙げる7万1000ドル付近がそれにあたります。逆に「レジスタンス(抵抗線)」は上値が抑えられやすい水準で、ここを上抜けると一段の上昇につながりやすいとされます。テクニカル分析は、こうした節目を手がかりに値動きを読む手法です。
ファン・デ・ポッペ氏の見立てには、強気と慎重さが同居しています。7万1000ドルを守れなければ6万5000ドル割れもあるとしながら、それを「投げ売り」ではなく「買い場」と位置づけている点が特徴的です。さらに、現値を維持して7万6600ドルを超えれば「アルトコインの夏」が来るとも語っています。つまり、下落シナリオすら仕込みの機会と捉える、相場に踏みとどまる姿勢がうかがえます。
一方で、見方が一枚岩でない点も見逃せません。ベテランのピーター・ブラント氏は、2月の6万ドルが底とは限らず、秋口に再試しもありうると慎重です。エコノミストのティモシー・ピーターソン氏は、夏にかけてのじり高を見つつ7月で頭打ちと予測します。同じ相場を見ても、時間軸と着眼点が違えば結論は分かれる。ここに、相場予測の本質的な難しさが表れています。
ここで、参照元の記事があまり踏み込んでいない「外側の文脈」を補っておきます。今回のビットコインの軟調は、それ単独で起きているわけではありません。米労働省が発表した4月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.8%の上昇となり、個人消費支出(PCE)物価指数も約3年ぶりの高い伸びを示したことで、利下げ観測が後退しました。同じ時期にS&P500種株価指数はAI関連株や半導体・メモリー株に牽引されて最高値圏にあり、投資家の資金がそちらへ向かっていたと報じられています。リスクを避けたというより、より旬な「別のリスク」に資金が移ったと読む向きもあります。
ETFの資金フローも、この文脈で見ると解像度が上がります。記事は10営業日連続の流出を「底値圏が終盤に差しかかっているサイン」とする分析を紹介していますが、見方は割れます。現物ビットコインETFの純資産は5月15日時点で1000億ドルを超えていましたが、5月末には約941億7000万ドルへ減少しました。それでも10営業日で約29億7000万ドルという流出額は、純資産全体に対して約3%程度の規模にとどまります。流出は事実でも、狼狽売りというより、AI・半導体株など他のリスク資産への資金の再配分とみる向きもあります。
では、このニュースは私たちに何を示しているのでしょうか。ポジティブに見れば、押し目を待つ買い手の存在と、上抜け時の「アルトコインの夏」という期待が相場の下支えになりえます。一方の潜在リスクは、ETFという「制度化された資金の蛇口」が細った状態が長引けば、価格の上値が重くなりかねない点にあります。ビットコインがもはや一部の愛好家だけの資産ではなく、株式やマクロ環境と連動しやすい金融商品になったことの裏返しでもあります。
長期の視点で押さえておきたいのは、価格の上下そのものより、その「つながり方」の変化です。ビットコインの値動きが金利・株式・地政学との結びつきを強めているいま、相場を読む力とは、チャートの節目だけでなく世界経済全体を俯瞰する力でもあります。「未来を知りたい、触りたい、関わりたい」と願う読者の皆さんにとって、今回の局面は、暗号資産が世界の金融システムに組み込まれていく過程を観察できる、またとない教材なのではないかと考えています。
【用語解説】
サポート(支持線)
チャート上で価格が下げ止まりやすいとされる水準。買い注文が集まりやすく、相場の「下値の目安」となる。記事では7万1000ドル付近がこれにあたる。
レジスタンス(抵抗線)
価格の上昇が抑えられやすいとされる水準。売り注文が出やすく、ここを上抜けると一段の上昇につながりやすいとされる。
テクニカル分析
過去の価格や出来高の動きをチャートから読み解き、今後の値動きを予測する手法。サポートやレジスタンスといった節目を手がかりに判断する。
現物ビットコインETF(スポットETF)
ビットコインそのものを裏付け資産とする上場投資信託。証券口座を通じて売買でき、機関投資家の参入経路となっている。資金の流入・流出は市場心理を映す指標とされる。
アルトコインの夏(アルトシーズン)
ビットコイン以外の暗号資産(アルトコイン)が一斉に上昇する相場局面を指す俗称。ビットコインの上昇が一服した後に資金が流入して起こるとされる。
利下げ観測
中央銀行が政策金利を引き下げるとの市場の見通し。金利が下がると株式や暗号資産などのリスク資産に資金が向かいやすいとされる。インフレ率が高止まりすると、この観測は後退しやすい。
【参考リンク】
CoinMarketCap(外部)
ビットコインなど暗号資産の価格や時価総額を集計・公開する代表的なデータ提供サイト。本記事中の価格データの根拠となっている。
MN Fund(マイケル・ファン・デ・ポッペ氏のグループ)(外部)
ファン・デ・ポッペ氏が設立した暗号資産事業グループの公式サイト。トレーディングや投資戦略に関する情報を発信している。
Santiment(外部)
オンチェーンやSNSのデータをもとに暗号資産市場を分析する企業。2016年設立で、機関投資家から個人まで幅広く利用される。
【参考記事】
US Bitcoin ETFs see $2.8B in outflows during record nine-day streak(外部)
米現物ビットコインETFが約28億ドル流出し上場以来最長の連続流出に。4月インフレ率3.8%や株高を背景に資金再配分との見方を示す。
BlackRock IBIT outflows Bitcoin as US spot ETFs see $2B drain(外部)
米現物ビットコインETFが2週間で20億ドル超流出した一方、運用資産は1000億ドル超で流出は全体の約2%にとどまると指摘する。
Spot Bitcoin ETFs see record 10-day outflow streak, analyst calls it ‘contrarian indicator’(外部)
現物ビットコインETFが10営業日連続で計29億7000万ドル超を流出。アナリストは底値圏の終盤を示す逆張り指標と解釈している。
Bitcoin ETF outflows reach record nine-day streak as investors pull $2.8 billion(外部)
9営業日連続で約28億ドルが流出し2024年の上場以来最長に。同期間にBTCは約8万ドルから7万3000ドルへ下落したと伝える。
Spot bitcoin ETFs shed $1.26 billion in worst week since late January as ether funds see 10-day outflow streak(外部)
現物ビットコインETFが週間12億6000万ドル流出と1月下旬以来最大に。イーサETFも連続流出し市場全体に売り圧力が広がる。
Consumer Price Index Summary – 2026 M04 Results(米労働省統計局)(外部)
2026年4月の米消費者物価指数(CPI)が前年比3.8%上昇したことを示す公式統計。本文のインフレ数値の根拠。
Key US inflation measure posts largest annual increase in three years(外部)
4月のPCE物価指数が約3年ぶりの大きな伸びとなり、FRBの利下げ余地が狭まったと報じる。
【Crypto Verse 関連解説記事】
本記事のビットコイン市場分析・ETF資金フローの構造的背景をより深く理解するための、Crypto Verseの関連解説記事をご案内します。
- Bitcoin(ビットコイン)とは?2008年から続く中央銀行への問いと、デジタルゴールドの構造的価値
→ 本記事の相場動向の対象であるBitcoinの基礎概念・誕生背景・「デジタルゴールド」としての構造的価値を解説した基礎記事です。 - Bitcoinの不変性:技術的事実から理解する「実質的な改ざん困難性」〖2026年版〗
→ 本記事のBitcoinが金融商品として制度化される過程で価値を維持し続ける根拠となる、技術的な改ざん困難性とコンセンサスメカニズムを解剖した記事です。 - 企業のビットコイントレジャリー戦略─2026年の現実と、日本企業が知るべき「保管」という技術
→ 本記事のETF資金フローと並行する、企業による直接的なBitcoin保有戦略(トレジャリー戦略)を解説。機関投資家のBitcoin需要の構造的背景を理解できます。 - ビットコインセルフカストディの技術的本質:UTXOモデル・マルチシグ・プライバシー保護【2026年最新版】
→ 本記事のETFという「制度化された保有経路」とは対照的な、自己主権型の保有方法(セルフカストディ)の技術解説。両者のトレードオフを構造的に理解できます。 - ステーブルコインの仕組みと役割:Web3経済を支える「安定」のインフラ
→ 本記事のBitcoin相場と対照的に、価格安定性を設計目標とするステーブルコインの構造を解説。Bitcoinとステーブルコインの役割分担を理解できます。 - CLARITY法が頓挫すれば中国が金融の覇権を握る─ルミス上院議員が警告、JPMorganは反対
→ 本記事のBitcoin ETF資金フローに影響を与え得る、米国の暗号資産規制(CLARITY法)の最新動向と地政学的論点を解説。
【編集部後記】
正直に言うと、私自身、相場の数字を前にすると「上がるのか、下がるのか」という二択に気持ちが引っ張られてしまいます。でも今回の記事を整理していて、いちばん面白かったのは価格そのものよりも、ビットコインが株価やインフレ、ETFの資金フローと「どうつながっているか」という部分でした。下落リスクの裏に「買い場」を見る人がいて、流出の数字に「底が近い」と読む人がいる。同じ事実から、これだけ違う物語が立ち上がるのですね。
どの予想が当たるかは、正直なところ私にも分かりません。それでも、こうした局面をリアルタイムで眺められること自体が、未来に関わる醍醐味なのだと思います。次に価格が大きく動いたとき、その背景にある「世界のつながり」を一緒に読み解けたら、これほど嬉しいことはありません。また、このテーマで皆さんとお会いできればと思います。
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