CLARITY法案、来週にも上院マークアップか — Coinbase幹部カルバート氏がConsensus 2026で予測

CLARITY法案、来週にも上院マークアップか — Coinbase幹部カルバート氏がConsensus 2026で予測

Last Updated on 2026年5月8日 by Co-Founder/ Researcher

2026年5月8日、Coinbaseの米国政策担当バイスプレジデントであるカラ・カルバート氏は、フロリダ州マイアミで開催された暗号資産業界カンファレンス「Consensus 2026」において、CLARITY法案のマークアップが米国上院銀行委員会で早ければ来週にも実施される可能性があると述べた。

同法案は上院通過に60票を必要とし、超党派の支持が条件となる。HarrisXが木曜日に発表した調査では、有権者の70%が米国は明確な暗号資産関連法をすでに成立させているべきだったと回答し、62%が米国がデジタル金融のグローバルルールを設定することは重要だと答えた。同法案は1月にCoinbaseが現行案を支持できないと表明したことで停滞していた。カルバート氏は機関投資家の導入の障壁として一貫性のある税制の欠如を挙げ、IRSが1099-DAフォームによりブローカーに対象デジタル資産の売却・交換報告を義務づけている点に言及した。3月にはマックス・ミラー下院議員とスティーブン・ホースフォード下院議員によりDigital Asset PARITY Actが提出されている。

From: CLARITY Act markup could happen as early as next week: Coinbase exec

【編集部解説】

CLARITY法案(Digital Asset Market Clarity Act)は、米国の暗号資産業界が長年待ち望んできた市場構造法案です。下院は2025年7月17日に294対134という超党派の賛成で可決済みですが、上院での審議が約1年にわたり停滞してきました。その膠着状態に、今ようやく光が差し始めています。

ここで重要な専門用語を整理しておきましょう。「マークアップ(Markup)」とは、米議会の委員会が法案の条文を逐条検討し、修正・採決する手続きのことです。これを通過しなければ本会議審議には進めず、いわば法案の生命線を握る関門と言えます。Coinbase幹部のカルバート氏が「来週」と予測する背景には、上院銀行委員会のティム・スコット委員長(共和党)自身が4月末から5月のマークアップ実施に意欲を示してきた経緯があります。ただし上院銀行委員会の公式日程として確定しているわけではなく、現時点では関係者の見通しという位置づけです。

膠着の最大の原因だったのが、ステーブルコインの利回り規定でした。銀行業界は「預金の流出」を懸念し、暗号資産業界は「ユーザー報酬プログラムの維持」を主張。この対立は、2026年5月初旬にティム・ティリス上院議員(共和党)とアンジェラ・アルソブルックス上院議員(民主党)が妥協案を発表したことで、ようやく解消の道筋がつきました。妥協案は「銀行預金と経済的・機能的に同等の利回り」は禁止する一方、「実際の利用に基づく報酬プログラム」は認める内容で、Coinbase CEOのブライアン・アームストロング氏もX上で前向きに反応したと複数メディアが伝えています。

なぜこの法案が重要なのでしょうか。CLARITY法案の核心は、デジタル資産に対するSEC(証券取引委員会)とCFTC(商品先物取引委員会)の管轄をはっきりと線引きすることにあります。「デジタル・コモディティ」はCFTCの管轄、投資契約に該当する資産はSECの管轄、という整理です。この曖昧さこそが、過去数年間にわたり米国の機関投資家がクリプト市場への本格参入を躊躇してきた根本原因でした。

カルバート氏が「機関投資家にとっては税制の方が市場構造法より大きな問題」と発言した点は、見逃せない論点です。記事中で言及されている1099-DAフォームは、IRSが2026年以降の取引について暗号資産ブローカーに対し、対象デジタル資産の売却・交換を報告させるための税務書類です。実務上は少額取引にも報告義務が及ぶ場面が生じ、コーヒー1杯分のステーブルコイン決済まで報告対象となりうる構造が、業界からの批判を招いています。

この税務負担を緩和する受け皿として位置づけられているのが、Digital Asset PARITY法案です。なお原文では「3月に提出」とありますが、正確には2025年12月に当初版が公表され、2026年3月26日に改訂版が再提出されたという経緯があります。同法案には、規制対象ステーブルコインの少額決済(200ドル未満)を非課税扱いにする条項や、ステーキング・マイニング報酬の最大5年間の課税繰延、伝統的金融と同様のウォッシュセール規則の適用などが盛り込まれています。

ポジティブな側面として、規制の明確化はBitcoinやEthereumのスポット市場、カストディ業務、DeFiプロトコル、開発者の法的地位まで広範な領域に「予見可能性」をもたらす可能性があります。HarrisXの世論調査が示す70%という有権者の支持率は、もはやクリプト規制が一部の関心事ではなく、米国の競争力を測る指標として認識されつつあることを示唆しています。

一方で潜在リスクも残ります。法案にはオープンソース開発者の法的保護、DeFi規制、政府高官のクリプト事業利益に関する倫理関連の論点など、未解決の課題が複数あります。特に倫理関連の議論はトランプ大統領一族のクリプト事業を念頭に置いたものとも報じられ、政治的な火種となる可能性が指摘されています。さらに、Polymarketなどの予測市場では、2026年中の成立確率が1月時点の46%付近から、5月初旬の妥協案発表後には55%前後へ持ち直し、直近ではさらに68%前後まで上昇しています。それでも5月のマークアップを逃せば、11月の中間選挙を控えた政治情勢の中で「凍結」リスクが急速に高まると分析されています。

長期的な視点で見れば、この法案の成否は単なる米国国内法の問題にとどまりません。62%の有権者が「米国がデジタル金融のグローバルルールを設定することは重要」と回答した事実が示すように、これは欧州のMiCA規制、シンガポールやUAEの先行する規制フレームワークと並ぶ「グローバルスタンダード競争」の一場面でもあります。日本の暗号資産市場や、円建てステーブルコインの設計、Web3企業の海外展開戦略にも、間接的に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。

「未来の金融インフラがどの国の規制思想の上に構築されるか」——この記事はその分岐点に立つワシントンの動きを伝える、見過ごせない一報です。

【用語解説】

CLARITY法案(Digital Asset Market Clarity Act)
米国で審議中のデジタル資産市場構造法案。SECとCFTCの管轄を明確に区分し、暗号資産業界に法的予見可能性をもたらすことを目的としている。下院は2025年7月17日に294対134で可決済み。

マークアップ(Markup)
米議会の委員会で行われる法案の逐条審議および修正・採決手続きのこと。本会議へ進むための必須プロセスであり、法案成立への重要な関門と位置づけられる。

上院銀行委員会(Senate Banking Committee)
米国上院に設置されている常任委員会の一つ。金融、住宅、都市問題を所管し、暗号資産関連法案の主要な審議の場となっている。現在の委員長はティム・スコット上院議員。

SEC(証券取引委員会)/CFTC(商品先物取引委員会)
SECは有価証券、CFTCは商品先物・デリバティブ市場を所管する米国の連邦規制当局。デジタル資産がどちらの管轄に属するかが長年の論争点となっている。

ステーブルコイン利回り(Stablecoin Yield)
ステーブルコインの保有者に対して支払われる利息や報酬のこと。銀行預金との競合性が指摘され、CLARITY法案における最大の論点となっていた。

1099-DAフォーム
米国IRS(内国歳入庁)が定める、デジタル資産取引専用の税務報告書類。暗号資産ブローカーが対象デジタル資産の売却・交換情報をIRSへ報告する際に用いる。

Digital Asset PARITY法案
正式名称はDigital Asset Protection, Accountability, Regulation, Innovation, Taxation, and Yields Act。デジタル資産の課税ルール明確化を目指す超党派法案。少額ステーブルコイン決済の非課税化、ステーキング報酬の課税繰延などを盛り込んでいる。

ウォッシュセール規則(Wash Sale Rule)
損失計上目的で売却した直後に同一銘柄を買い戻す取引を制限する税法ルール。従来は証券のみに適用されていたが、PARITY法案ではデジタル資産への拡張が提案されている。

DeFi(分散型金融)
ブロックチェーン上のスマートコントラクトを用いて、銀行など中央集権的な仲介者を介さずに金融サービスを提供する仕組みの総称。

Consensus 2026
CoinDeskが主催する世界最大級の暗号資産業界カンファレンス。2026年はフロリダ州マイアミで開催され、業界リーダー、規制当局者、議員らが集結する。

【参考リンク】

Cointelegraph 公式サイト(外部)
ブロックチェーン・暗号資産・フィンテック領域を専門とする国際的なオンラインメディア。

米国上院銀行委員会 公式サイト(外部)
CLARITY法案を審議する上院常任委員会。法案進捗、議員声明、公聴会情報などを公開している。

HarrisX 公式サイト(外部)
米国の世論調査・市場調査会社。CLARITY法案に関する有権者調査の実施主体である。

Consensus 2026(CoinDesk主催)(外部)
記事中の発言が行われたカンファレンスの公式ページ。アジェンダや登壇者情報を確認できる。

Congress.gov – H.R.3633(CLARITY Act of 2025)(外部)
米国議会公式サイトに掲載されたCLARITY法案の正式な条文ページ。

スティーブン・ホースフォード下院議員 公式サイト(外部)
PARITY法案の共同提出者(民主党側)。同法案の趣旨説明や議員プレスリリースを掲載。

マックス・ミラー下院議員 公式サイト(外部)
PARITY法案の共同提出者(共和党側)。同法案関連の声明を発信している。

Internal Revenue Service(IRS)公式サイト(外部)
米国内国歳入庁。1099-DAフォームをはじめとするデジタル資産税務報告のルールを所管する。

Polymarket – CLARITY Act 2026年成立予測ページ(外部)
CLARITY法案の2026年成立確率をリアルタイムで取引する予測市場ページ。

【参考記事】

Coinbase says deal reached on key provision of crypto bill(Reuters)(外部)
2026年5月2日付。Coinbaseがステーブルコイン利回り規定の重要条項で合意に達したと報じた一次的報道。

US Senate committee delays crypto bill after opposition from Coinbase CEO(Reuters)(外部)
2026年1月15日付。Armstrong氏の反対表明後に上院委員会がマークアップを延期した経緯を伝える一次報道。

Coinbase Backed Clarity Act Advances: Tim Scott Eyeing Summer(Yahoo Finance)(外部)
下院294対134の超党派可決と、Polymarket確率の推移を整理した分析記事。

U.S. senator holding cards on Clarity Act’s next move says it’s ready to get to hearing(CoinDesk)(外部)
2026年4月29日付。ティリス上院議員のマークアップ進行発言と5月中旬公聴会開催の可能性、政治カレンダーの逼迫を報じる。

Rep. Steven Horsford pitches PARITY Act as ‘durable floor’ for crypto tax at Consensus Miami(CoinDesk)(外部)
2026年5月5日付。Consensus Miamiでホースフォード下院議員がPARITY法案の主要条項を解説した。

Chairman Scott Highlights Momentum for CLARITY Act(米国上院銀行委員会)(外部)
ティム・スコット委員長が5月の超党派マークアップ実施を望むと公式発言した一次資料。共和党所属委員13名全員の賛同を目指す姿勢を表明。

Final regulations and related IRS guidance for reporting by brokers on sales and exchanges of digital assets(IRS)(外部)
1099-DAフォームによるデジタル資産報告制度の最終規則とIRS公式ガイダンスを掲載した一次資料。

【編集部後記】

ワシントンの法案審議は、一見すると遠い世界の出来事に映るかもしれません。けれども、CLARITY法案の行方は、私たちが日常で使うステーブルコイン決済や、Web3サービスの設計、円建てトークンの未来にまで波紋を広げていく可能性があります。

みなさんは、暗号資産がインフラとして社会に組み込まれていく未来を、どんな姿で思い描いていますか。グローバルなルール形成の現場を一緒に見届けていきたいと思っています。

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※本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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ByTaTsu@innovaTopia

『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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