Last Updated on 2026年10月8日 by Co-Founder/ Researcher
金融庁の無登録業者一覧には、同じ事業者の名前が3回並んでいる箇所があります。警告から16日で日本向けの終了を告知した事業者の行も、消えずに残っています。この表は何を記録していて、何を記録していないのでしょうか。読み方がわかると、確かめるべき名簿が変わります。
金融庁は2026年9月1日、公表資料で所在地を香港・九龍の旺角と記載されたIzakaya Limitedに対し、無登録で暗号資産交換業を行っていたとして警告を行い、公表した。同社はインターネット上で暗号資産取引を行う「IZAKA-YA」を運営し、インターネットを通じて日本居住者を相手方としていたとされる。
代表者は不明。根拠は事務ガイドライン第三分冊16.暗号資産交換業者関係Ⅲ-1-6(2)②である。これにより、金融庁「無登録で暗号資産交換業を行う者の名称等について」の海外所在業者一覧は令和8年9月に更新され、22行となった。国内業者の一覧は3行で、最終更新は令和5年4月である。金融庁は、掲載が必ずしも現在の無登録営業の状況を示すものではないとしている。
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無登録で暗号資産交換業を行う者の名称等について(金融庁)
【編集部解説】
警告から16日後、IZAKA-YAが出した答え
9月17日、IZAKA-YAは公式サイトに「日本居住者の皆様へのサービス提供終了および預かり資産の出金手続きについて」と題する告知を掲載しました。理由として挙げたのは、9月1日に金融庁が公表した運営会社への警告書です。
対象は日本に住むすべての利用者で、国籍を問いません。海外に住む日本国籍の利用者も含まれます。新規会員登録とレンディングの新規申込みは停止され、日本語版サイトは9月末で公開を終える一方、出金手続きのページは手続きが完了するまで利用できると案内されました。
出金は指定の申請フォームからのみ受け付けるとされ、期限は示されていません。告知は10月5日に更新されています。あわせて、運営会社が秘密鍵やシードフレーズ、パスワードを尋ねることはないとし、「資産を取り戻す」「出金を代行する」といった連絡への注意も呼びかけています。
「レンディング」を名乗るサービスが、交換業で警告された
IZAKA-YAは公式サイトで、自らを暗号資産のレンディング・ウォレットと紹介しています。それが「暗号資産交換業」の無登録として警告を受けたことに、引っかかりを覚える方もいるかもしれません。
資金決済法では、暗号資産の売買や交換、その媒介などに加えて、他人のために暗号資産を管理する業務も暗号資産交換業に含まれます。金融庁の事務ガイドラインは、暗号資産を借り入れること自体はこの「管理」に当たらないとしています。一方で、利用者がいつでも返還を受けられるなど、借入れと称して実質的に他人のために管理している場合は該当するとも定めています。名前ではなく、実態で判断されるということです。
ただし、今回の公表資料は「インターネットを通じて、日本居住者を相手方として、暗号資産交換業を行っていたもの」と記すにとどまり、どの行為が該当すると判断されたのかまでは書いていません。この点は、公表資料の範囲で読むのが妥当でしょう。
同じ表に、3回載った名前
ここで一覧全体に目を移すと、IZAKA-YAの対応がどういう位置にあるのかが見えてきます。
海外所在業者の一覧は、IZAKA-YAを加えて22行になりました。ただし、22の事業者が並んでいるわけではありません。Bybit Fintech Limitedは令和3年5月、令和5年3月、令和6年11月の3回にわたって掲載されています。Bitget Limited、MEXC Global、Bitforex Limitedはそれぞれ2回。Binanceに関する行も、商号の表記を変えて2つあります。同じ商号の重複をまとめると17。Binanceに関する2行も同じ事業者群とみなせば、16になります。
Bybitの所在地は、令和5年までの行ではシンガポール、令和6年の行ではドバイと記されています。警告を受けるあいだにも、事業者の側は形を変えていたことが、表の上からも読み取れます。
そのBybitは、報道によれば2025年10月に日本での新規登録を一時停止し、2026年から日本居住者のアカウントに段階的な利用制限をかける方針を示しました。その後、2026年7月24日の公式告知で、7月22日付で日本居住者への是正措置を完了したと発表しています。ただし、暗号資産・法定通貨の出金と、ビットコイン(BTC)・イーサ(ETH)・USD Coin(USDC)への限定的な交換機能は継続しています。初回の掲載から撤退方針を示すまでに、4年あまりが経っています。
警告から撤退表明までの距離は、事業者によってこれほど違います。16日で日本向けの終了を告知した事業者と、3回の掲載を経て、日本居住者への是正措置の完了を発表した事業者が、同じ表の上下に並んでいるのです。
表が記録しているのは「警告した時点」
金融庁は一覧の冒頭で、掲載は必ずしも現在の無登録営業の状況を示すものではなく、名称や所在地も現時点のものでない場合がある、と断っています。
実際、一覧の最も古い行は平成30年2月のもので、8年以上前の警告がいまも並んでいます。令和2年5月より前の6行は、内容欄に旧来の「仮想通貨」という呼称を残したままです。IZAKA-YAの行も、日本向けの終了を告知した後の10月8日時点で、変わらず掲載されています。
つまりこの一覧は、誰がいつ警告を受けたかの記録であって、いま誰が営業しているかの名簿ではありません。撤退した事業者が残り、まだ警告を受けていない事業者は載らない。そういう性質の表です。
国内業者の一覧は3行で、最終更新は令和5年4月です。3年半にわたって新たな行が加わっていませんが、それが何を意味するのかを、この表だけから読み取ることはできません。
閉じた名簿と、開いた名簿
では、利用者はどちらの表を見ればよいのでしょうか。
警告の一覧は、構造上どこまでも開いています。載っていない事業者が安全だとは言えず、金融庁自身もそう注記しています。これに対して、暗号資産交換業者の登録一覧は閉じた名簿です。2026年9月1日現在、登録を受けているのは27者。最も新しいのは、8月21日に登録されたLaser Digital Japanです。
確かめるのは、サービス名ではなく契約相手の法人名です。その法人が最新の登録一覧に載っているかを、一覧の基準日と登録番号とあわせて照合します。登録のない事業者は、暗号資産交換業者として金融庁や財務局の検査・監督を受ける対象ではなく、日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)の相談窓口も使えません。トラブルが起きたとき、利用者を守る仕組みの外側に置かれることになります。
IZAKA-YAに資産を預けている方にとっては、いま出金の手続きが現実の問題でしょう。告知自身が注意を促しているとおり、こうした局面では「資産を取り戻せる」とうたう二次的な勧誘が出回りやすくなります。相談先は、弁護士や消費生活センター、被害が疑われる場合は警察です。
制度の名前が変わっても、確かめる向きは変わらない
2026年7月に成立した改正法により、暗号資産の規制は資金決済法から金融商品取引法へ移り、「暗号資産交換業」は「暗号資産取引業」へと名前を変えます。施行は公布から1年以内とされています。
制度が新しくなれば、登録の名簿も新しい枠組みで引き直されていくはずです。それでも、利用者が取引の前に相手の名前を登録の名簿で引く、という手順の重みは変わりません。
金融サービス利用者相談室に2026年4〜6月に寄せられた暗号資産等の相談は1,374件。今回の22行目は、警告という仕組みが何を伝え、何を伝えないのかを、あらためて示す1行になりました。そしてIZAKA-YAが16日で出した答えは、警告が届けば事業者が動きうることも示しています。
【用語解説】
暗号資産交換業
暗号資産の売買や他の暗号資産との交換、それらの媒介・取次ぎ・代理、他人のための暗号資産の管理などを業として行うこと。資金決済法に基づき、内閣総理大臣の登録を受けなければ営めない。
資金決済法
正式名称は「資金決済に関する法律」。前払式支払手段、資金移動業、暗号資産交換業などを規律する。2020年5月の改正で、法令上の呼称が「仮想通貨」から「暗号資産」に改められた。
事務ガイドライン
金融庁が定める、金融会社の監督事務についての行政の指針。法令そのものではない。第三分冊「金融会社関係」の16が暗号資産交換業者関係で、無登録業者への警告もこれに基づいて行われる。
レンディング
暗号資産を事業者に貸し出し、対価として利用料を受け取る取引。事務ガイドラインは、借入れそのものは「管理」に当たらないとする一方、実質的に他人のために管理している場合は該当するとしている。
暗号資産取引業
2026年7月に成立した改正法で、暗号資産交換業に代わって置かれる業種。暗号資産に関する規制は資金決済法から金融商品取引法へ移される。施行は公布から1年以内とされる。
金融サービス利用者相談室
金融庁が設ける、金融サービスに関する利用者からの相談や情報提供の窓口。受付件数を四半期ごとに分野別で集計し、公表している。個別のトラブルのあっせんや仲介は行わない。
USD Coin(USDC)
米ドルと1対1で連動するよう設計されたステーブルコイン。米Circleが発行する。
【参考リンク】
金融庁「無登録で暗号資産交換業を行う者について(Izakaya Limited)」(外部)
2026年9月1日付の公表資料。業者名、代表者、所在地、警告の根拠条項、備考を1ページに収め、記載が現時点のものでない可能性も注記している。
IZAKA-YA「日本居住者の皆様へのサービス提供終了および預かり資産の出金手続きについて」(外部)
9月17日公開、10月5日更新の告知。対象となる利用者、停止する機能、日本語版サイトの終了時期、指定フォームによる出金の方法を案内している。
金融庁「暗号資産交換業者登録一覧」(外部)
登録を受けた暗号資産交換業者の一覧である。法人名、登録番号、登録年月日を財務局ごとに掲載し、資料の冒頭に基準日を示している。
金融庁「金融事業者一括検索」(外部)
免許・許可・登録等を受けた金融事業者を、業種をまたいでまとめて検索できる金融庁の画面。契約相手の法人名を確かめる入口になる。
金融庁「事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係 16 暗号資産交換業者関係」(外部)
暗号資産交換業の該当性と、無登録業者への対応を定める行政の指針。暗号資産の借入れと「管理」の区別はⅠ-1-2-2③の注記にある。
金融庁「暗号資産に関する相談事例とアドバイス」(外部)
登録の有無によって異なる相談先を案内するページ。無登録業者とのトラブルについては、弁護士、消費生活センター、警察を挙げている。
一般社団法人日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)(外部)
暗号資産交換業者などで構成する自主規制団体である。会員業者との取引に関する相談や苦情を受け付けており、会員一覧も公開している。
Bybit「Completion of Japan Remediation」(外部)
2026年7月24日の告知。7月22日付で日本居住者への是正措置を完了したとし、継続する出金機能と限定的な交換機能の範囲を案内している。
【参考記事】
Bybit halts new user onboarding in Japan, citing ‘emerging’ regulations(外部)
2025年10月31日から日本での新規登録を一時停止すると伝える。既存の利用者は当面、そのままサービスを使えるとしていた。
Bybit to discontinue services for Japanese residents, citing regulations(外部)
2026年から日本居住者のアカウントに段階的な利用制限をかけるBybitの方針を報じる。金融庁に未登録である点を背景に挙げている。
金融庁、仮想通貨関連サービス「IZAKA-YA」運営会社に警告書 無登録で交換業(外部)
金融庁による9月1日の警告を当日に報じた記事。暗号資産交換業に「管理」が含まれる点と、レンディングとの関係を整理している。
【編集部後記】
国内業者の3行のうち2行には、オンラインセミナーなどを通じて、当時上場予定だった暗号資産「ジャスミー」を購入したとの情報が寄せられている、と備考に記されています。
問われたのは銘柄ではなく、売った側が登録を受けていたかどうかです。「上場予定」という言葉は、買う理由に聞こえやすい。だからこそ、その言葉を口にした相手の法人名を、登録の名簿で一度引いてみる。その一手間を、あなたは最後にいつかけたでしょうか。
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