SBI・楽天・野村が暗号資産投資信託を準備、2028年めど投資信託法改正で「ウォレット不要」の時代へ

SBI・楽天・野村が暗号資産投資信託を準備、2028年めど投資信託法改正で「ウォレット不要」の時代へ

Last Updated on 2026年5月19日 by Co-Founder/ Researcher

「興味はあるけれど、口座やウォレットの管理が少し面倒で」――そんな理由で暗号資産を遠くから眺めてきた方は少なくないかもしれません。日本の大手証券会社が、その距離を縮める動きを一斉に見せ始めました。

Nikkei Asiaの2026年5月17日付の報道によると、日本の大手証券会社が暗号資産投資信託を個人投資家向けに提供する準備を進めています。SBI証券はグループ会社のSBIグローバルアセットマネジメントが開発するファンドを販売する計画で、商品はビットコインやイーサリアムを対象とするETFと投資信託にまたがります。楽天証券は楽天投信投資顧問と連携し、スマートフォンアプリで取引できる商品を開発しています。野村と大和もそれぞれのグループ内で暗号資産投資信託を開発する計画を発表しました。SMBCグループはタスクフォースを設置し、みずほフィナンシャルグループ傘下のアセットマネジメントOneは予備的検討を開始しています。金融庁は2028年までに投資信託法の施行令を改正し、暗号資産を特定資産に加える方針です。先月、改正金融商品取引法のもとで暗号資産が金融商品に再分類され、同法は2027年度に施行される見通しです。SBIホールディングスはビットコイン・XRPのデュアルETFと金・暗号資産ETFの計画を明らかにしています。

From: SBI, Rakuten, Nomura line up to launch crypto investment trusts: Report

【編集部解説】

今回の報道は「大手証券会社が暗号資産投資信託を準備している」というニュースですが、CryptoVerseが注目したいのは、これが日本の暗号資産にとって「入口の構造そのもの」が変わる転換点だという点です。

これまで日本でビットコインやイーサリアムを買うには、証券口座とは別に暗号資産交換業者の口座を開設するか、自分でウォレットを管理する必要がありました。秘密鍵の保管や自己管理(セルフカストディ)の手間は、関心はあっても一歩を踏み出せない層にとって、見えにくくも確実な壁でした。投資信託という形であれば、すでに持っているSBI証券や楽天証券の口座から、株式や債券と同じ感覚で値動きへのエクスポージャーを得られます。「ウォレットに一度も触れずに暗号資産に投資できる」――これが今回の本質的な変化です。

報道の規模感を正確にお伝えします。Nikkei Asiaは主要証券会社18社を調査し、SBI証券・楽天証券に加えて11社が、規制整備後に暗号資産関連商品の提供を検討すると回答したと報じています。野村證券、大和証券、みずほ証券などがこの11社に含まれます。さらにThe Blockは、2025年11月時点でSBIグローバルアセットマネジメントが商品投入後3年以内に約5兆円(約320億ドル)の運用資産を目標に掲げていたと伝えており、これは公表されたものとしては最も積極的な数字です。

制度面の整理も必要です。今回の動きには二つの法制度が絡んでいます。一つは投資信託及び投資法人に関する法律(投資信託法)の施行令改正で、金融庁は2028年をめどに暗号資産を「特定資産」へ追加しようとしています。これが実現して初めて、ファンドが合法的に暗号資産を組み入れられます。もう一つは金融商品取引法の改正で、暗号資産を「金融商品」として株式や債券と同じ規制の傘の下に置くものです。後者は2026年4月に閣議で法案が承認され、今国会で可決されれば2027年度に施行される見通しです。

この解説で補っておきたいのが、Cointelegraph記事には書かれていない「税制」の論点です。2025年12月に与党が公表した2026年度税制改正大綱では、暗号資産の売却益に対する税率を、現行で最大55%にもなる総合課税から、株式と同じ20%(復興特別所得税を含めると20.315%)の申告分離課税へ移行する方針が示されています。投資信託やETFという「器」が整っても、利益が出るたびに最大55%課税されるのでは個人は動きにくいものです。器の制度と税制が同時に揃うことで、はじめて商品として成立します。証券会社が一斉に動き出した背景には、この税制の追い風があります。

ポジティブな側面とリスクの両面も見ておきましょう。プラス面は、規制された商品として透明性・情報開示・投資家保護が担保されること、そして米国の現物型ビットコインETFで起きたような手数料引き下げ競争が、日本でも商品コストを押し下げる可能性があることです。一方でリスクは消えません。投資信託という形をとっても、原資産であるビットコインやイーサリアムの価格変動性そのものは緩和されません。さらに信託報酬などのコスト、ストレス時の流動性、そして2028年というスケジュール自体が規制当局の判断次第である点には注意が必要です。なお、ETFの上場時期については、元記事が「早ければ2028年」とする一方、日本取引所グループの幹部が「今国会で法改正と税制が固まれば2027年にも」と述べたとの報道もあり、見通しには幅があります。

最後に、長期的な視点です。日本はかつてマウントゴックス事件やコインチェック流出事件を経験し、その反省から2019年以降、暗号資産規制を世界でも比較的早く体系化してきました。今回の動きは、その規制の蓄積が「個人が安心して触れられる金融商品」という果実に結実しつつある局面と言えます。米国がETFで、香港が独自の枠組みで動くなか、日本は「証券口座への統合」という形で大衆化を進めようとしています。暗号資産が一部の先駆者のものから、一般的なポートフォリオの一構成要素へ――その移行が制度の言葉で語られ始めたことこそ、未来を報じる私たちが今この記事を取り上げる理由です。

【用語解説】

投資信託(投資信託及び投資法人に関する法律/投資信託法)
投資家から集めた資金を専門家がまとめて運用し、その成果を分配する金融商品。本記事の文脈では、この法律の施行令を改正して暗号資産を組み入れ可能にする点が焦点となる。

特定資産
投資信託法上の用語で、投資信託が組み入れられる資産の種類を定めたもの。現状は株式・債券・不動産などが対象だが、金融庁は2028年をめどに暗号資産をこのリストへ追加しようとしている。

ETF(上場投資信託)
証券取引所に上場し、株式と同じように市場でリアルタイム売買できる投資信託。本記事ではビットコインやイーサリアムの価格に連動する商品が想定されている。

金融商品取引法
株式や債券など金融商品の取引ルールを定めた日本の基本法。暗号資産をこの法律のもとに置くことで、情報開示やインサイダー取引規制など、伝統的な証券と同じ規律が適用される。

エクスポージャー
ある資産の価格変動から受ける影響の度合い、またはその資産への投資割合を指す金融用語。「暗号資産へのエクスポージャーを得る」とは、暗号資産そのものを保有しなくても値動きの恩恵やリスクを取ることを意味する。

ウォレット/セルフカストディ
ウォレットは暗号資産を保管・送受信するためのツール。秘密鍵を自分自身で管理する方式をセルフカストディ(自己管理)と呼ぶ。投資信託はこの管理の手間を不要にする。

日本取引所グループ
東京証券取引所などを傘下に持つ取引所グループ。本記事および参考記事の文脈では、暗号資産ETFを上場する場の運営主体として登場する。

特定資産化と税制改正の関係
本記事と編集部解説で触れた「2028年の投資信託法改正」は商品の器を整える制度であり、「税率を最大55%から20%へ」という税制改正は別の制度。両者は連動して暗号資産投資の環境を形づくる。

【参考リンク】

SBIホールディングス(外部)
SBI証券やSBIグローバルアセットマネジメントを傘下に持つ金融グループの公式サイト。

SBI証券(外部)
暗号資産投資信託を自社グループ内で開発・販売する計画が報じられているネット証券の公式サイト。

楽天証券(外部)
楽天投信投資顧問と連携し、アプリで取引できる暗号資産投資信託を準備するネット証券の公式サイト。

野村ホールディングス(外部)
暗号資産投資信託の開発計画やETF分野での先行が報じられている金融グループの公式サイト。

大和証券グループ本社(外部)
グループ内で暗号資産投資信託を開発する計画が報じられている金融グループの公式サイト。

SMBC日興証券(外部)
グループ横断のタスクフォースを設置したSMBCグループ傘下の証券会社の公式サイト。

アセットマネジメントOne(外部)
暗号資産関連商品の予備的な検討を開始したみずほ系の資産運用会社の公式サイト。

日本取引所グループ(外部)
東京証券取引所などを運営する取引所グループの公式サイト。暗号資産ETF上場の文脈で参照できる。

金融庁(外部)
投資信託法施行令の改正や暗号資産の金融商品化など、本記事の制度的背景を所管する行政機関。

【参考記事】

SBI, Rakuten developing crypto investment trusts in-house: Nikkei(外部)
SBIが3年以内に約5兆円の運用資産を目標としていたこと、ETFが2027年にも上場しうることを伝えた記事。

Report: SBI and Rakuten Build Crypto Trusts as 11 Japan Brokerages Eye Entry(外部)
Nikkeiの18社調査で11社が暗号資産商品を検討、税率55%から20%への引き下げ案を報じた記事。

Japan’s SBI Securities, Rakuten Securities to offer crypto investment trusts, ETFs(外部)
SBI・楽天が規制確定後に暗号資産投資信託を提供する計画と、別の11社の検討状況を伝えた記事。

Japan’s 2026 Crypto Tax Reform and Its Implications for Market Growth(外部)
暗号資産を金融商品に再分類し、現物・デリバティブ・ETF益へ一律20%課税する税制改正の解説記事。

Japan Crypto Tax 2026: Rates, 20% Reform & How to File(外部)
最大55%の税負担が一律20.315%へ引き下げられる、2026年度税制改正大綱の内訳を整理した記事。

SBI, Rakuten and Nomura prepare crypto investment trusts in Japan(外部)
投資信託が暗号資産へのアクセス障壁を下げる構造的意義と、新たな開示・規制を伝えた記事。

【編集部後記】

暗号資産をめぐる議論は、これまで「価格が上がるか下がるか」に集まりがちでした。けれども今回の動きが示しているのは、もっと地味で、もっと根本的な変化です。それは「どこで、どうやって買うのか」という入口の話です。

いつもの証券口座のなかに、株式や債券と並んで暗号資産の選択肢が現れたとき、私たちの「資産との付き合い方」はどう変わるのでしょうか。投資するかどうかは人それぞれですが、選択肢が一つ増えること自体には、静かで大きな意味があると私たちは考えています。みなさんが気になっている点や、聞いてみたい論点があれば、ぜひ教えてください。次の記事づくりの出発点にさせていただきます。

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※本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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ByTaTsu@innovaTopia

『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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