Ondo・JPMorgan・Mastercard・Ripple、トークン化米国債の初の国際クロスバンク償還を実証─XRPL資産処理は5秒未満

Ondo・JPMorgan・Mastercard・Ripple、トークン化米国債の初の国際クロスバンク償還を実証─XRPL資産処理は5秒未満

Last Updated on 2026年5月8日 by Co-Founder/ Researcher

Ondo Financeは2026年5月6日、Kinexys by J.P. Morgan、Mastercard、Rippleとの協業により、トークン化された米国債ファンドのクロスボーダー・クロスバンク償還をニアリアルタイムで初めて完了したと発表した。本パイロットでは、RippleがXRP Ledger(XRPL)上で保有するOndo Short-Term U.S. Government Treasuries(OUSG)の一部を償還し、法定通貨での決済はMastercard Multi-Token Network(MTN)を介して起動された。

指示はKinexys by J.P. Morganへルーティングされ、KinexysはOndoのブロックチェーン預金口座から引き落とし、コルレス銀行ネットワークを通じてシンガポールにあるRippleの銀行口座へ米ドル資金を決済した。XRPLは資産側の処理を5秒以内に完了した。本件は、グローバル金融機関の間で行われたこの種の取引としては初の事例である。

From: 文献リンクOndo, Kinexys by J.P. Morgan, Mastercard, and Ripple Complete First Cross-Border, Cross-Bank Redemption of Tokenized U.S. Treasuries

【編集部解説】

今回のパイロットの本質は、「パブリックブロックチェーン」と「銀行の決済レール」という、これまで分断されてきた2つの世界を1本の取引フローとして接続した点にあります。これまでトークン化資産の償還には、電信送金、手作業、限られた銀行営業時間といった伝統的なボトルネックが残っていました。それが今回、ブロックチェーン上での資産動作が、そのまま法定通貨の国際送金を起動するというモデルとして実証されたわけです。

注目すべきは取引のスピード感です。XRP Ledger上での資産側の処理はわずか5秒未満で完了したと各社は説明しています。なお、これは銀行間決済全体の所要時間ではなく、ブロックチェーン上での資産処理に要した時間である点には留意が必要です。米ドルの最終受取地はシンガポールにあるRippleの口座であり、米国時間の銀行営業時間に縛られずに完結したことになります。

このアーキテクチャを支えているのが、Mastercard Multi-Token Network(MTN)の「相互運用ハブ」としての役割です。オンチェーン資産と従来の法定通貨をつなぐ翻訳機のように振る舞い、伝統的金融機関がオンチェーン取引に参加できる回線を提供しています。「Mastercard」と聞くとカード決済のイメージが強いと思いますが、すでに同社は機関間決済のレイヤーへ深く踏み込んでいるのです。

文脈を補足すると、JPMorganのKinexysは2025年5月にChainlinkとOndoと連携し、Ondo Chainテストネット上でDelivery-versus-Payment取引を実行しています。これがJPMorganの決済インフラがパブリックブロックチェーンと直接対話した初の事例でした。今回はそれをさらに進め、コルレス銀行ネットワーク経由で「クロスボーダー法定通貨決済」の側面を加えた格好です。

市場規模の観点も外せません。トークン化された米国債の発行残高は2026年2月11日に初めて100億ドルを突破し、4月初旬時点で約128.8億ドル、15ヶ月で225%の伸びを記録しました(TheStreet、Yahoo Finance報道)。RWA(実物資産トークン化)市場全体は、複数報道の集計によれば2025年初頭の54.2億ドルから2026年第1四半期末には193億ドルへ拡大し、256.7%の急成長を示したとされています(一部推計では4月時点で276億ドルに達するとの見方もあります)。集計元によって数値に幅がある点はご留意ください。一方で、RWA.xyzによれば米国債のトークン化残高は約150億ドル規模で、30兆ドルとされる米国債市場全体から見れば、まだ「実験段階」と言える水準です。

ポジティブな側面として、24時間365日稼働する金融市場が現実味を帯びてきたことが挙げられます。アジアの機関投資家が日曜の夜にニューヨークの国債を償還し、即座に手元へドルを着金させる──そんな光景が技術的には可能になりつつあります。Kinexysはすでに3兆ドル超の取引を処理した実績があり、決して未熟なインフラではありません。

一方、潜在的なリスクも見据えるべきでしょう。OUSGは適格投資家と適格購入者にのみ提供される証券性のある商品で、米国証券法の登録を経ていません。したがって、誰もが自由にアクセスできる「DeFi的な民主化」とは性格が異なります。むしろ機関投資家向けの効率化が先行し、規制と適格性の壁は維持される構図です。また、片側がパブリックチェーン、もう片側が銀行レールというハイブリッド設計は、利便性と規制適合性を両立させる現実解ですが、「真の意味でのオンチェーン決済」とは別物である点も冷静に押さえておきたいところです。

規制への影響にも触れておきます。今週、DTCC(預託信託・決済機関)が今年後半にトークン化サービスを立ち上げると発表しており、Nasdaqもトークン化株式・ETF取引に向けた構想を進めていると報じられています。米国の伝統的金融インフラそのものがトークン化へ傾斜し始めており、今回のパイロットはその大潮流の一部として位置付けられます。

長期的に見れば、これは「Tech for Human Evolution」の典型例です。決済が時間と国境から解放されるということは、資本の流動性そのものが進化することを意味します。私たちが当たり前だと思ってきた「銀行が閉まる時間がある」という前提は、近い将来、過去の話になるかもしれません。今回のパイロットは小さな一歩に見えて、世界の金融が「常時稼働の神経網」へ近づいていく分岐点として記憶されるでしょう。

【用語解説】

トークン化された米国債(Tokenized U.S. Treasuries)
米国財務省が発行する国債を、ブロックチェーン上で取引可能なデジタルトークンとして表現したもの。従来の証券保管振替制度を経由せず、24時間取引や即時決済が可能になる。

OUSG(Ondo Short-Term U.S. Government Treasuries)
Ondo Financeが提供する短期米国債のトークン化ファンド。米国の適格投資家および適格購入者のみがアクセスできる機関投資家向け商品である。

XRP Ledger(XRPL)
Rippleが開発を主導するパブリックブロックチェーン。決済処理の高速性で知られ、本パイロットでは資産側の処理を5秒未満で完了した。

Mastercard Multi-Token Network(MTN)
Mastercardが提供する、オンチェーン資産と法定通貨を相互運用させるためのネットワーク。トークン化された資産取引と既存の銀行口座決済をブリッジする役割を担う。

Kinexys by J.P. Morgan
JPMorganのブロックチェーン基盤プラットフォーム(旧称Onyx)。機関投資家向けに決済、預金トークン、外国為替、コルレス銀行統合などのサービスを提供している。

コルレス銀行(Correspondent Banking)
国際送金の際に、自行の海外支店を持たない銀行が、海外の提携銀行を経由して資金を送る仕組み。クロスボーダー決済の基幹インフラとして機能してきた。

RWA(Real-World Assets)
不動産、債券、株式、コモディティなど、現実世界に存在する資産をブロックチェーン上でトークン化したもの。機関投資家の参入を促す重要な領域として急成長している。

Delivery-versus-Payment(DvP)
証券の引渡しと代金の支払いを同時に行う決済方式。一方の不履行リスクを排除する目的で用いられる。

適格投資家・適格購入者(Accredited Investors / Qualified Purchasers)
米国証券法および投資会社法で定義される、一定の資産規模や収入要件を満たす投資家層。リスクの高い未登録証券への投資が認められる。

【参考リンク】

Ondo Finance(公式サイト)(外部)
トークン化された実物資産(RWA)プラットフォームの大手。機関投資家グレードの金融商品をオンチェーンに展開している。

Kinexys by J.P. Morgan(公式サイト)(外部)
JPMorganが運営するブロックチェーン基盤プラットフォーム。決済、預金トークン、機関投資家向けインフラを提供している。

Mastercard Multi-Token Network(公式サイト)(外部)
Mastercardが提供する、オンチェーン資産と法定通貨の相互運用を可能にするネットワークの紹介ページ。

Ripple(公式サイト)(外部)
ブロックチェーン技術および暗号資産関連サービスを提供する企業。XRP Ledgerの主要な開発・推進主体である。

XRP Ledger(公式サイト)(外部)
パブリックブロックチェーンXRP Ledgerの公式情報サイト。技術仕様や開発者向けドキュメントが掲載されている。

RWA.xyz(市場データサイト)(外部)
トークン化された実物資産(RWA)市場の規模・推移を集計しているデータプラットフォーム。

【参考記事】

Ondo, JPMorgan, Mastercard, and Ripple complete first cross-border redemption of tokenized U.S. treasuries(TheStreet Crypto)(外部)
本パイロットの全体像に加え、トークン化米国債市場の急成長やJPMorganとOndoによるテストネット連携にも言及している。

Ondo, JPMorgan, Mastercard and Ripple Team to Settle Tokenized Treasuries on XRP Ledger(Decrypt)(外部)
Kinexysの累計取引額3兆ドル超の実績、DTCCのトークン化サービス計画など、業界動向を詳しく報じた記事。

Ripple Makes a Big Tokenization Deal with JPMorgan and Mastercard(BeInCrypto)(外部)
RWA.xyzデータに基づくトークン化米国債残高約150億ドルと米国債市場全体30兆ドルの規模感を示した記事。

Ondo, JPMorgan, Mastercard & Ripple complete cross-border Treasury redemption(Yahoo Finance)(外部)
取引フローの詳細解説と、24時間365日対応可能なモデルの提示について取り上げた記事。

XRP Ledger Powers Historic Cross-Bank Pilot as Ripple, JPMorgan, Ondo & Mastercard Join Hands(Coinpaper)(外部)
XRP Ledger上での取引活動の活発化と常時稼働型金融市場モデルの具体化を整理した記事。

【編集部後記】

「銀行が閉まっている時間に、海外の口座から国債を償還して即着金する」──ほんの数年前まではSF的に響いた光景が、技術的には現実の射程に入ってきました。

みなさんは、24時間365日動き続ける金融市場の世界を、どこか期待をもって眺めているでしょうか。それとも、規制や安全性の観点で慎重に見守っているでしょうか。トークン化という静かな変化は、私たち一人ひとりのお金との付き合い方をも、いずれ変えていくはずです。みなさんの感覚や疑問を、ぜひ一緒に考えていけたら嬉しいです。

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※本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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ByTaTsu@innovaTopia

『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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